ベラルーシに住む少女・カリーナ(ナスチャ・セリョギナ)。田舎にあるおばあちゃん(タチアナ・マルヘリ)の家で過ごすカリーナは、湖で遊んだり、庭の木になるリンゴの実をかじったり、飼い犬と散歩をしたり。
カリーナは友達のユーリャの家を訪ねるが、呼びかけても誰の返事もない。人の気配もなく荒れてしまっているユーリャの家。「誰もいなくてさみしいわね」。おばあちゃんはカリーナにそう声をかける。
そんなカリーナが、おばあちゃんの家を離れなければならない日がやって来た。ずっとおばあちゃんの家にいたいとせがむカリーナだが、迎えに来たアレキサンドルおじさん(イゴリ・シゴフ)の車で、ミンスクのおじさんの家へと帰っていく。
アーニャおばさん(リュディミラ・シドルケヴィッチ)は、カリーナが帰って早々機嫌が悪く、おじさんとケンカをする。おばさんとおじさんが仲直りするように、寝る前に神様にお祈りするカリーナ。
大きな空や森や湖に囲まれたおばあちゃんの家とは違って、ミンスクは開けた都会だ。カリーナはまだミンスクの街になじめない。バスを乗り間違えて道に迷ったり……。
ある日、カリーナは入院している母(オルガ・ヴォッツ)を見舞いに行く。「おばあちゃんの家がいい」と話すカリーナに、母は“悪い魔法使い”の話を聞かせる。“チェルノブイリ”という街に悪い魔法使いのお城があって“毒”をまき散らしているのだと。おばあちゃんの家は、毒で汚れた街の隣だから危ないのだと……。
悪い魔法使いの毒は、カリーナの家族を離れ離れにした。そして、やがてカリーナの体にも……。
カリーナの林檎〜チェルノブイリの森〜
監督:今関あきよし
出演:ナスチャ・セリョギナ タチアナ・マルヘリ リュディミラ・シドルケヴィッチ イゴリ・シゴフ ほか
2011年11月中旬よりシネマート六本木にてロードショー
2011年/カラー/ヴィスタサイズ/ドルビーステレオ/109分
ベラルーシに住む女の子・カリーナ。おばあちゃんの家で過ごすのが大好きなカリーナだが、おばあちゃんともお母さんとも離れて、おじさん夫妻のもとで暮らさなくてはならない。おばあちゃんの家の隣の“チェルノブイリ”という街で、悪い魔法使いのお城が毒をまき散らしているからだ……。
1986年に起きたチェルノブイリ原子力発電所の事故。事故発生から10数年を経た2003年、映画監督の今関あきよしは偶然耳にしたラジオでチェルノブイリ事故の被害がいまだに続いてることを知る。かつてドキュメンタリー映画の撮影でロシアを訪れたことのある今関監督は、チェルノブイリ事故が残した傷跡を映画にすることを決意した。完全な自主制作として企画はスタート、数々の困難を乗り越えて2003年6月に現地取材を敢行し、同年、ベラルーシでクランクインを迎えた。
この作品はドキュメンタリー映画ではない。主人公の少女・カリーナをとおして“チェルノブイリ”が残したものを描いた劇映画であり、これまで今関監督が送り出してきた作品に連なる“少女の物語”の新たな1本ともいえる作品となっている。
2004年に『少女カリーナに捧ぐ』のタイトルで作品は完成したが、公開が決まらないまま時間が過ぎていった。チェルノブイリ事故から25年の節目の年の公開を目指して2010年に再始動。今関監督は改めて現地を訪れ、いまだ消えない事故の痕跡をカメラに収めた。再編集をおこない公開に向けて準備が進む中で起きた東北大震災。福島原発の事故により、日本は大きな放射能災害に見舞われることになった。映画の公開も危ぶまれたが「いま、公開すべき映画なのでは」という監督たちの想いから公開が実現する。『カリーナの林檎 チェルノブイリの森』と改題された作品が、多くの人の想いを込めて、いま幕を開ける。
- カリーナ:ナスチャ・セリョギナ
- おばあちゃん:タチアナ・マルヘリ
- アーニャおばさん:リュディミラ・シドルケヴィッチ
- アレキサンドルおじさん:イゴリ・シゴフ
- カリーナのママ:オルガ・ヴォッツ
- カリーナのパパ:セルゲイ・シムコ
- セルゲイ:アンドレイ・ドゥピク
- マーシャ:ターニャ・イフェレェミェンコ
- ユーリャ:リザ・ミンキナ
- エキストラ出演協力:ミンスクの人々
- 監督・脚本:今関あきよし
- 脚本:いしかわ彰
- 撮影・編集:三本木久城
- 録音:浜口文幸
- 助監督:龍野征一郎
- 制作担当:中野亜紀子
- 効果・整音:福島音響
- 照明協力:ベラルーシフィルム
- 現地コーディネーター:キセーニャ/レナ
- 通訳:ナターシャ
- 現地ドライバー:アンドレイ/ワジン
- 字幕監修:三ツ井和子
- 字幕翻訳:樟山由美
- 日本語ナレーション:大林宣彦
- 音楽:遠藤浩二
- 挿入歌:「THE ONE JOY」(作詞:浅田伸/作曲:浅田久美子)
- エンディング曲:Rose in many Colors「アヴェマリア〜カリーナへの祈り〜」
- 製作・配給:カリーナプロジェクト
- 配給協力:パル企画