『闇のカーニバル』『ロビンソンの庭』『てなもんやコレクション』『JUNK FOOD』『リムジンドライブ』など、常に刺激的な活動を見せる山本政志監督が、『Three☆Points』という新たな刺激を届けてくれた。
『Three☆Points』は大きく分けてみっつのパートから成り立っている。京都を舞台に、ラッパーやストリートのアウトローたちのリアルとフィクションが交錯する3編の短編。沖縄を訪れた山本政志が出会った人々にカメラを向けたシネマ・エッセイというべきドキュメント。そして、東京を舞台に偶然に出会ったひと組の男女が繰り広げる中編『SWITCH』。それぞれのパートは舞台も異なれば、スケッチ、ドキュメント、フィクションと、スタイルもまったく異なっている。それが『Three☆Points』としてひとつの作品を構成するという、極めて異例の映画となっているのだ。
東京篇『SWITCH』では、幅広い作品に出演し日本映画界に欠かせない存在である村上淳と、山本政志作品には『聴かれた女』以来2度目の出演となる蒼井そらを主演に起用。『色即ぜねれいしょん』主演の渡辺大知や、『聴かれた女』で映画初出演した小田敬、映画監督の青山真治が共演している。
また、京都篇では『おそいひと』『堀川中立売』などの作品で知られる京都在住の映画監督・柴田剛がラインプロデューサーとして参加し、山本政志と共同作業をおこなっているのも注目だ。
『Three☆Points』は、発想から1ヶ月かけずに撮影されたという。デジタルの機動性と、なにより山本政志のフットワークの軽さが生み出した、既存の映画の枠組みを越えた自由さを持った作品だ。
京都『アポロとジュン』『シュートとジェイ』『メンションとリサ』
部屋にこもりがちのラッパーのアポロ(BETTY)と、彼をライブに連れ出そうとする恋人のジュン(藤田直美)。3年ぶりに戻ってきた相棒のシュートを迎えるジェイ。離れ離れになる最後の夜を過ごすメンションとリサ。京都のヒップホップたちが繰り広げるみっつの物語……。
沖縄
沖縄へとやってきた山本政志。恩納村、大宜味村、高江、金武町、それぞれのエリアで、山本政志は“おもろい人々”と出会い、カメラを向ける……。
東京『SWITCH』
夜の東京。男たちに絡まれていた沙紀(蒼井そら)は、偶然に通りがかった男・井賀(村上淳)に助けられた。男たちに殴られてケガをした井賀は病院に行くのを拒み、沙紀は井賀を自分の部屋へと連れていき手当てをする。
翌朝、沙紀は井賀を残して仕事に出かけ、井賀はそのまま姿を消したかに思えた。だが、沙紀が彼氏のフミヒロ(渡辺大知)を連れて部屋に戻ると、そこにはくつろぐ井賀の姿が。沙紀の叔父だと名乗った井賀はフミヒロと意気投合して酒をくみかわし、沙紀も井賀の行動に戸惑いつつも話をあわせていく。
井賀はケガが治るまで沙紀の部屋で過ごすと言い張り、沙紀もそれを拒むことができない。ひとつの部屋で過ごすふたりは次第にお互いの過去を明かすようになっていく。
いままで付きあった男に合わせてさまざまなタイプの女を演じてきた沙紀は、井賀が妻と子供を失っていることを知ると、妻の浩美を演じはじめる。外見を似せ、部屋のインテリアまで浩美の趣味に近づける沙紀は、やがて浩美と同一化していき……。