
日本で1年間に警察に届けられる捜索願いの数は、数万件にも及ぶ。そして、そのうち所在がつかめないままの行方不明者は、毎年1万人以上にのぼるという。いまこの瞬間にも、どこかで誰かが姿を消しているかもしれない――。少女の失踪という、現実を反映した題材で描くあまりにも残酷な衝撃作。それが『七つまでは神のうち』だ。
監督・脚本は『呪怨 白い老女』(脚本・監督)、『案山子』『怪談新耳袋 怪奇』(脚本)などの三宅隆太。これまで心霊ホラーを得意としてきた三宅が、今回は新たな角度から“恐怖”にアプローチし、人間の心に鋭く切り込んでみせる。
物語の中心となる少女・和泉繭を演じるのは、少女向けファッション雑誌「ニコラ」モデルとして絶大な人気を誇る期待の新星・日南響子。映画初出演にして初主演の大役を見事につとめるとともに、主題歌「Save me」で歌手としての顔も見せる。
繭と同じように恐怖を体験するふたりの少女には、西川麗奈役に『ひぐらしのなく頃に』シリーズや「仮面ライダーW」の飛鳥凛、岸本薫役に『奈緒子』『子猫の涙』など豊富なキャリアを持つ藤本七海と、実力派若手女優が顔を揃えた。また『ノルウェイの森』などで印象深い演技を見せた霧島れいかが、7歳の娘を持つ主婦・真奈役で独特の存在感を発揮する。
主演の日南響子をはじめ、たしかな演技力を持つ俳優陣の存在が、この作品を成立させているといっていいだろう。
『七つまでは神のうち』が描くのは、陰惨で救いのない世界だ。しかしそれは決して我々にとって縁遠いものではない。その“陰”の部分は、きっと我々のすぐそばに、いや、我々自身の中にあるものなのだ。『七つまでは神のうち』はその“陰”を凶暴なまでに観客に提示する。そこから目をそらすな。逃げるな。しっかりと目撃せよ、現在を生きるのならば。

不登校の女子高生・和泉繭(日南響子)は、父親に付き添われて教会に通った帰り道、駐車場に停まっているワゴン車の中にひとりの少女が捕らわれているのを見つける。なんとかワゴン車の運転手の目を逃れた繭は父親に事情を話し、父の運転する車でワゴン車のあとを追いかける。ワゴン車とあとを追う繭たちの車は、人気のない山道を奥へ奥へと進んでいく――。
7歳になる遠藤さくら(下江梨菜)の母親・真奈(霧島れいか)は、さくらがいなくなってしまう夢にうなされていた。目を覚ますと、そこには無邪気に笑うさくらの姿が。山に遊びに行くというさくらを心配した真奈は、さくらにお守りを持たせて送り出す――。
岸本薫(藤本七海)は、留守番のために叔母の家を訪ねた。家の中には叔母の集めている何体もの人形が置かれている。その中にある1体の日本人形に薄気味悪さを感じる薫。電話をかけてきた叔母にそのことを告げる薫だったが、叔母からは返ってきたのは「そんな人形はない」という答えだった――。
新人女優の西川麗奈(飛鳥凛)は、ロケのために山の中にある廃校へとやってきた。スケジュールの都合でひとりで帰らなければならない麗奈は、駅へ行くため森を抜けようとするが、そこで奇妙な光景を目にする。そして麗奈は、人気のなくなった廃校へと戻ってきてしまう――。
繭、薫、麗奈。異なった場所で暮らす3人の少女ひとりひとりに迫る恐怖。そして真奈とさくらに訪れた悲劇。森の奥深くには、人間の心が生む闇がさらに深く深く横たわる――。