
山陰にある小さな藩・因幡藩。剣術師範の原田大八郎(平岳大)の指導のもと寒稽古に励む若き藩士の中に、香川廣樹(脇崎智史)の姿があった。剣術の腕はたしかだが、勝つためならば手段を選ばないという廣樹の姿勢は、周囲との衝突を生むこともしばしばであった。そして廣樹は、いまから12年前に藩を守るため、ひとり罪を被って切腹した男の息子であった――。
そのころ、因幡藩の城代家老・荒木源義(若林豪)は、藩の中に不審な動きがあるとの報告を受けていた。幕府から遣わされた剣術指南役の松宮十三(目黒祐樹)が藩の内状を探っているというのだ。因幡藩が倹約に倹約を重ねて蓄えた余剰金の存在が幕府に知られれば、幕府のために差し出さねばならなくなる。荒木は、用人の舟瀬太悟(中原丈雄)に松宮の動きを監視するよう指示を出す。
一方、剣の道を極めようとする廣樹は他藩への剣術修行を願い出ていた。廣樹のひたむきな剣への想いを知る原田はその願いを叶えようとしていたが、廣樹の型破りな剣を嫌う松宮が首を縦に振らず、廣樹の願いは聞き届けられないままであった。廣樹の友人・木村との結婚を控える姉の由紀(さとう珠緒)は、そんな廣樹を案じつつ、やさしく見守るのであった。
松宮の動きを探る荒木は、事態がいよいよ切迫してきたことを知る。松宮はすでに藩の隠し田や隠し蔵について綿密な調べを進めていた。そして、幕府の使者・西崎隆峰(栗塚旭)が間もなく因幡藩を訪れることになっていた――。
藩の存亡に関わる事態の中、荒木はひとつの決断をくだす。廣樹や原田、由紀たちもまた、その決断の中に巻き込まれていくのだった。いま、雪の因幡藩で大きな動きが起ころうとしていた――。