『その無垢な猫』などの作品で知られる小説家の高田則文(モト冬樹)は、まもなく60歳の誕生日を迎えようとしている。
数年前に妻を亡くして以来、高田はまったく新作を書いていない。高田に憧れて作家となった安藤(内村遥)から、なぜ書かないのかと尋ねられても、高田は「書けないんだからしょうがないじゃん」と笑うだけだ。
安藤自身はテレビにも出演する売れっ子作家となっているのだが、本人は現状に満足できてはいないらしい。高田は、安藤から新作の原稿を読んでほしいと託された。
安藤は、高田の誕生パーティーの世話役をやることになっている。会場は高田と安藤が行きつけのスナック。しかし、店に呑みに行っても、酔った安藤は高田に絡むばかりで高田は苦笑い。
安藤が帰ったあと、高田は最近店で働き出した小夜(小宮一葉)という女性を紹介される。美人の小夜だが、男運がなく妻のいる男性とばかりつきあっているという。恋愛の相談に乗ってほしいと頼まれ、高田はスナックが閉まってから小夜の話を聞くことに。小夜のお勧めの店で呑みながら話を聞くつもりがすでに店は閉店時間。高田は、誘われるままに小夜の部屋を訪れることになった……。
そして高田と小夜の出会いとほぼ同じころ、結婚して夫とふたり暮しの高田の娘・夏子(小石川祐子)と、結婚を控えている息子の崇(平井正吾)、それぞれのカップルにトラブルが持ちあがっていた。
高田の周囲で巻き起こる恋愛のあれこれ。迎えた誕生パーティーの日、いったいなにが起こる?
こっぴどい猫
監督:今泉力哉
出演:モト冬樹 小宮一葉 内村遥 ほか
2012年7月28日(土)より新宿K's cinemaにてレイトショー
2012年/カラー/HD/130分
バラエティ番組やドラマ・映画、そして音楽とマルチな分野で活躍するモト冬樹は2011年に60歳の誕生日を迎えた。『こっぴどい猫』は“モト冬樹生誕60周年記念作品”として製作された劇場用映画である。
『こっぴどい猫』でモト冬樹が演じるのは、本人と同世代である60歳を目前にした小説家・高田。妻を失くして数年経つ高田と、彼の前に現われた男運のない美女・小夜、そして高田を慕う若手作家の安藤、高田の娘・息子たちと、総勢15人の登場人物が繰り広げる恋愛模様がユーモラスなタッチで描かれていく。
脚本・監督は今泉力哉。ドキュメンタリー映画『たまの映画』がヒットを記録し、インディーズのフィールドでも精力的に作品を発表する日本映画界期待の新鋭監督だ。本作では俳優としても重要な役を演じ、作品を象徴するような不思議な存在感を見せている。
さらに、インディーズ映画祭“映画太郎”を主宰する平波亘が助監督をつとめるなど、インディーズ界の精鋭が参加。また、キャストも主演のモト冬樹以外はインディーズ映画や舞台で活躍する俳優陣らが起用されており、いわば「モト冬樹がインディーズ映画の世界に飛び込む」ようなスタイルで『こっぴどい猫』は作られたのだ。そして、インディーズの才能とお茶の間にも人気のスターは、まったく違和感を感じさせることなくとけあい、この作品でしか味わえない“おかしさ”を生み出している。
BGMもなく、登場人物の会話を中心に綴られていく『こっぴどい猫』は、淡々としているように見えて、しかし目の離せない魅力を130分にわたって放ち続ける。15人の男女の交錯する思いの行き先を、ぜひその目で確かめてほしい。
- モト冬樹
- 小宮一葉
- 内村遥
- 三浦英
- 小石川祐子
- 平井正吾
- 後藤ユウミ
- 高木珠里
- 結
- 工藤響
- 今泉力哉
- 木村知貴
- 前彩子
- 泉光典
- 青山花織
- 監督・脚本・編集:今泉力哉
- アソシエイト・プロデューサー;一ノ瀬優太朗
- エグゼクティブ・プロデューサー:小西亮一
- 撮影:岩永洋
- 照明:長田青海
- 録音:宋普瑞
- 助監督:平波亘
- 衣裳:山本屋歩
- ヘアメイク:寺沢ルミ
- 制作:手島昭一
- 企画・製作:DUDES/1gramix.
- 配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTION