
なかなか論文が書けずに悩んでいる若き哲学研究者は、気晴らしにと出かけた近所の森で若い女性と出会う。「いらっしゃいませ、森のカフェにようこそ!」の言葉と勧められるコーヒー。これは森の妖精のいたずらなのか、それとも……。
森の中での男女の奇妙な出会いで幕を開ける『森のカフェ』は、劇場支配人、プロデューサー、脚本家などとして長く映画界に携わり2011年に『見えないほどの遠くの空を』で監督デビューした榎本憲男監督の長編第2作。ロマンティック・コメディのように展開する物語には主人公の専門分野である哲学の知識も盛り込まれ、観客の知的好奇心を刺激する不思議な味わいの作品となっている。
映画やドラマで活躍する管勇毅(かん・ゆうき)が、主人公・松岡啓司の「悩める哲学研究者」という役柄を自然に、そして実感たっぷりに具現化してみせた。また、松岡が森で出会う不思議な女性・森野洋子は、音楽大学で学び「レ・ミゼラブル」などに出演するミュージカル女優の若井久美子が演じ、キュートな魅力を見せるとともに歌声も聴かせてくれる。
そのほか『見えないほどの遠くの空を』に続いての榎本監督作品出演となる橋本一郎や、映画初出演の伊波麻央、数多くの作品に出演する東亜優、劇団・青年団の志賀廣太郎と永井秀樹らが出演。さらに、世界的に著名な映像作家であり早稲田大学名誉教授の安藤紘平が大学教授役で出演している。
この映画のもうひとつの主役とも言える美しい森の風景と、映像の魅力をより際立たせる音楽の調べ。心地よさに身を委ねながらもいつしか未知の領域へと誘われていく、これまでにない感覚を体験させてくれる作品だ。

最近、近所が騒がしくなったため郊外へと引っ越してきた松岡(管勇毅)は、若手の哲学研究者。
なかなか論文が書けない松岡は、気分転換に近所にある森へと出かける。
森の中のテーブルでノートを広げた松岡は、いつの間にかついうとうと。
松岡が目を覚ますと、そこにはひとりの若い女性(若井久美子)の姿が。
「いらっしゃいませ、森のカフェにようこそ!」。
彼女にすすめられるまま、コーヒーを飲む松岡。
やがてまた眠ってしまった松岡が気がつくと、女性もコーヒーも消えていた……。
一体あの女性は? 森の妖精にからかわれてしまったのか?
翌日、再び森を訪れた松岡は、あの女性と再会する。
今日もまた、彼女がすすめるコーヒー。
そして彼女は、ギターを爪弾きながら歌を聞かせる。
その歌声に誘われように、松岡もギターを手にする……。
森と、コーヒーと、ギターと、歌と。
若き哲学研究者が見つけるものは……。