大地を受け継ぐ
監督:井上淳一
2016年2月20日(土)より ポレポレ東中野ほかにてロードショー
2015年/カラー/HD/86分
福島県須賀川市。樽川和也さんは、この地で代々農業を営んでいる農家である。2015年の春、16歳から23歳までの若者たち11人が樽川さんを訪ねて東京からやってきた。自宅の居間に集まった11人を前に、樽川さんと、母・美津代さんは語り出す。2011年3月11日の震災で引き起こされた原発事故が、福島第一原発から65kmのこの地になにをもたらしたか……。
3.11以降、ドキュメンタリー、フィクションを問わず、震災以降の福島を伝える映画が多数作られてきた。ドキュメンタリー映画『大地を受け継ぐ』は、その中でも異色の存在感を放つ作品だ。
監督は『アジアの純真』『あいときぼうのまち』(脚本)や『戦争と一人の女』(監督)と強い主張を持った作品を手がけてきた井上淳一。『あいときぼうのまち』で原発事故を題材とした井上は「一度福島と関わった以上、関わり続けていかなくてはいけないのではないか」という想いから自身初のドキュメンタリーに挑んだ。撮影は、廣木隆一や瀬々敬久などの作品に参加する気鋭のカメラマンで、須賀川市に隣接する郡山市出身である鍋島淳裕が担当している。
樽川さんの父親は、原発事故後、農作物出荷停止が決まった翌朝の3月24日に自ら命を断った。樽川さんは、父親への想いや、いまも受け継いだ土地で農業を続ける意味、放射性物質の降った地から農作物を出荷することへの葛藤などを淡々と語る。樽川さんや母親が話す相手は、カメラのこちら側にいる観客や取材スタッフではなく、樽川さんの前にいる11人の若者だ。この作品において観客は傍観者でしかない。だが、傍観者だからこそ、観客は自らが「どこに立つのか」を考えさせられる。
この映画で語られる言葉は重い。しかし、その重さを越え、その先を見つめる希望が、この作品には確実にある。
- 樽川和也
- 樽川美津代
- 井樫彩
- 井澤美采
- 石田佳那
- 一万田若葉
- 内田夏奈子
- 金子鈴幸
- 樽見隼人
- 千葉航平
- 野月啓佑
- 宮田俊輝
- 矢部涼介
- 白井聡
- 馬奈木厳太郎
- 監督:井上淳一
- 企画:馬奈木厳太郎
- プロデューサー:小林三四郎
- 撮影:鍋島淳裕/桑原正祀/堀部道将/西佐織
- 照明:堀口健
- 録音:光地拓郎
- 整音:臼井勝
- 編集:蛭田智子
- 助監督:植田浩行
- 製作進行:長谷川和彦
- 宣伝プロデューサー:矢澤一範
- 海外窓口:中西佳代子
- エンディング曲:フラワーカンパニーズ「日々のあぶく」(Sony Music Associated Records)
- 協力:東放学園映画専門学校/河合塾COSMO/明治大学駿台映画製作研究部
- 「大地を受け継ぐ」製作運動体:馬奈木厳太郎/井上淳一/太秦株式会社
- 配給:太秦