五日市物語
監督:小林仁
出演:遠藤久美子 山崎佳之 草村礼子 ほか
2011年10月29日(土)よりワーナー・マイカル・シネマズ日の出にて先行公開 11月12日(土)より銀座シネパトス、立川シネマシティほか順次ロードショー
2011年/カラー/35o/DTSステレオ/119分

仕事で五日市を訪れた女性は、五日市の人々と触れあい町の文化や歴史を知る中で、次第に町の持つ魅力に惹かれていく。そして、五日市で過ごす日々は、彼女自身にも変化をもたらしていく……。
五日市は、古くからの文化をいまも色濃く残し東京都内であるにもかかわらず、ゆったりとした時間が流れる“東京のふるさと”と呼ぶべき町である。五日市町と秋川市が合併し、あきる野市が誕生したのが1995年(平成7年)。あきる野市市制15周年の記念作品として製作されたのが、映画『五日市物語』だ。
『五日市物語』は、日本映画では異例といえる体制により製作された。脚本・監督はあきる野市役所職員であり1995年に監督作『風の見える街』が劇場公開された小林仁。監督自身、ボランティアとして休日や有給休暇を費やしてメガホンをとった。そして、国・都の緊急雇用対策事業を活用してスタッフを募集し、幅広い年齢層の協力スタッフが現場の仕事に携わった。
そのような“市民の力”に支えられた映画ではあるが、キャストには映画の趣旨に賛同した豪華俳優陣が集まっている。主人公の友里にはドラマやCM、映画で活躍する遠藤久美子。老舗旅館の女将・トシ子には『Shall we ダンス?』などのベテラン・草村礼子。市役所職員の栗原には劇団みるき〜うぇいで脚本・演出も手がける山崎佳之。そのほか、井上純一、尾美としのり、布施博、夏木陽子らが出演。また、ケーナ奏者としての顔を持つ田中健が出演に加えて主題曲の作曲と演奏も担当し、演奏シーンは劇中でも使われている。
五日市の美しい風景と、温かさを伝える俳優陣の演技が、町の持つ魅力を存分に伝える人間ドラマがここに完成した。

伊藤友里(遠藤久美子)が勤めているのは、テレビ局などの依頼を受けて調査をおこなう情報収集の会社。ある日、友里が担当することになったのは「五日市は今」というドキュメンタリー番組のための取材。依頼してきたテレビ局と最近トラブルを起こしたばかりの友里はあまあまり気乗りしないが、チーフの黒田(井上純一)に命ぜられ、しぶしぶながら3日間の取材旅行に行くことになった。
電車であきる野市へとやってきた友里は、想像していたよりも開けた街の様子に驚きながら、取材の協力を求めに市役所へと向かった。対応するのは、情報発信室の職員・栗原(山崎佳之)。栗原は強引な友里の態度に若干閉口しつつも、友里を案内して五日市の各所を回る。駅や市役所のある旧・秋川市とは趣の異なる五日市の風景を目にした友里は、その土地の歴史を知り、そこに住む人々と触れあっていく。取材に来る前は五日市が東京都内にあることすら知らなかった友里だが、街を回る中で、次第に五日市という土地の魅力に気づいていく。
友里の「昔の話が聞きたい」という要望に、栗原は友里を老舗旅館の油屋へと案内した。生まれてからずっと五日市で暮らし、この旅館を切り盛りしてきた女将のトシ子(草村礼子)の話を聞くうちに、友里の中では、この取材がよいものになるという確信が生まれていた。
友里はルポライターを目指していた学生時代の気持ちを思い出しながら、さらに取材を進めようとするが、その矢先に黒田から入ったのは、番組が延期となったため取材を打ち切って戻ってくるようにという連絡だった……。