杉田家の家族は、18歳の雛子(大西礼芳)、母親の春子(松田美由紀)、父親の完治(山路和弘)、祖母の妙(松原智恵子)。夏のある日。妙が亡くなった。その日から、杉田家には変化が訪れる。
完治は会社にも行かず、仏壇の妙の写真を前に、昼から酒を飲む毎日を過ごすようになる。そんな夫の姿にため息をつく春子は、足の不自由な青年・健一(関屋和希)のホームヘルパーの仕事に励む。健一のもとでは、家とは打って変わって明るい表情を見せる春子。牛乳配達のアルバイトをしている雛子は、自宅を出て友人の珠子(伊藤菜月子)と一緒に暮らそうと持ちかけるが、珠子に断られてしまう。
やがて、完治は妙の残した下着や服を身につけるようになり、その行動の異様さに家族の溝は深まっていく。妙に禁じられていたピアスの穴を開けた雛子を厳しく叱る完治と、それに反発する雛子。春子も加わってのケンカの中で、雛子は春子を突き飛ばしてケガをさせてしまう。
そして、健一の家でも変化は起きていた。健一のただひとりの家族である姉の貴子(浅見れいな)が、置き手紙を残して家を出て行ったのだ。春子は、健一と一緒に暮らすと言い、荷物をまとめて杉田家をあとにする……。
すっかり崩壊に向かっていく杉田家。「家はね、住人の快適な生活を守るためにあるの。……私の快適な生活が守られていない!」。チェーンソーを手にした雛子は、その感情を噴出させる。
家を壊して雛子はどこに向かう? そして健一とともに暮らそうとする春子は?
MADE IN JAPAN−こらッ!−
監督:高橋伴明
出演:松田美由紀 大西礼芳 ほか
2011年9月24日(土)より京都シネマ先行公開 10月1日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次ロードショー
2010年/カラー/HDデジタル/16:9/ステレオ/84分
祖母の死をきっかけにひとつの家族が崩壊していく。仕事にも行かず引きこもる父。ホームヘルパーの仕事に没頭する母。そのとき、18歳の娘はどうする? 「家」っていったいなんなんだ?
プロのスタッフと学生が共同で映画作りに取り組むプロジェクトとして、京都造形芸術大学映画学科が立ち上げた“北白川派映画芸術運動”。木村威夫監督作品『黄金花 −秘すれば花、死すれば蝶−』に続く第2弾として、同プロジェクトから送り出されるのが、高橋伴明監督がメガホンをとった『MADE IN JAPAN−こらッ!−』である。
この作品の大きな特徴は、脚本や主演という重要なパートを学生が担っていることだ。「家族」を独特の視点でとらえた脚本を執筆したのは、執筆当時には京都造形芸術大学4回生だった和間千尋。3回生のときに授業で書いた脚本に教授である高橋監督が注目、1年間にわたり改稿をくりかえし脚本を完成させた。そして一家の娘・雛子役を演じるのは、現在も同大学在学中で、撮影時には1回生だった大西礼芳(おおにし・あやか)。それまで演技の経験はなかったにもかかわらず、母親役でダブル主演をつとめる松田美由紀をはじめとするプロの俳優たちと堂々とわたりあう存在感あふれる演技を見せている。そのほか、スタッフ・キャスト総勢50人の学生が参加し、経験豊富なプロのスタッフ・キャストに支えられながら作品を作りあげた。また「見せるまでが映画である」という理念に基づき、配給・宣伝まで学生の手で進めるという意欲的な試みがなされている。
奇妙でエキセントリックな人々が繰り広げる物語にも見える『MADE IN JAPAN−こらッ!−』だが、そこで描かれているのは、どこにでもある現代の日本の家族の姿かもしれない。「現在」を鮮烈に切りとった映画が、大学から送り出される。
- 杉田春子:松田美由紀
- 杉田雛子:大西礼芳
- 杉田完治:山路和弘
- 松井貴子:浅見れいな
- 松井健一:関谷和希
- 花山珠子:伊藤菜月子
- 牛乳屋のおじさん:水上竜士
- 杉田妙:松原智恵子
- 監督:高橋伴明
- 脚本:和間千尋
- プロデューサー:高橋伴明/山本起也
- 撮影監督:小川真司
- 照明:金谷守
- 美術:嵩村裕司
- 録音:浦田和治/清水充
- 監督補:早川喜貴
- 音響効果:帆苅幸雄
- 衣裳:村島恵子
- メイク:新井みどり
- 特殊造形:宗理起也
- スタント:北沢光雄
- 演技事務:水上竜士
- 編集:北白川派
- 音楽:原田喧太
- 主題歌:Kenta Harada「Junction」(作曲:原田喧太/作詞:YUKA)
- 製作:北白川派(林海象/高橋伴明/小川真司/水上竜士/山本起也)
- 配給・宣伝:北白川派×マジックアワー×京都造形芸術大学映画学科