それでも花は咲いていく
監督:前田健
出演:仁科貴 滝藤賢一 平山浩行 ほか
2011年5月7日(土)よりテアトル新宿、キネカ大森にてロードショー
2011年/カラー/ビスタサイズ/DTSステレオ/117分
ものまねタレントとして人気を博し、俳優・振付師としても活躍する前田健が、自身の小説を映画化した『それでも花は咲いていく』で映画監督デビューを果たす。
2009年に刊行された原作「それでも花は咲いていく」は、セクシャル・マイノリティという題材に正面から取り組んだ作品として話題を呼んだ。映画版は、9編の短編で構成された原作から3編を選び、オムニバス形式で描いている。「エーデルワイス」「ヒヤシンス」「パンジー」と花の名前を冠された3編のエピソードは、小学生に恋愛感情を抱いてしまう中年男性、他人の家に忍び込むのを趣味としている男、突然亡くなった母の記憶をとどめようとする青年、それぞれの物語を綴っていく。
3人の主人公を演じるのは、『アキレスと亀』などで個性を発揮する仁科貴、『クライマーズ・ハイ』で注目を集めた滝藤賢一、ドラマ・映画「ROOKIES」の平山浩行という男優たち。三者三様の苦悩や葛藤を真摯な演技で表現している。
共演には、南野陽子、カンニング竹山、佐藤二朗、ダンカン、小木茂光、酒井敏也、麻生祐未と、バラエティに富んだ豪華キャストが揃った。藤本七海、大出菜々子、吉岡茉祐という10代の女優陣の巧みな演技にも注目だ。
そして、人気シンガー・一青窈の「うんと幸せ」がエンディング曲として使われ、映画をやさしく締めくくる。
セクシャル・マイノリティという題材を扱った作品だが、そこで描かれている感情は、きっと誰の心にもある普遍的なものだ。映画を観た人は誰もがみんなどこか共感を覚えるはずだ。切なくて、やるせなくて、でもどこかに優しい視点を感じる「人間」のドラマがそこにはある。
「エーデルワイス」
東京で進学塾の講師をしていた戸山勝(仁科貴)は、高校受験を控えた安藤紗英(藤本七海)の家庭教師のアルバイトをしている。安藤家を訪れて紗英の妹で小学生の奈美(大出菜々子)に会うことは、戸山のなによりの楽しみになっていた。戸山にとって奈美は恋愛の対象だったのだ。それが許されないことだとは知っており、悩み苦しむ戸山。紗英たちの父親(冨家規政)や母親(南野陽子)からも信頼されている戸山は、そんな内心を隠しつつ奈美と一緒の時間を過ごしていく。そんな中、戸山が偶然に出会ったのは、かつての進学塾での教え子・久美(吉岡茉祐)だった……。
「ヒヤシンス」
自分の容姿に強いコンプレックスを持つ男(滝藤賢一)は、知らない人の部屋に忍び込むのを趣味にしていた。なにも盗まず、壊さず、ただ部屋を観察して、その住人を想像する。ある日、女性のひとり暮らしと思われる部屋へ忍び込んだ男は、その部屋と部屋の主に惹かれ、住人の顔も知らぬまま繰りかえし同じ部屋に忍び込む。何度目かに部屋に忍び込んだとき、何気なくパソコンを起動すると、そこには部屋の主・メグミからの「見知らぬあなたへ」というメッセージが書かれていた。その日から、男とメグミはパソコンを介してお互いにメッセージを交わすようになる……。
「パンジー」
藤吉幸二(平山裕行)の母・貴美子(麻生祐未)が突然この世を去った。30歳を過ぎても就職もせず、ピアノ講師をしながら作曲家を目指していた幸二を、ただひとり応援してくれていたのが貴美子だった。子供のころから、ときに厳しくも優しく幸二を包み込んでくれていた母。母とともに暮らした家で父の進(小木茂光)とふたりだけの暮らしを送る中で、幸二は母との記憶に想いを馳せる……。