書店員の千野夏樹(佐藤江梨子)は、勤務先の書店で「愛のわからないひとへ」と題したコーナーを担当している。夏樹が選んだ本を手作りのポップで紹介したそのコーナーを大手出版社の営業マン・鹿島(要潤)は高く評価し、夏樹に出版予定の小説の広告用推薦コメントを依頼してくる。打ちあわせで鹿島に食事に誘われた夏樹は、そのまま鹿島に抱かれながら、何人もの男と付き合いながらうまくいかなかった10代のころを思い出していた。
ある日、夏樹はひとりの女性が売場の本を自分の鞄に入れようとしているのを見かけた。店を出ていった女性を追いかけて鞄を調べるが、その中に本は入っていなかった。店長の蓮沼(松重豊)とともにその女性・大高より子(渡辺真起子)の家に謝罪に訪れた夏樹は、より子の夫で大学教授の洋治(白井晃)に激しく非難される。洋治は夏樹と蓮沼の謝罪を受け入れず、慰謝料の支払いを求めるのだった。
ところが、その後、店に大高家の長男で高校生の光治(柳楽優弥)がひとりでやってきた。光治は母親の万引きを認め、店に迷惑をかけたことを詫びると「ぼくが解決します」と宣言する。「ひとりで家族を立て直そうとしているんです」。そう話す光治のことが気になった夏樹は、自分の連絡先を光治に手渡す。
数日後、再び大高家を訪問した夏樹は一家の抱える事情を知り、家にも学校にも居場所がなく、本を読むことだけが救いの光治に共感を覚える。それぞれ本を支えに日々を過ごしている夏樹と光治は、やがて頻繁にメールを交わすようになるのだが……。
すべては海になる
監督:山田あかね
出演:佐藤江梨子 柳楽優弥 ほか
2010年1月23日(土)より新宿バルト9、梅田ブルク7ほか全国ロードショー
2009年/カラー/35mm/ビスタサイズ/119分
勤め先の書店で「愛のわからないひとへ」と題したコーナーを担当する書店員の夏樹。夏樹が選んだ本を並べたその本棚がきっかけとなって、夏樹は光治という高校生と出会う――。『すべてが海になる』は、それぞれに心に空白を抱え、本を支えにするふたりが織りなしていく物語だ。
原作は山田あかねの同名小説。多くの作品が韓国や台湾でも出版され注目を集めている山田は、1990年代からドキュメンタリー番組やドラマの演出をてがけるほか脚本家としても活躍し「時効警察」「すいか」などの人気番組を手がけてきた。今回、自身の代表作の映画化で、待望の映画監督デビューを果たした。
夏樹を演じるのは『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』での演技が話題となった佐藤江梨子。光治には『誰も知らない』でカンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞した柳楽優弥。そのほか、要潤、吉高由里子、松重豊、白井晃、渡辺真起子、村上淳、安藤サクラ、猫背椿ら、個性あふれる豪華な俳優陣が顔を揃えた。
また、映画の中で重要な役割を果たす“夏樹の本棚”は、ブックディレクターの幅允孝が山田監督や佐藤江梨子の意見も取り入れつつ本の選定とディスプレイをおこない、この映画のもうひとつの主役ともいえる本棚を完成させた。
そして、主題歌は注目の新進バンド・SPANK PAGEの「不器用な情景」。メジャーデビュー直前に限定リリースされたナンバーが映画のイメージにマッチすることから主題歌に起用された。
切なくて、痛くて、だけど優しい。そんな“言葉”にあふれた作品の誕生だ。
- 佐藤江梨子
- 柳楽優弥
- 要潤
- 安藤サクラ
- 猫背椿
- 藤井美菜
- 森岡龍
- 吉高由里子
- 村上淳
- 渡辺真起子
- 白井晃
- 松重豊
- 脚本・監督:山田あかね
- 原作:山田あかね「すべては海になる」(小学館刊)
- 製作:東城祐司
- プロデューサー:遠田孝一/榎本憲男/小林誠一郎
- 撮影:谷川創平(J.S.C.)
- 照明:金子康博
- 録音:吉田憲義
- 美術:久渡明日香
- 装飾:山岸正一
- 編集:木村悦子
- 助監督:安見悟朗
- 製作担当:竹内暢生
- ブックディレクション:幅允孝
- 音楽:田尻光隆
- 主題歌:SPANK PAGE「不器用な情景」(ユニバーサルJ)
- 助成:文化芸術進行費補助金
- 制作プロダクション:メディアミックス・ジャパン
- 制作協力:スモールホープベイプロダクション
- 製作:メディアミックス・ジャパン
- 配給:東京テアトル
- 宣伝:メディアボックス