さくら、さくら―サムライ化学者 高峰譲吉の生涯―
監督：市川徹
出演：加藤雅也 ナオミ・グレース 国分佐智子 ほか
２０１１年３月５日(土)より銀座シネパトスほかにてロードショー
２０１０年／カラー／ドルビーデジタルステレオ／１３３分
明治時代、多くの人を救いたいという情熱を持ち、アメリカに渡り化学を学んだ日本人がいた。やがて彼はアメリカ人の女性と恋に落ち、彼女とふたり、支えあいながら歩いていく――。
消化剤として広く用いられているタカヂアスターゼの発見や止血剤として使われるアドレナリンの抽出など、多くの業績を残した化学者であり、実業家としても、また日米の架け橋となる特使としても大きな成果を残した高峰譲吉。その波乱に満ちた半生が『さくら、さくら―サムライ化学者 高峰譲吉の生涯―』として映画化を果たした。
監督は市川徹。監督作『九転十起』をとおして高峰譲吉の偉業を知った市川監督が、高峰の名をもっと多くの人々に知らしめたいという想いから、自ら企画・プロデュースもつとめ映画化を実現させた。
高峰譲吉を演じるのは幅広いジャンルの作品に出演する加藤雅也。単身渡米しハリウッドに挑んだ経験を持つ加藤は、高峰役に最高のキャスティングと言えるだろう。劇中では流暢な英語を披露し、海を越えて活躍した高峰をリアルに演じている。
高峰の妻となるキャロラインには、13歳からファッションモデルとして活躍し、現在はジャズシンガーとして活動するナオミ・グレースが映画初出演。また、国分佐智子が譲吉の妹・順とその曾孫・真里子の二役を演じ、観客を作品世界に誘うガイド役を果たしている。そのほか、大橋吾郎、美木良介、萩尾みどり、夏木陽介、松方弘樹ら、多彩な実力派キャストが揃った。
かつて高峰譲吉がワシントン市に送った桜並木はいまでも美しい花を咲かせている。その花の美しさと同じように“サムライ化学者”の生き様は、時代を越えて現代を生きる人々にも多くのことを教えてくれるだろう。
救急センターにつとめる看護士の竹橋真里子（国分佐智子）は、化学の分野で大きな功績を残した高峰譲吉（加藤雅也）の故郷・高岡を訪れた。譲吉の妹・順（国分佐智子＝二役）を曾祖母に持つ真里子は、譲吉ゆかりの地をたどりながら、譲吉の生涯に想いを馳せていく――。
加賀藩御典医をつとめた高峰清一（夏木陽介）の息子である譲吉は、父に「医者にはならない」と意志を告げた。譲吉は「化学は多くの人を救う」という考えから、医学ではなく化学の道を進むことを選んだのだ。譲吉18歳のときであった。
東京大学工学部の前身である工部省工学寮で学び、優秀な成績で卒業した譲吉は、次いでイギリス・グラスゴー大学へと留学し、明治16年に帰国する。農務省工務局勤務となった譲吉は、留学経験から「日本の技術でアメリカを驚かせてやる」との想いを抱き、実用実利を考えた研究を続けていく。益田孝（大橋吾郎）は譲吉の姿勢を強く批判するが、のちに譲吉の想いを理解し意気投合、長年にわたり付きあう友人となる。
明治17年、万国博覧会へと赴いた譲吉は、メアリー・ヒッチ（KOTA）の招きを受けてヒッチ邸を訪れた。そこで出会ったのが、メアリーの娘であるキャロライン・ヒッチ（ナオミ・グレース）であった。「日本のことをなにも知らない」というキャロラインに、譲吉はさくらの刺繍の入ったハンカチを差し出した――。
帰国した譲吉は、人造肥料普及のために奔走し、また特許庁設立に尽力する。そして明治20年、譲吉は再び渡米、キャロラインと結婚する。まだ国際結婚が珍しかった時代、ふたりは波乱に見舞われつつも、支えあいながらしっかりと歩んでいく――。
