
レディースクリニックに勤務する美しき女医・岬奈緒子(壇蜜)、32歳。不妊治療を専門とする奈緒子は、たしかな技術と細やかな心づかいで多くの患者に頼りにされている。今日もクリニックには奈緒子の治療を受ける患者が詰めかけ、奈緒子はわずかな休憩時間以外はほとんど小さな診察室で過ごす多忙な日々を送っている。
そんな奈緒子を悩ますのは、母親からの電話だ。若くして末期ガンに冒されホスピスに入所している母親は、たびたび奈緒子に電話をかけてくる。母親は奈緒子を「奈緒子さん」とよそよそしく呼ぶ。15年前の夏から――。
15年前の夏休み、17歳の奈緒子(間宮夕貴)は、部活の練習のため、いつものように母親の加代子(中島ひろ子)に見送られて家を出た。だが夕方から激しい雨が降ったその日、奈緒子は家に戻ってはこなかった。すぐ裏の家に住む男・藤田(中野剛)に拉致された奈緒子は、地下室に監禁され陵辱の限りを尽くされる。血まみれで傷だらけ、手錠をされ裸体にバスローブを羽織っただけの姿の奈緒子が再び加代子の前に現われたのは、姿を消してから1ヶ月が過ぎた日だった。
あの悪夢のような体験から15年。医者となった奈緒子にはもうひとつの顔があった。ホスピスに母親を見舞った夜、奈緒子は母の部屋で服を着替えると、SMクラブのM嬢・セリカとして夜の街へと向かう――。
SMクラブを訪れる男たちの相手をするセリカ=奈緒子には、ずっと探しているものがあった。それは、かつてどこかで味わったことのある、奇妙な“甘い味”。ある日、SMクラブの客・醍醐(竹中直人)に命じられるままにプレイをおこなう奈緒子は、これまでと違った感覚を覚えていた。そして――。