夏のある日、東京で部屋探しにいそしむ片桐聡(井上芳雄)は、カラスヤサトシというペンネームのマンガ家。これまでは大阪で会社勤めをしながらマンガを描いていたが、春に月刊誌の連載が決まったのを機に、29歳にして上京を決意したのだ。厳しい予算の中、ようやく見つけた部屋は、窓から東京タワー……ではなくて田無タワーが見える小さなアパートだった。
東京での暮らしを始めた矢先、高校の同級生で通称“先輩”の野島由美子(肘井美佳)から連絡が入った。由美子は大阪の専門学校を卒業し、カメラマンを目指して8年前に東京に出てきたのだ。久々に再会した由美子は、貯金も人脈もなく東京に出てきた聡を「相変わらず無計画で夢見がち」と言うが、実は由美子自身も、まだ雑用ばかりのアシスタントでカメラマンとしての夢を掴めていない。
ちょっと癖があるけど悪い人たちではないアパートの住人に囲まれ、聡の東京暮らしも軌道に乗りはじめたかと思いきや、編集部を訪れた聡を思わぬ報せが待っていた。連載中の雑誌の休刊になるというのだ。たったひとつの連載を失って、上京からたった1週間、聡は貧乏なマンガ家からただの無職になってしまった。
さらに追い打ちをかけるように、アパート取り壊しのため、住人に立ち退き勧告が出される。あまりの急な話に、ほかの住人たちとともにいきり立つ聡だったが、アパートのオーナー・田渕(哀川翔)に頭を下げられなにも言えなくなってしまう。
あちこちの出版社に原稿を持ち込んでも評価は芳しくなく、聡が弱気になりはじめた夏の終わり、実家の母(キムラ緑子)から連絡が入る。父(チチ松村)がガンで入院したというのだ……。
おのぼり物語
監督:毛利安孝
出演:井上芳雄 肘井美佳 チチ松村 哀川翔 八嶋智人 ほか
2010年7月17日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショーー
2010年/ビスタサイズ/DTSステレオ/114分
29歳にして大阪から上京した駆け出しのマンガ家・聡。なんと上京1週間目にして唯一の連載誌が休刊となってしまった! アパートも取り壊しのため立ち退きを求められ、聡の東京生活はいったいどうなる?
人気のマンガガイド「このマンガを読め!」で2009年ベストテンにランクインするなど、各方面から高い評価を受けたカラスヤサトシの自伝的4コママンガ『おのぼり物語』が、注目のスタッフ・キャストによって映画化を果たした。
主人公のカラスヤサトシこと片桐聡を演じるのは、ミュージカル界のプリンスと呼ばれる井上芳雄。西山茉希とダブル主演をつとめた中編『ハミングライフ』、故・木村威夫監督の『夢のまにまに』と、映画界でも魅力を発揮してきた井上が待望の長編映画単独主演。本作ではメガネをかけ服装も垢抜けないさえない青年役を演じ、俳優としての幅の広さを見せている。
そして、聡の高校時代の同級生でカメラマンを目指す由美子には『ニワトリはハダシだ』で鮮烈な映画デビューを飾った肘井美佳。20代後半を迎え理想と現実のギャップに揺れる女性の姿をリアルに表現している。
また、編集者の小野を八嶋智仁、アパートのオーナー・田渕を哀川翔が演じるのをはじめ、キムラ緑子、佐伯日菜子、水橋研二、河井青葉、占部房子、徳井優、江口のりこと、日本映画界の誇る実力派俳優陣が聡をとりまく個性的な人々を演じる。また、アコースティックギターデュオ・ゴンチチのチチ松村が聡の父役で映画初出演しているのも注目だ。
監督は、高橋伴明、黒沢清、塩田明彦らのもとで助監督をつとめ、これが第1回監督作品となる毛利安孝。細やかな演出で、主人公たちの若さゆえの不安や焦燥を、シビアに、しかしあたたかな目線で描いていく。
- 井上芳雄
- 肘井美佳
- チチ松村
- キムラ緑子
- 佐伯日菜子
- 水橋研二
- 河井青葉
- 占部房子
- 徳井優
- 江口のりこ
- 哀川翔(愛情出演)
- 八嶋智人
- 監督:毛利安孝
- 原作:カラスヤサトシ「おのぼり物語」(竹書房刊)
- 脚本:毛利安孝/村田亮
- プロデューサー:伊藤明博/堤静夫/村田亮
- 撮影:水口智之
- 照明:関輝久
- 録音:岩丸恒
- 美術:古積弘二
- 装飾:山本直輝
- 編集:佐藤崇
- 音楽プロデューサー:HΛL
- 主題歌:SonicGeneration「彩空」
- 製作:「おのぼり物語」製作委員会(竹書房/パルコ/アールグレイフィルム/東映ラボ・テック/望月印刷/スタジオエビス/フェイスデザイン)
- 製作プロダクション:アールグレイフィルム
- 配給:東京テアトル