Peace
監督:想田和弘
2011年7月16日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
2010年/日本・アメリカ・韓国/HD/75分
障害者や老人をサポートするNPO活動をする夫婦。厳しい予算の中で活動を続ける夫婦は、一方で野良猫への餌やりをめぐって意見が分かれたり、ごく平凡な日常を過ごしている。夫婦がサポートで訪れる老人たちにも、それぞれの日常がある。「現代のニッポンの光景」を、そっとのぞき込むようなドキュメンタリー映画、それが『Peace』だ。
監督は想田和弘。選挙運動の裏側を描いた2007年公開の『選挙』、精神科クリニックの患者たちにカメラを向けた2009年公開『精神』と、2本の「観察映画」で海外の映画祭で高い評価を得ているドキュメンタリー作家である。2009年、想田は韓国で開催される“非武装地帯ドキュメンタリー映画際”から、ドキュメンタリー映画制作の依頼を受けた。映画祭から提示されたテーマは「平和と共存」。「先にテーマを設定しない」という想田の従来の作り方とは違ったアプローチをしつつも、ナレーションや音楽を一切使用しないという想田独自のスタイルを保って作られた『Peace』は「観察映画・番外編」と位置づけられる作品として完成した。
映画の中心となるNPO活動をする夫婦、柏木寿夫と柏木廣子は、想田の妻の両親である。「義父が庭で猫に餌をやっている様子を撮影する」というごく個人的な行動からスタートした『Peace』は、日本の福祉政策の現状や、独り暮らしの91歳の老人の戦争体験へとつながり、まさに「平和と共存」を映し出していく。
タイトルの『Peace』の由来は、柏木夫妻がサポートで訪れる橋本老人の愛飲するタバコの銘柄である。もちろん、それ以外のさまざまな意味もタイトルには込められている。『Peace』ってなんだろう? その答えは、観る人の数だけあるはずだ。
- 監督・製作・撮影・編集:想田和弘
- 製作補佐:柏木規与子
- 撮影協力:共助グループ喫茶去/岡山済生会総合病院/移動ネットおかやま
- 英語字幕:想田和弘・杉本祐里佳
- 脚本:水橋文美江/鈴木智
- 配給:東風