「蛇に気いつけや」。夜のオフィスで口笛を吹きながら残業していた三辺陽子(永作博美)に、課長の今西由起夫(西島秀俊)はそんな言葉をかけた。それがオフィスで今西と交わす最後の会話になるとは、陽子はまだ知らなかった。
あくる朝、陽子が出勤すると社内は騒然とした雰囲気に包まれていた。部長の伊東(國村隼)が急死したというのだ。社員の間では自殺だという噂も飛び交っていた。そして今西もまだ会社に姿を見せず、電話をかけても繋がらない。総務部長に言われて陽子は今西の自宅を訪ねるが、隣人は今西は不在だと告げる。
伊東部長の葬儀のあと、陽子は副社長室へと呼び出される。なんと今西に1億円の横領の疑いがかけられているというのだ。伊藤部長はその証拠を掴んでいたらしい。内々に事件を解決したいという上層部の意向で、陽子は今西を探すことになった。
陽子は今西の一番近くにいる部下ではあったが、社外で今西と会ったことはなく、今西のプライベートについて聞くこともなかった。中途採用で入社し、社内のエースとなった今西の過去を、会社の人間は誰も知らない。
陽子はわずかな手がかりを手繰り寄せるようにして、今西に関わりのあった人々を探しあてると話を聞いていく。かつて今西に想いを寄せていた保険勧誘員、今西に背中を押されるようにマンション購入を決意した元・同僚の夫婦、今西の勧めで妻と愛人と奇妙な生活を続けている先輩……。だが、今西を知る人々の話を聞けば聞くほど、陽子には今西がどういう人間だったのかがわからなくなっていくのだった。
やがて陽子は、ついに今西の秘められた過去を知ることになる……。
蛇のひと
監督:森淳一
出演:永作博美 西島秀俊 板尾創路 國村隼 ほか
2010年9月25日(土)より角川シネマ新宿、シネプレックス系にて1週間限定ロードショー
2010年/カラー/106分
ある日、ひとりの男が姿を消した。男の部下だった女性は会社からの命令で男を探すことになった。彼女は男の足跡をたどるが、男の過去を知れば知るほどに男がどんな人物だったのかわからなくなっていく。そして彼女を待つ壮絶な事実……。
2010年3月にWOWOWで放送され好評を博したサスペンス『蛇のひと』が、大きな反響に応えて劇場公開を果たす。
『蛇のひと』は、第2回WOWOWシナリオ大賞を受賞した三好晶子のオリジナルシナリオの映像化である。選考委員の満場一致という高評価を得たこの作品の映像化にあたり、日本エンターテイメント界最高のキャストとスタッフが集結した。
失踪した上司を追う主人公・三辺陽子を演じるのは、実力派女優として映画・テレビ・舞台で活躍する永作博美。戸惑いながらも真実に近づいていく陽子を自然体で演じている。そして陽子の上司・今西には西島秀俊。幅広い役をこなす西島がその変幻自在ぶりを存分に発揮し、謎に包まれた今西という人物の正体の掴めなさを見事に表現してみせた。
さらに、今西の失踪に関わる伊東部長役で渋みあふれる演技を見せるベテラン・國村隼や、唯一無二の存在感で今西の過去を知る男を演じる板尾創路をはじめ、石野真子、河原崎建三、勝村政信、ふせえり、劇団ひとり、奥貫薫、北村有起哉、田中圭、ムロツヨシ、佐津川愛美ら、ベテランから若手まで豪華な実力派キャストが顔を揃えた。
メガホンをとったのは『Laundry』や『重力ピエロ』など劇場用作品のほか、ドラマやミュージックビデオなども手がける森淳一。本作では、抑制の効いた演出によって人間の奥底に潜む不可解さを浮き彫りにしてみせる。
人間という存在そのものが秘めた残酷さ、哀しさを描き出した、美しい衝撃作の登場だ。
- 永作博美
- 西島秀俊
- 板尾創路
- 劇団ひとり
- 田中圭
- ムロツヨシ
- 勝村政信
- ふせえり
- 佐津川愛美
- 北村有起哉
- 奥貫薫
- 河原崎建三
- 石野真子
- 國村隼
- 監督:森淳一
- 脚本:三好晶子
- プロデューサー:釜谷正一郎/松永綾/守屋圭一郎
- 撮影:中山光一
- 照明:保坂温
- 美術プロデューサー:津留啓亮
- 録音:田中博信
- 装飾:西渕浩祐
- ポストプロダクションマネージャー:宮田三清
- 編集:浦浜昌二郎
- スクリプター:皆川悦子
- 助監督:塩入秀吾
- 制作担当:山下秀治
- 音楽プロデューサー:志田博英
- 音楽:中島康雄
- 制作協力:ROBOT
- 製作著作;WOWOW
- 提供:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/WOWOW
- 配給:角川シネプレックス