裕人(芋坂淳)は、街のざわめきを録音し、友人・徹の作った8ミリフィルムの映像とコラボレーションするパフォーマンスをおこなっている。
ある日、パフォーマンスの練習を終え、恋人の明子(長綾美)とともに部屋にいた裕人のもとに、叔父の昭二(デカルコ=マリィ)がやってきた。認知症が進んだ裕人の祖母・節子(絵沢萠子)が叔父のもとからいなくなったというのだ。10年前、阪神大震災で両親を亡くした裕人にとって、祖母は親代わりの大切な存在だった。
街を走り回って裕人が祖母を見つけたとき、祖母は平穏を取り戻した街に震災の記憶を重ねていた。裕人に気がついた祖母は「サキ」という名前を口にする。それは、裕人自身の記憶にはまったくない、裕人の妹だという。そして同時に裕人は「サキ」と叫ぶ女性の声を耳にする。その声から逃げる少女・沙樹(藤本七海)の姿に裕人が気をとられた隙に、祖母は再び姿を消してしまっていた……。
祖母の行方がわからないまま時間が過ぎていく中、裕人は沙樹と再会を果たす。沙樹と自分の境遇に共通するものを感じた裕人は、「妹」である沙樹の手をとって走り出す。
わずかな荷物と録音機材を部屋から持ち出し、沙樹を連れてさまよう裕人。偶然出会った安田(渡辺大介)という奇妙な男が裕人たちに居場所を提供するが、その安田も沙樹が行方不明として捜索されていることを知ってしまう……。
裕人と沙樹の“兄妹”が続ける逃避行、その行き着く先とは?
にくめ、ハレルヤ!
監督:板倉義之
出演:芋坂淳 藤本七海 絵沢萠子 ほか
2010年6月26日(土)より渋谷UPLINK Xにてロードショー
2006年/DVCAM/ステレオ/76分
阪神淡路大震災を経験した青年は、震災から10年を経たある日、認知症を患った祖母の口からいままで知らなかった「妹」の名を聞かされる。そして青年の前に現われた少女。この少女が「妹」なのか? 青年は少女の手をとって走り出す。いま「兄妹」の逃避行が始まった……。
『にくめ、ハレルヤ!』は、阪神淡路大震災から10年後に大阪市の映像文化事業・CO2(シネアスト・オーガニゼーション・大阪)の助成を受けて制作された。同企画の選考委員をつとめた黒沢清監督より高く評価され、国内外の映画祭で好評を得てきた作品が、震災から15年目となる2010年、待望の劇場公開を果たす。
監督は、近年多くの若手映画監督を輩出する大阪芸術大学出身で、俳優としても活躍する板倉善之。1995年に大阪で震災を体験した板倉が、メディアでの震災のとり上げられ方に覚えた“違和感”からこの作品は生まれた。
主人公の青年・裕人を演じるのは自主映画を中心に活躍する芋坂淳。万田邦敏監督『×4』でも好演を見せた芋坂の繊細さを感じさせる演技が、つねに他人と距離をとるような裕人というキャラクターにリアリティを与えている。
そして少女・沙樹を演じるのは『子猫の涙』『奈緒子』やドラマで活躍する藤本七海。5年前に撮影された本作は藤本の映画初出演作であるが、その年齢からは想像できないほどの巧みな演技で物語の軸となる少女を演じてみせる。
また、ベテラン女優の絵沢萠子が裕人の祖母役で特別出演し、その存在感で作品に深みを与えている。
阪神淡路大震災から15年を経た現在に『にくめ、ハレルヤ!』が震災の「記憶」を問いかける。
- 苧坂淳
- 藤本七海
- 長綾美
- デカルコ・マリィ
- 渡辺大介
- 平松実季
- 西村仁志
- 谷口勝彦
- 森川法夫
- 木村文洋
- 絵沢萠子(特別出演)
- 監督・脚本・編集:板倉善之
- 助監督:伊月肇/剱妙子
- 撮影・照明:高木風太
- 撮影助手:高田真助
- 照明助手:星野あい
- 録音:松野泉
- 録音助手:余合祐加子
- 整音:東岳志
- メイク:窪田弥生
- メイク助手:竹岡美華
- 美術:内堀義之
- 美術助手:岡藤真依
- 衣装:奥井朗海
- 記録:園部典子
- VFX:松浦勝一
- 制作:桝井孝則/奥秀孝/葛原亜也子/塩川節子
- ラインプロデューサー:城内政芳
- 音楽:桝井孝則/人工の夜
- 助成:シネアスト・オーガニゼーション・エキシビジョン大阪
- 製作:思考ノ喇叭社
- 配給・宣伝:カプリコンフィルム
- 宣伝協力:ブラウニー