
夏休みを前にした女子校、放課後の美術室。絵を描くのが大好きな中学3年生の蓮見鷹音(未来穂香)は、毎日のようにこの美術室でキャンバスに向かう。鷹音のモデルになっているのは、同じクラスで仲良しの辻沢三佳(青山美郷)。
クラスメイトのひとりが付きあっている男の子とキスをしたらしい――そんな噂話に笑いあいながら、鷹音と三佳は美術室での時間を過ごしていく。本の好きな三佳は、鷹音の絵のモデルをしているときもずっと本を読んでいる。いま三佳が読んでいる本の題名は「思春期ごっこ」。かつてこの中学校に通っていた生徒・花岡奈美江が在学中に書いた小説だ。
三佳は、小説の内容だけでなく、14歳で小説を出版した奈美江自身にも憧れを抱いていた。そんな三佳を思わぬ出会いが待っていた。いつも通っている図書館の女性司書が、ほかならぬ花岡奈美江(川村ゆきえ)その人だったのだ。
憧れの人に出会えた三佳は頻繁に奈美江と会うようになっていく。奈美江お勧めの小説や映画を教えてもらったり、三佳が自分で書いた小説を奈美江に読んでもらったり。楽しげに奈美江のことを話す三佳に複雑な感情を抱いていく鷹音。いつの間にか、ふたりが美術室で過ごす時間も少なくなっていた――。
進路をまだ決めかねていた鷹音は、美術高校に進学するため予備校に通うことを考えはじめていた。もうすぐ予備校の学校見学会が開催される。鷹音を応援する三佳は、一緒に見学会に行くことを鷹音に約束する。
一方、奈美江が元・作家であるという評判は図書館でも広まりだし、周囲の奈美江を見る目は変わりつつあった。
憧れ、友情、そして――。夏のある日、大切ななにかが変わろうとしていた――。