くらげとあの娘
監督:宮田宗吉
出演:宮平安春 派谷恵美 杉山彦々 あがた森魚 山口美也子 ほか
2014年8月9日(土)より K's cinema ほか全国順次公開
2014年/カラー/ステレオ/HD/ビスタ/107分

水族館でクラゲの飼育を担当する青年。港で見かけた謎めいた女性と偶然に再会した彼は、次第に彼女との距離を縮めていくのだが……。
クラゲの展示種類数世界一を誇る山形県の鶴岡市立加茂水族館。大のクラゲ好きとして知られるミュージシャン・チチ松村。チチ松村がクラゲへの想いを綴った「私はクラゲになりたい」を原案に、加茂水族館を舞台にして描かれる映画が『くらげとあの娘』。「くらげになりたい」青年と、過去を背負った女性のちょっと風変わりなラブストーリーだ。
主人公の青年・浩平を演じるのは、映画『SP』やドラマ、舞台に出演し、本作が映画初主演となる宮平安春。浩平のどこか不器用な雰囲気を自然に好演してみせた。そして謎めいた女性・有希には2001年に『非・バランス』で主演デビューし高い評価を得た派谷恵美(はたちや・めぐみ)。久々となる映画のヒロインを落ち着いた雰囲気で演じている。さらに、実力派の山口美也子、個性派の杉山彦々、ミュージシャンであり映画監督の顔も持つあがた森魚が脇を固める。
原案のチチ松村がメンバーのアコースティックギターディオ・GONTITIが音楽を担当。『誰も知らない』『歩いても歩いても』など数々の映画の音楽を手がけてきたGONTITIのやさしいサウンドが作品を飾る。
監督・脚本は、冨樫森、風間志織などの助監督をつとめ『バカバカンス』で監督デビューした宮田宗吉。監督4作目となる本作では、舞台となる山形県加茂市のロケーションを活かし、人々のドラマをしっとりと描き出した。
クラゲのように漂う気持ちの行く先は……。『くらげとあの娘』が描く恋愛は、もどかしくて切なく、そしてあたたかい。

永倉浩平(宮平安春)は山形県の鶴岡市立加茂水族館でクラゲの飼育を担当する職員。町でお祭りがおこなわれる日に仕事で海を訪れた浩平は、ひとりの女性が海に花束を投げ入れ手を合わせるのを見かける。
浩平は水族館の面接で「くらげになりたい」と言ったのだが、先輩の職員・菅野(杉山彦々)や水族館館長の遠藤(あがた森魚)にその理由を尋ねられてもはっきりと答えはしない。どこか周囲の人々とも距離をおいたように毎日を過ごす浩平は、トイレのカレンダーに書かれた「無執故無失」という老子の言葉が妙に気になってしまう。その言葉の意味は「何も執着しなければ 何も失う事はない」。
ある日、大勢の入館者でにぎわう水族館に、小さな女の子を連れた女性がやって来た。写真撮影を頼まれた浩平は、その女性が、あのお祭りの日に海で見かけた女性であることに気づく。
さらに浩平は、偶然のきっかけからその女性・森下有希(派谷恵美)と再会を果たし、有希と顔見知りになった浩平は有希が働くベーカリーをちょくちょく訪れるようになる。やはり有希のベーカリーをよく訪れる水族館の売店の店員・大久保さん(山口美也子)は、そんな浩平に「好きな人には好きって伝えないとダメよ」と言うのだが……。
あちこちガタが来ている古い車を大切に乗っている有希。大久保さんを介して有希との距離を縮めていく浩平は、やがて有希の過去に触れることになっていく。
互いの中に浮かんでいくほのかな想い。浩平と有希の関係はどうなっていくのか……。