
いつのまにかさびれていた生まれ故郷。東京での生活に挫折して5年ぶりにこの町に戻ってきた朋子は、友人たちと力をあわせ、もう一度この町に輝きを取り戻そうとする――。
『恋谷橋』は、2008年に開催された「第1回スーパーシナリオグランプリ」で応募総数777本の中からグランプリに選ばれた「雨の中の初恋」の映画化作品だ。映画化にあたっては全国からロケ地を募集。多数の候補地の中から鳥取県の三朝(みささ)温泉が選ばれ、三朝温泉を舞台に、ひとりの女性が故郷の人々との触れ合いの中で大切なものを見つけだす感動のドラマが完成した。
主人公の朋子を演じるのは、ボーカル&ダンスユニット・SPEEDのメンバーで、女優として多くのドラマや舞台、映画に出演する上原多香子。個人として初の映画主演作となる本作では、自分の人生に迷いを感じる等身大の女性をリアルに演じてみせた。
そして朋子の幼なじみである板前の圭太には「華和家の四姉妹」など人気ドラマに出演して注目を集める水上剣星が『BECK』に続いて2作目の映画出演。言葉少なだが真っ直ぐな想いを持った青年を好演している。
そのほか、朋子の友人たちには高野八誠、岩佐真悠子、川岡大次郎。朋子の姉に中澤裕子、朋子の上司に葛山信吾、さらに松田美由紀、小倉一郎、石橋蓮司、吉行和子、松方弘樹と、若手からベテランまで、幅広い豪華なキャストが揃っている。
監督は『新・雪国』以来10年ぶりに劇場作品のメガホンをとる後藤幸一。また、数々のヒット曲を持つシンガーソングライター・小椋佳が音楽監修をつとめ、作品を優しく包み込む主題歌「君、しなやかであれ」も担当している。

温泉街として知られる鳥取県の三朝町。この町で生まれ育った島田朋子(上原多香子)は、5年ぶりに町へと戻ってきた。空港に降り立った朋子を迎えに来てくれたのは、朋子とは子供のころから一緒に過ごしてきた圭太(水上剣星)だった。
朋子の実家は、老舗の旅館“大橋”。しかし、朋子が町を離れている間に、町は観光客が減って寂れはじめていた。大橋を切り盛りする母親・祥子(松田美由紀)によると、大橋も決して楽な状態ではないらしい。かつては何人もいた従業員も辞めていき、いまは圭太とその父親(松方弘樹)の板前ふたりを残すのみだ。
朋子はいまも町で暮らす同世代の友人たちと再会を果たすが、友人の中には、仕事を求めて町を出た者や、やむを得ぬ事情から逃げるように去っていった者もいた。かつての友人たちの状況を知る中で、朋子は、自分も東京のデザイン事務所をクビになって町に戻ってきたのだと圭太に明かす。
そんな中、結婚して大阪で暮らしているはずの朋子の姉・美穂子(中澤裕子)が突然、大橋に戻ってきた。どうやら夫との関係に問題があるらしい。美穂子に若女将になってもらいたいと思っていた祥子は美穂子の帰還に大喜びだが、美穂子は乗り気ではなさそうだ。一方、朋子は東京でやり残したことに想いをめぐらせ、再び東京へと向かう。だが、旅館の経理や金策で忙しい日々を送っていた父親の和夫(小倉一郎)が病気で倒れたという報せが……。
寂れゆく故郷、デザイナーとしての自分の夢……改めて自分を見つめなおした朋子は、友人たちと力を合わせて、もう1度三朝の町を明るく輝かせようと決意する……。