昭和38年(1963年)、小学生の守(中村大地)は、母の美智代(小雪)とともに、東京から母の故郷である福岡の小さな島へとやってきた。大きな炭坑に支えられた小さな町に、美智代は洋品店を開き、守の新しい生活が始まった。
東京から来たばかりの守は、町の子供たちに目をつけられてしまう。そんな守を助けてくれたのは、守より少し年上の少年・信一(小林廉)だった。信一が守を助けてくれたことを知った美智代は、信一に「ありがとう、信さん」と優しく礼を言う。その姿に、信一の中に淡い憧れが芽生えた。
周囲からは札付きのワル扱いされ、義父母からも疎ましがられている信一だが、守にとってはよい兄貴分のような存在となった。信一やその妹たちとともに過ごしながら、守は次第に町へと馴染んでいく。
だが、石炭不況が進む中で、町には変化が訪れはじめていた。合理化を進めようとする会社と組合の対立は激しさを増し、組合員である信一の義父・大輔(光石研)や、美智代の昔からの知り合いである須藤(村上淳)もその渦の中に巻き込まれていく。そしてある日、信一の一家に大きな事件が起こる……。
それから7年後、守(池松壮亮)は高校生となり、信一(石田卓也)は炭坑で働くようになっていた。いまでも信一のことを気にかけている守だが、仕事で忙しい信一とは会う機会も減ってしまっていた。
一方、信一はいまでも美智代への想いを抱き続けていた。そして美智代も信一のことを想っていた。やがて、妹の美代(金澤美穂)を進学させたいと願う信一は上京して就職することになり、守や美智代との別れが近づく……。
信さん・炭坑町のセレナーデ
監督:平山秀幸
出演:小雪 池松壮亮 石田卓也 光石研 中尾ミエ 岸部一徳 大竹しのぶ ほか
2010年11月27日(土)より新宿ミラノほかロードショー
2010年/カラー/ビスタ/ドルビーSR/108分
日本のみならず海外でも高く評価された『愛を乞う人』をはじめ、『OUT』や『学校の怪談』シリーズなど、幅広い作品を手がける日本映画界の名匠・平山秀幸。福岡県出身である平山監督が、監督生活で初めて自らの故郷で作り上げた映画が『信さん・炭坑町のセレナーデ』である。
離婚して、息子の守を連れて故郷の炭坑町に帰ってきた美智代。守の友人となった少年・信一を美智代は「信さん」と呼び、信一は美智代に淡い憧れを抱く……。舞台となるのは昭和30年代の終わりから昭和40年代にかけて。石炭から石油への転換期を迎え、炭坑に支えられた町も大きく変化していく時代に、それでも力強く生きていく人々の群像劇が描き出される。
美智代を演じるのは『ラスト・サムライ』や『ALWAYS 三丁目の夕日』などの小雪。母親としての優しさと、信一の憧れの人となる女性としての魅力を、独特の透明感で演じている。また、守役の中村大地と信一役の小林廉たちオーディションで選ばれた子役の名演技や、成長した守を演じる池松壮亮、同じく成長した信一を演じる石田卓也をはじめ、柄本時生、金澤美穂ら、注目の若手俳優たちの活躍は見逃せない。さらに、村上淳、光石研、大竹しのぶ、中尾ミエ、岸部一徳といった、日本映画界の誇る錚々たる俳優たちが顔を揃えた。
平山監督と同じく福岡出身の作家・辻内智貴による小説「信さん」を原作に、平山監督とは『愛を乞う人』『OUT』『レディ・ジョーカー』でもコンビを組んでいる鄭義信が脚本を執筆。撮影は福岡県を中心に九州各地でオールロケを敢行。地元の多大な協力や地元エキストラの参加により、見事に時代の空気をスクリーンへと焼き付けている。
- 辻内美智代:小雪
- 辻内守:池松壮亮
- 中岡信一:石田卓也
- 李英男(リー・ヨンナム):柄本時生
- 中岡信一(少年時代):小林廉
- 辻内守(少年時代);中村大地
- 中岡美代;金澤美穂
- 谷村庄治:河原さぶ
- 矢田昌平:池田成志
- 富元源三:外波山文明
- 大浦寿美子:江口のりこ
- 河村鈴子:平田敦子
- 斉藤勝行:山本浩司
- 黒木紀子:占部房子
- 高島雅彦:福田転球
- 中岡大輔:光石研
- 須藤典男:村上淳
- 渡辺久仁子:中尾ミエ
- 李重明:岸部一徳
- 中岡はつ:大竹しのぶ
- 監督:平山秀幸
- 脚本:鄭義信
- 原作:辻内智貴「信さん」(小学館刊)
- プロデューサー:藤田義則/宮内眞吾
- 企画:近藤晋
- ラインプロデューサー:宿崎恵造
- アソシエイト・プロデューサー:三宅はるえ
- 撮影:町田博
- 照明:木村太朗
- 美術:安宅紀史
- 録音:小松将人
- 編集:洲ア千恵子
- VFXスーパーバイザー:石井教雄
- 助監督:成瀬朋一
- 製作担当:根津文紀
- 音楽:安川午朗
- 主題歌:中孝介「愛しき人へ」
- 製作:「信さん・炭坑町のセレナーデ」製作委員会
- 制作プロダクション:フェローピクチャーズ
- 配給:ゴールドラッシュ・ピクチャーズ