教師の鵜川勉(三浦誠己)は、ある日、勤務先の学校に弁護士・稲村(長宗我部陽子)の訪問を受けた。稲村弁護士は、ひとりの女性の名を鵜川に告げる。6年前になにがあったのか知りたいという稲村の言葉に、鵜川は、自身の世界を大きく変えたその女性との出会いを振り返る――。
6年前の夏。交際相手である同僚の笠松三千代(赤澤ムック)と買い物に出かけた鵜川は、偶然に看護師の遠沢メイ(笹峯愛)と出会った。三千代とメイは高校時代の部活で先輩後輩だったというが、三千代はメイと別れたあと「昔から嫌いだった」と躊躇いもなく口にし、不快感を露わにするのだった。
その後、ちょっとしたきっかけから三千代との間にわだかまりができてしまった鵜川はメイと再会、ふたりは三千代に隠れて一緒に酒を飲んだり映画を観にいったりと、次第に親しさを増していく。
やがて鵜川はメイと体の関係を持ち、結婚まで考えていた三千代と別れることを選んだ。そしてメイとの交際を続けていく鵜川だったが、ある日メイから「会わないほうがいい」と告げられる。かつての恋人が再びメイの前に現われ、もう1度やり直したいと迫っているというのだ。
メイの元恋人・真山(朴昭熙)は、鵜川の勤める学校にまでやって来た。粗暴な態度の真山によって、鵜川とメイの生活は危機に瀕する。それでも別れることはできない鵜川とメイ。しかし真山から逃げることもできない――。
行き場もなくただ焦燥感だけが増していく中、メイはある決意を固めていた――。
彼女について知ることのすべて
監督:井土紀州
出演:笹峯愛 三浦誠己 ほか
2012年5月19日(土)よりユーロスペースにて2週間限定レイトショー ほか全国順次公開
2012年/カラー/HD/105分
地方都市で平凡に生きてきた男は、ひとりの女と出会った。女は男の人生を一変させる。男と女がたどるのは、破滅への道か、それとも――。
脚本家として瀬々敬久監督作品など多くの作品に参加し、監督としても『ラザロ』三部作や『旅行死亡人』といった話題作を送り出す井土紀州。“映画愚民”を名乗り刺激的な活動を続ける井土が、佐藤正午の同名小説を原作にした『彼女について知ることのすべて』で、激しく凶暴なラブストーリーを描き出す。
主演をつとめるのは笹峯愛。15歳でデビュー以来、女優・タレントとして幅広く活動し、近年は舞台のプロデュースも手がける笹峯だが、意外にも映画主演は本作が初めて。笹峯が演じる主人公・遠沢メイは、少女のような快活さと、成熟した女の色香と、さらには獰猛なまでのエロスさえも見せつける。それはまさに現代のファム・ファタールと呼ぶべき存在だ。
そして、メイに惹かれていく教師・鵜川を演じるのは『海炭市叙景』『ヘヴンズ・ストーリー』など、多くの作品で唯一無二の存在感を見せる三浦誠己。そのほか、黒色綺譚カナリア派主宰で映画『結び目』で主演をつとめた赤澤ムック、井土監督作品『行旅死亡人』で印象的な演技を見せた長宗我部陽子ら、共演にも実力派俳優が揃った。
どこかに抑圧的な空気を感じさせる地方の風景の中で綴られていく愛欲の物語。そこには“失われたもの”への追憶が漂っているかのようだ。井土監督が長年あたためてきた企画を実現させた『彼女について知ることのすべて』は、現代に“愛”の激しさを問う。
- 遠沢メイ:笹峯愛
- 鵜川勉:三浦誠己
- 真山光男:朴昭熙
- 笠松三千代:赤澤ムック
- 稲村弁護士:長宗我部陽子
- 杉浦洋一:中村憲刀
- 監督・脚本:井土紀州
- 原作:佐藤正午「彼女について知ることのすべて」(光文社文庫刊)
- 企画:梅村宗宏/井土紀州
- プロデューサー:山口幸彦/竹内宗剛/梅村宗宏
- アソシエイトプロデューサー:齋藤法義
- ラインプロデューサー:坂本礼
- 音楽:平山準人
- 協力:光文社
- 製作:キングレコード/アミューズソフトエンタテインメント
- 制作:ムー・エンタテインメント
- 配給:キングレコード
- 配給・宣伝:太秦