東京から荒川をへだてた埼玉県の川口。かつて「鋳物の街」として知られたこの街では、いまも少ないながらも鋳物工場が稼働を続ける。この街に住む小学生の陸太郎(佐藤大志)は、工場の真っ赤に溶けた鉄を見つめていた――。
陸太郎が母親のやよい(田畑智子)とふたりで暮らす家に1台の軽トラックが到着した。運転席にはヒゲを生やした男・紺(裵ジョンミョン)、助手席には陸太郎と同い年の女の子・真理子(舞優)。やよいと紺は再婚し、今日から4人はこの家で「家族」として生活を始めるのだ。
真理子は陸太郎と同じクラスに転入してきて、陸太郎の名字は真理子と同じ「西野」になった。同じ名字の陸太郎と真理子を、クラスメイトたちは「夫婦」とはやし立ててからかう。
「きょうだい」になった真理子と陸太郎だが、ふたりとも新しい生活に馴染んだわけではなかった。そして真理子は、陸太郎に「ドウメイを組まない?」と持ちかける。やよいと紺を離婚させて以前の生活に戻るための「リコンドウメイ」だ。ふたりはやよいと紺の仲を悪くさせるためのさまざまな計画を実行するが、どれもうまくいかず逆にふたりの仲はよくなるばかり。
だが、再婚を機に仕事を辞めていた紺が新たな仕事に就いたころから、家の中の空気が変わりだす。紺の帰りは毎日に遅くなり、紺とやよいの言い争いも増えていく。
陸太郎の亡き父の同僚だった鋳物工の飯塚さん(スギちゃん)は、そんなときこそ笑わなくてはと陸太郎に告げる。
そしてある日、真理子は置き手紙を置いて「家族」が暮らす家を出ようとする――。
鉄の子
監督:福山功起
出演:田畑智子 佐藤大志 舞優 裵ジョンミョン スギちゃん ほか
2016年2月13日(土)より角川シネマ新宿、MOVIX川口 ほか全国順次公開
2015年/カラー/ビスタサイズ/74分
親同士が再婚し、小学校で同じクラスに通うふたりは「姉」と「弟」になった。しかし、新しい「家族」での生活に納得できていないふたりは、両親を離婚させるための「リコンドウメイ」を結成する――。
数多くの鋳物工場が集まり、かつて名作『キューポラのある街』の舞台ともなった「鋳物の街」埼玉県川口市。いまも鋳物産業が連綿と続くとともに、映像産業の発信地としての顔も持つこの街から送り出させる映画が『鉄の子』だ。
監督は、埼玉を舞台にしたオムニバス映画『埼玉家族』の一編「ハカバノート」を監督した福山功起。自らの経験をもとに脚本も手がけ(守山カオリと共同)、「家族」になった子どもと大人たちが少しずつ一歩を進めていく姿を描き出した。
子役時代から活躍し幅広い役を演じる田畑智子が母親のさおりを演じ、家族を支えつつも迷い悩む母親を好演している。朗らかな一方で自堕落な面もある父親の紺を自然に演じたのは、気鋭の監督陣との仕事も多い実力派・裵(ペ)ジョンミョン。
そして、さおりの息子・陸太郎役には2006年生まれの佐藤大志(さとう・たいし)。紺の娘・真理子役には2005年の舞優(まう)。しっかりとした演技を見せるふたりの子役の存在は、この映画の核となっている。
また、陸太郎の亡父の友人であり、陸太郎と真理子に影響を与える人物でもある鋳物工の飯塚さん役にはお笑いタレントのスギちゃんが起用され、印象深い演技を見せている。
熱く溶けた鉄鋼は、鍛えられ、強固な鉄となる。その鉄の姿と重ね合わせるように、子どもたちの、そして大人たちが強くなるための道程を描いた『鉄の子』は、まさに新たな「鋳物の街」の映画だ。
- 田畑智子
- 佐藤大志
- 舞優
- 裵ジョンミョン
- スギちゃん
- 藤本静
- 土居志央梨
- 神戸浩
- 大谷亮介
- 監督:福山功起
- 脚本:守山カオリ/福山功起
- エグゼクティブプロディーサー:瀧沢裕二
- プロデューサー:桝井省志/土本貴生/山川雅彦
- 撮影:谷口和寛
- 照明:森紀博
- 美術:塚本周作
- 録音:米山靖
- 音響効果:齋藤昌利
- 編集:鈴木理
- タイトルデザイン:赤松陽構造
- 助監督:山口晃二
- 製作担当:島根淳
- 音楽:三宅彰
- エンディング曲:GRIM SPANKY「大人になったら」(ユニバーサルミュージック/アムニス)
- 製作プロダクション:アルタミラピクチャーズ
- 製作協力:デジタルSKIPステーション/SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015
- 製作:埼玉県/SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ
- 配給:KADOKAWA