東京郊外の町で暮らす園部佳子(朴ろ美)は、半年前に夫が突然蒸発し、いまだにそのショックから立ち直れずにいる。精神的に不安定なままの佳子を、小学生の息子・保(亜蓮)は見守り続ける。
ある日、保とともに外出していた佳子は、駅のホームで一組の家族から声をかけられる。それは“しるべの星”という宗教団体の勧誘だった。
“しるべの星”に入信し信者の集まりに参加するようになった佳子は、以前のような落ち着いた生活を取り戻しはじめる。そして入信してしばらく経ったころ、佳子は先輩信者から伝道を勧められる。地区内の家々を訪問して勧誘をおこなうのだ。保とふたり、親子でおこなう伝道は多くの信者を獲得する。佳子は地区内でトップの勧誘成績を記録し、やがて教団の取材を受けてパンフレットに掲載されるまでになる。佳子は、教団での活動に充実感を覚えていた。
一方、保は伝道のために同級生たちと遊ぶ時間もなくなり、クラスの輪から外れた存在になっていた。さらに、佳子とともにおこなっている伝道が同級生たちに知られ、保はイジメの標的になっていく。
そんな中、園部家にある報せが届く。その報せをきっかけに、宗教と出会うことで得られたかに思われた平穏な日々は再び大きく揺らぎ出していく。
周囲と摩擦を起こして次第に孤立していく佳子。教団で知り合った少女・カレン(Vlada)とある約束を交わす保。ふたりだけの親子がそれぞれに選択する道は――。
あかぼし
監督:吉野竜平
出演:朴ロ美 亜蓮 ほか
2013年8月3日(土)より新宿K's cinemaにてレイトショー
2013年/カラー/ビスタサイズ/ステレオ/135分
(※朴ロ美さんのロは王偏に路。表示上の制限から本ページでは「ロ美」と表記します)
夫が蒸発したショックから抜け出せない女性は、宗教と出会い心の安定を取り戻す。そして小学生の息子は、母親にずっと寄り添い続ける――。
2012年の東京国際映画祭・日本映画ある視点部門に出品され話題を集めた『あかぼし』が、待望の一般公開を迎える。
主人公の園部佳子を演じるのは、朴ロ美。少年から女性まで幅広い役をこなし「∀ガンダム」「鋼の錬金術師」「NANA」など数々のヒットアニメに出演するトップクラスの人気声優だ。舞台女優でもある彼女は『あかぼし』の脚本に惹かれて自主製作作品にもかかわらず出演し、初となる実写映画の主演をつとめて新たな朴ロ美の一面を見せている。
そして佳子の息子・保役には、蜷川幸雄演出の舞台や映画『管制塔』『エイトレンジャー』に出演する亜蓮(あれん)。撮影時にはまだ10歳から11歳という年齢を感じさせない、たしかな演技を見せている。
監督は1982年生まれの新鋭・吉野竜平。大学在学中から映画制作を開始し、これまでに監督したショートフィルムは国内外の映画祭で高い評価を受けている。初の長編作となる『あかぼし』では、東京郊外のベッドタウンを舞台に選び、現代の家族の姿を描き出してみせた。
『あかぼし』は、カルトのような極端なかたちではなくフラットな視点で宗教を描き、依存する心と寄り添う心を浮かびあがらせていく。現代に生きる大人たちはどう生き、それを見つめる子供はどう生きねばならないのか。作品を観終えたとき、観客の心に静かな波紋が広がっていくだろう。
- 園部佳子:朴ロ美
- 園部保:亜蓮
- カノン:Vlada
- 林貞一:鯨井和幸
- 林清美:藤井かほり
- 望月:大林佳奈子
- 望月の娘:吉川琴海
- 睦:四条久美子
- 三木:宮野薫
- 康太:小坂智也
- 真樹:千葉美紅
- 佳子の勤務先社員:吉見一豊
- 佳子の同僚:石塚理恵
- 佳子の同僚:中條サエ子
- 大倉:石田誠二
- 監督・脚本・編集・製作:吉野竜平
- 撮影監督:平井英二郎/井上塁
- 録音:藤原菜摘
- 美術:羽成聡美
- ヘアメイク:TamA
- 劇中アニメ:山崎賢
- 合成:神部達也
- 助監督:小島夏実/糸川潤/久保田辰也/藤井健
- 音楽:佐藤みえこ
- 配給:エネサイ