
閑静な住宅街で暮らす主婦の浅尾絢子(赤澤ムック)は、夫のスーツを預けにクリーニング店を訪れた。初めて訪れたその店で応対に出たのは、寡黙な店主の奥津啓介(川本淳市)。特別な言葉もなく、ただのクリーニング屋と客としてのやりとりだけを交わすふたり。だがその夜、啓介は伝票に記された名前を見て、ひそかに嗚咽する。
絢子は、小さな会社の社長である雁太郎(三浦誠己)と、認知症を患っている夫の父(上田耕一)との3人暮らし。休日、夫妻は車で出かけ、雁太郎は絢子を車に残して啓介の店でスーツを受け取る。雁太郎の姿に、かすかな戸惑いを隠せない啓介。その後、夫が楽しむ草サッカーを応援する絢子の姿を見て、数人の男がなにごとかを噂しあっていた。
恵まれた暮らしをしているように見える絢子。腕のいいクリーニング職人と評判で釣りを趣味とする啓介。小さな町で、ときに同じ喫茶店で時間を過ごしながらも、互いにかかわることなくそれぞれの日々を送っている。
そんな日々の中、あるきっかけで興奮した義父が絢子を血が出るほどに殴りつけ、絢子は義父を世話する苦労を理解してくれない夫にいら立ちを覚える。血で汚れた服を啓介のクリーニング店へと持ち込む絢子。啓介の妻・茜(広澤草)は、傷あとも生々しい絢子を心配しつつ、愛想よく対応していく。
やがて、クリーニングの済んだ服が知らぬ間に絢子の家に届けられる。その服には、古びたリボンが添えられていた。そしてその夜、リボンを結びつけた大きな石が啓介の店に投げ込まれる……。
絢子と啓介、過去に結ばれたことのあるふたりの人生が、いまふたたび絡みあいはじめていた。