
東北にある海坂藩。組頭の地位にある武士を父に持つ以登(いと:北川景子)は、男に引けをとらない剣の使い手で、腕試しに訪れた道場では誰ひとり敵わなかったと評判であった。
桜の花が咲き誇るころ、花見に出かけた以登に、ひとりの若い武士が声をかけてきた。例の道場の筆頭であるが、不在のため以登と竹刀を交わすことができなかった江口孫四郎(宮尾俊太郎)であった。以登は父・寺井甚左衛門(國村隼)に孫四郎と試合をさせてほしいと頼み込む。その願いは聞き入れられ、しばらくのち、孫四郎は寺井家を訪れ以登と竹刀を交える。藩随一の剣の使い手と名高い孫四郎に以登は敗れるが、そのただ一度だけの試合はひそかな恋心を以登の中に芽生えさせた。だが、以登は親の決めた許婚のある身。甚左衛門は、この日の試合を最後に以登が孫四郎と会うことを禁じた。
やがて以登は孫四郎がほかの家に婿入りが決まったことを知り、以登の許婚・片桐才助(甲本雅裕)も留学していた江戸から数年ぶりに戻ってきた。才助との祝言を控え、以登は様々な想いを振り切るように、打ち込んできた剣を置く。
そして雪が海坂藩を覆うころ、以登は驚くべき報せを聞くことになる。内藤家に婿入りし、幕府への使者として江戸に向かった孫四郎が、江戸で犯した失態の責を取り自害したというのだ。
孫四郎の死に疑問を感じた以登は、才助に相談を持ちかけた。孫四郎との関係を詮索もせずに事情を調べる才助は、藩の重鎮・藤井勘解由(ふじい・かげゆ:市川亀治郎)が孫四郎を罠にかけたことを探り出す。
最期まで“義”を貫いた孫四郎のため、以登は一度は置いた剣を取る決意を固める――。