
水族館で出会ったふたりの少女。同じ高校のクラスメイトだが対照的なふたりは、互いに惹かれあい、深い関係になっていく。ジェリーフィッシュ=クラゲのように、透明で危うい関係――。
現在、現役の大学生である雛倉さりえが16歳のときに執筆した短編を原作に、娯楽映画の名手・金子修介監督がメガホンをとって映画化した『ジェリー・フィッシュ』は、女子高生同士の恋愛の物語。新潮社主宰「女による女のためのR-18文学賞」から生まれた映画シリーズ「R-18文学賞」の第2弾となる作品だ。
主演には映画初主演となるふたりが起用された。周囲にとけこめない生徒・夕紀にはミスマガジン2008審査員特別賞受賞者で、舞台やドラマ・映画で活躍してきた大谷澪。クラスメイトたちの中心にいる叶子には、新体操全日本チャンピオンの経歴を持ち、本作が女優デビューの花井瑠美。今後の活躍が期待されるふたりがオールヌードも披露する文字通り体当たりの演技を見せている。また、物語が進むに連れて変化していく夕紀と叶子の関係性をふたりが巧みに表現しているのも注目だ。
共演には、映画出演が続く若手の川村亮介や、お笑いコンビ・ガレッジセールの川田広樹、意外な役で登場する奥菜恵、ベテランの秋本奈緒美、さらに「R-18文学賞」シリーズ第1弾『自縄自縛の私』を監督した竹中直人と、多彩なキャストが揃った。
映画化にあたり、劇中に同性愛への偏見を描いたウィリアム・ワイラー監督の名作『噂の二人』を引用。少女たちのある種のファンタジーであると同時に、社会へ対するメッセージが静かに、しかし力強く根底に流れる作品が誕生した。
透明に揺らぎながら痛みも秘めた少女たちの関係が、清らかで危うげな世界へとあなたを誘っていく。

高校生の宮下夕紀(大谷澪)は、訪れた水族館でクラゲ=ジェリーフィッシュの水槽の前にたたずんでいるとき、同じ制服を着た篠原叶子(花井瑠美)に声をかけられた。夕紀の隣に立って水槽を見つめる叶子は、話しかけながらそっと夕紀の手を握り、そして唇を重ねる。夕紀の名前を尋ねるより先に……。
高校では同じクラスの夕紀と叶子。水族館での一件のあと、叶子は学校でも夕紀に話しかけてきた。いつもクラスメイトたちに囲まれている叶子とは対照的に夕紀はいつもひとりぼっちで周りから浮いている存在だ。だが、叶子はそんな夕紀のことが好きだという。一緒に帰ることになったふたりは、下校のバスを待つ停留所で、また唇を重ねる。
次第に叶子に惹かれている自分に気づく夕紀は、かつて体を委ねたこともあるバイト先のレンタルビデオ店店長(川田広樹)に「レズビアンって、どんな感じなんですか?」と尋ねる。店長が夕紀に渡したのは、ウィリアム・ワイラー監督の映画『噂の二人』のDVD。同性愛への偏見を描いた作品だった。
夕紀と叶子の関係はさらに深くなっていく。クラスメイトたちには隠れて、校内でも互いの体に触れあうふたり。一方で叶子はクラスメイトの男子・平井(川村亮介)の告白を受け入れ、自分の部屋に平井を招いて体を許す。
すべてを受け入れてほしいと思う叶子は、平井と関係を持ったことを夕紀に明かすのだが、夕紀はその叶子の気持ちを受け止めることができない。さらに夕紀は、叶子が中学時代に妊娠と中絶を経験したという噂を耳にしてしまう……。
互いを想いながらもずれていく気持ち。夕紀と叶子の関係はどこへ向かうのか……。