
太平洋戦争の最中。少年・アキオ(吉井一肇)は、野田フサノ(いしだあゆみ)に連れられ渡し舟に乗り込んでいた。
その半年前、孤児院を飛び出したアキオは感化院へと入れられた。“ホワイトサタン”とあだ名される指導員の伊集院(松村良太)にひどい仕打ちを受ける日々が続くが、院長の姪である陽子先生(早織)の存在がアキオの支えとなる。陽子先生が歌う「お菓子と娘」という歌を聴き、アキオは歌に出てくるお菓子・エクレールに想いを馳せる。
一緒に感化院に入った千吉(大賀)や陽子先生とのつらい別れもあったが、陽子先生の推薦により、アキオはフサノの家に引き取られることになった。
フサノの暮らしは決して豊かなものではなく、アキオも引き取られて早々に駅前の映画館の手伝いをして働くことになった。映画館を切り盛りするトミ子(竹内都子)や映写技師の徳さん(尾藤イサオ)たちに囲まれ、アキオは忙しくも楽しい日々を過ごす。感化院に入る前、お腹を空かせたアキオに菓子パンを食べさせてくれた遠山刑事(遠藤憲一)とその妻・静子(高橋惠子)も、仕事にいそしむアキオを優しく見守ってくれる。そして、陽子先生はいまでも手紙でアキオを励ましてくれており、エクレールの作り方の載っているお菓子の本をアキオに贈ってくれた。
だがある日、アキオはあるきっかけからフサノの家を飛び出してしまう。尾上紋三郎(林隆三)が率いる旅回りの一座とともに旅を続けるアキオだったが、厳しさを増す戦況は、やがて一座にも影を落とす。
ひとり東京に戻ることになったアキオだが、戦争の刃は容赦なくアキオの親しんだ町にも襲いかかっていた……。