深夜、人気のない研究所の一室。研究員の長谷川高志(万田祐介)は、自分の頭に眼帯のような装置を取り付けパソコンに向かっていた。机の上には頭に装置を取り付けられたネズミ。パソコンの画面にはふたつの波形が映しだされ、その波形は次第に同期して重なり合っていく。そして、ネズミは高志の指に操られるかのように動きはじめる……。
高志は、研究所のチームの一員として脳波で機械の動きを制御する研究に取り組んでいるが、同じ研究チームの女性研究員・木下萌(宮本なつ)は、高志が深夜に独自の実験をおこなっていることに気づいていた。高志のその実験は、ヒトと動物の脳波を同期させるという無認可の研究で、高志から研究内容を聞き出した萌は、高志の実験への協力を申し出る。高志と萌は深夜の研究所でひそかに実験を重ね、やがてふたりは男女の関係となっていく。
実験に使ったネズミを調べていた高志と萌は、実験によりネズミの脳が通常より発達していることに気づく。萌は実験が脳機能障害を改善させる可能性に期待を膨らませ、高志はさらに別の期待を抱いていた。高志の母親・春子(美谷和枝)は重い認知症となり、もう息子の高志の記憶すら失っている。この実験は、春子の認知症を治せるのではないか?
高志は、介護施設でトラブルを起こした母親を施設から連れ帰り、自分と母親の脳波を同期させる実験に取り組みはじめる。ヒトとヒトの脳波を同期させるのが倫理に反する実験であると知りながら実験に没頭していく高志と、高志への想いゆえに彼に協力していく萌。だが萌はその危険な実験がもたらす結果に気づき、実験をやめさせようとする……。
男女の愛、親子の愛、狂気の実験。高志たち3人は、どこに導かれていくのだろうか?
シンクロナイザー
監督:万田邦敏
出演:万田祐介 宮本なつ 古川博巳 中原翔子 大塚怜央奈 美谷和枝 ほか
2017年2月11日(土)より ユーロスペースにて公開
2015年/カラー/アメリカン・ビスタ/83分
シンクロナイザー=同期させるもの。もし、ヒトとヒトの脳波が同期されたとしたら、なにが起こるのだろうか?
『接吻』『UNloved』、近作『イヌミチ』など、さまざまなかたちで男女の愛を描いてきた監督・万田邦敏が「脳波の同期」というSF的な設定を取り入れて描く最新作、それが『シンクロナイザー』だ。
物語の主人公は、独自の実験に没頭する研究者の青年。彼と、彼に協力する女性研究者、そして青年の母親の3人は、青年が母親の認知症を無認可の実験で治療しようと試みたときから、禁断の領域へといざなわれていく……。
主人公を演じるのは、舞台を中心に活動しこれが映画初主演となる万田祐介。主人公に想いを寄せ協力する女性研究者に、各地の映画祭で高評価を得た『ひとまずすすめ』主演の宮本なつ(旧芸名・斉藤夏海)。さらに、映画美学校アクターズ・コース出身の古川博巳や、多くの監督の作品で個性を発揮する女優・中原翔子らが共演している。
『こんなに暗い夜』監督の小出豊と、立教大学教授でもある万田邦敏の教え子で大学在学中に『みちていく』を監督した竹内里紗が、万田邦敏と共同で脚本を執筆。万田邦敏の前作『イヌミチ』に続いて山田達也が撮影を担当し、長嶌寛幸の音楽がこの作品が持つ独特の空気を一層際立たせていく。
『シンクロナイザー』は立教大学現代心理学部映像身体学科の研究プロジェクトの一環として制作された作品であるが、研究プロジェクトというイメージからは意外なほどのエンターテイメント性を持っている。そしてこの作品は、往年のSFやスリラーを髣髴とさせながら、狂おしい愛を描く。ジャンル映画的な手法が浮かび上がらせる“愛の形”を目撃せよ。
- 万田祐介
- 宮本なつ
- 松本洋幸
- かわはらゆな
- 赤神英之
- 沼田梓
- 長坂弘介
- 高橋理美
- しらみず圭
- 菊地敦子
- 小田原直也
- 林和秀
- 大城亜寿馬
- 古川博巳
- 中原翔子
- 大塚怜央奈
- 美谷和枝
- 監督:万田邦敏
- 脚本:小出豊/竹内里紗/万田邦敏
- プロデューサー:桝井省志/山川雅彦
- 撮影:山田達也
- 照明:玉川直人
- 美術:栗田志穂
- 録音:河南逵
- 整音:光地拓郎
- 音響効果:齋藤昌利
- 編集:万田邦敏/小出豊
- 助監督:石井晋一
- 製作担当:吉野圭一
- 造形:瀬島真由
- ヘアメイク:有路涼子
- VFX・タイトルデザイン:堀田弘明
- 音楽:長嶌寛幸
- 宣伝デザイン:寺澤圭太郎
- 配給・宣伝協力:髭野純
- 製作プロダクション:アルタミラピクチャーズ