バレエのレッスンに通っている少女・琴野(平野茉莉子)は、レッスンを終えて夜の道を帰宅途中、路肩に車を停めた男に道を訪ねられた。不審に感じ立ち去ろうとした琴野だが、男に強引に車に押し込まれてレイプされてしまう。
それから月日は流れた。夏芽(平野茉莉子/二役)と母親の琴野(駒形美如)、祖父の櫂(岩尾拓志)の家族3人は、河原に停めたバンで車上生活を送っている。
琴野は、電話で呼び出されるとラブホテルで客のマッサージをし、そのまま体を委ねて金を稼ぐ。夏芽は、言葉が話せない母親に付き添い、母親が仕事を終えたあと、ラブホテルの部屋を借りて体の不自由な櫂にシャワーを浴びさせる。それが、家族の送る日々だった。
櫂は、3人が暮らす川で鯉が跳ねるのを見たと言い、家族は鯉を捕らえるために川に網をかける。夏芽は尋ねる。「ホントに鯉が跳ねるのを見たの? あんな網でかかるのかな?」。櫂は答える。「かかるさ、信じていればな」。
ある日、家族のもとに1本の電話がかかる。それは、家族3人がこれまですべてをかけて捜し求めてきた人物が見つかったという報せだった。見つかったという人物は、ほんとうに家族が探してきた男なのか? それを確かめるため、夏芽は電話で知らされたある場所へと向かう。
夏芽が、そして琴野や櫂が知ることになる事実は、家族ひとりひとりの心を揺るがしていく。漂泊を続けてきた家族がたどりつく先とは?
ネムリユスリカ
監督:坂口香津美
出演:平野茉莉子 小林愛実 駒形美如 中村太一 岩尾拓志 ほか
2011年11月19日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかレイトショー
2011年/カラー/シネマスコープサイズ/96分
母と娘、祖父の3人家族。娘は、母が少女だったころ見知らぬ男にレイプされて産まれた子だ。家族は、車で暮らしながらひとりの男を探し求める。娘にとっては父親であり、母にとっては憎むべきレイプ犯である男……。
『ネムリユスリカ』は、“性犯罪により産まれた子供”という題材を描き、ロッテルダム国際映画祭やレインダンス映画祭など海外の映画祭で高い評価を受けた衝撃作だ。
監督・脚本は家族や若者をテーマにしたドキュメンタリー番組の演出やプロデュースを数多く手がける坂口香津美。劇映画第3作目となる『ネムリユスリカ』では撮影も手がけ、独特の映像美が光る作品を完成させた。
主人公の少女・夏芽(なつめ)と、その母・琴野の少女時代の二役で主演をつとめたのは、期待の新鋭・平野茉莉子。本作が映画デビューながら、主演に抜擢した坂口監督の期待に応えるように、すべてをさらけ出すような熱演を見せる。
そして、母の琴野役に駒形美和、祖父・櫂役に岩尾拓志、さらに中村太一ら、映画やドラマ、CM、舞台などで活躍する俳優陣が共演。また、数々の国際コンクール優勝経験を持ち、世界的に注目を集める1995年生まれのピアニスト・小林愛実がピアノ演奏をつとめるのに加え、女優として出演もしている。
タイトルとなっている“ネムリユスリカ”とは、アフリカに生息する昆虫の名前である。砂漠地帯に住むこの虫は、乾季になるとその名のように乾燥状態で“眠り”、雨季になると蘇生する。この脅威の生命力を持つ昆虫の名を冠した映画『ネムリユスリカ』は、ひたすらに理不尽な世界の中で、それでも生き抜いていく人間の物語である。
- 鷺沼夏芽/琴野(少女時代):平野茉莉子
- 目黒瑞樹:小林愛実(特別出演)
- 鷺沼琴野:駒形美如
- 目黒桂一:中村太一
- 鷺沼櫂:岩尾拓志
- 監督・脚本・撮影:坂口香津美
- プロデューサー:落合篤子
- 美術:石原正信
- 録音:安岡勲
- 整音:本田孜
- 編集:坂口香津美/落合篤子
- ヘアメイクデザイン/特殊メイクデザイン:柳延人(willow)/鏡宮ゆき(willow)
- ヘアメイク:孫ふぁさ/高瀬弘美
- 彫刻指導・作品提供:武智織沙
- 海外アドバイザー:長谷川敏行
- 宣伝美術:大寿美トモエ
- 音楽:日高哲英
- ピアノ演奏:小林愛実
- 製作・制作・配給:スーパーサウルス
- 配給協力:ゴーシネマ