目標を見失いかけたミュージシャンの青年・一輝。彼の前に現れた幽霊の少女・パセリ。映画『パセリ』は、そんなふたりの出会いを描いたちょっと不思議な物語です。
主人公の一輝を演じたのは、現在放送中のテレビドラマ『危険な関係』(CX系13:30〜)で若い弁護士・和也役でレギュラー出演中の友井雄亮さん。映画『パセリ』について、そして一輝という役について友井さんにお話をうかがいました。
「毎日がすごく面白かった」
―― 『パセリ』のお話はいつごろあったんでしょうか?
友井:1年前の4月ですね。その段階では脚本はまだできていなくて、まずあらすじをいただいて、それからしばらくして脚本ができたって感じですね。
―― 最初に映画の内容を聞いたときはどんな印象でしたか?
友井:正直、はじめはとっつきにくかったですね。ここまで説明しちゃっていいのと思う点もいくつかありましたし、主人公の前に幽霊が現れるんですけど、自分は幽霊という存在はリアルには見たことも感じたこともないので(笑)、疑問点はあったんです。でも、撮影は6月だったんで、インする前に監督とかプロデューサーの方々と話し合う時間があったんです。やっぱり、初めて主演をさせていただくということで自分も力が入っていたところもありましたし、監督に方向性を聞いたときに、自分でも絵が浮かんで見えたかなっていうのはありましたね。
―― 映画は一輝とパセリのふたりのシーンが多いですが、パセリ役の派谷恵美さんはどんな印象でした?
友井:不思議ちゃん(笑)。4月にお話をいただいたときに初めてお会いしたんですけど、自分から物事を発言する子じゃないから、俺が話を振らないと喋らないし。だけど愛想が悪いとかじゃないんですよね。それこそ考え方も不思議ちゃんだったし「この子は読めない!」っていうのが最初の印象ですね(笑)。でも、撮影の日数を重ねていくうちに、派谷さんという女の子を徐々にわかってきて、コミュニケーションはすごく取れたかなっていうのはありましたね。
―― 逆に派谷さんから友井さんはどう見えていたと思いますか?
友井:撮影中は「弟に似ている」って良く言われて(笑)。年齢は全然俺の方が上なんですよ。だから、俺は派谷さんが妹みたいに見えたんですよ。実際は自分に妹とか弟はいないんですけど、タイプ的に妹っぽいなって。なんか、お互い逆に思っていたみたいですね(笑)。
―― 派谷さんとふたりのシーンで印象に残っていることはありますか?
友井:パセリと一輝が初めて出会うところは面白かったですね。パセリが人魂を(手でお手玉のように)こうやっているんですけど、それはあとでCGで合成しているので、撮影のときはどこに人魂があるかわからないし、俺もどこを見たらいいのかわからないし。それをお互いに話し合ってやったら、結構面白くなりましたね。
―― 恋人の恵役の勝村美香さん、藤崎役のヨモギダさんはどんな方たちでした?
友井:美香ちゃんに関しては、仕事は初めてだったんですけど、同じ特撮出身(友井さんは2001年放送の『仮面ライダーアギト』、勝村さんは2000年放送の『未来戦隊タイムレンジャー』に出演)ということもあってお互いに知っていたんです。撮影をしていて、恵という役は美香ちゃんに近いんじゃないかと思いましたね。パワフルで活発なところであったりとか、男っぽい性格は美香ちゃんそのものかなと思いました。
ヨモギダくんは、テレビのバラエティ番組のイメージがものすごく強かったんで、自分の中でも「ヨモギダだ!」っていう目線も確かにあったし、第三者として見ている自分もいましたね。どういう芝居をしてくるかも読めなかったんですけど、ヨモギダくんとは同い年ということもあって違和感なく溶け込めたかな。ヨモギダくんは誰にでも優しくて気を遣うし、特に飾ってたりもないし、オープンなんですね。
―― なにか面白いエピソードはありましたか?
友井:美香ちゃんと一緒のシーンで俺がドアに頭突きするところがあるんですけど、それはとっさに出た行動だったんです。そのあと頭が痛くて、そこは面白かったのかなあ(笑)。あとは、特に面白かったってことはないですね。毎日がすごく面白かったんで。すごくいい雰囲気でできていましたね。
「一輝に頑張って欲しいなって思いながら演じていた」
―― 一輝という役が今まで友井さんが演じてきた役と共通するところ、違うところってありますか?
友井:共通している部分は「熱い」っていうところかな。中身が真っ直ぐで、真っ直ぐすぎるから傷ついちゃうし、騙されちゃう。そこは今までの役と近いかなって思いますね。違いは…あんまりないかなあ。違うとしたら、熱さ、頑張り度の温度なのかもしれないです。
―― 一輝はちょっと情けない部分がありますよね。
友井:情けないですよ。今までの役は情けない部分があっても出さなかったりしているんで、そこは違いますね。女の人、しかも元の彼女に金を借りに行くのって、男として情けないじゃないですか。それが一輝はできちゃう。それをパセリとか、恵や藤崎が気付かせてくれるんだけど、そこに気が付くまでの一輝は情けない男だなっていうのは確かにありますね。
―― 情けない部分を演じる上で戸惑いとかはありませんでしたか。
友井:特にないですね。情けない部分はカッコ悪いと思うけど、そのカッコ悪さを一輝は気付いてないんですよ。だからその点は飲み込んで、率直に真っ直ぐ芝居するしかないかなと思いましたし、人間は誰しもそういう部分を持っていると思うんです。それを出すか出さないかだと思うんで、プランとしては何も引っかからずに、すんなりと入れました。
―― 友井さん自身が一輝と似ているところはありますか。
友井:似ているところは、頑張っているところじゃないですか。自分は上京してきてこういう仕事をやっているし、一輝は上京してきて音楽をやっているし。夢を持っているってところは共通している部分がありますね。
―― 一輝はパセリからあるメッセージをもらって、それがひとつのきっかけになりますけど、友井さんはそういう経験をしたことは?
友井:ありましたね。『仮面ライダーアギト』をやっていたときに、自分がやった葦原涼という役は、孤独で頼るものが何ひとつないけどひとりで闘って生きていくっていう役だったんですけど「ぼくもすごく悩んでいて、仕事にも行きたくない、友達にも会いたくなくて、すごく落ち込んでいた時期があったんです」という手紙をいただいたんです。『仮面ライダーアギト』を観ているうちに、自分と重ねあわせていたみたいで「葦原涼はもっと大きなことで悩んで闘っているのに、自分はこんなにちっぽけなことで諦めていちゃいけない。ものすごく助けられました」というようなお手紙をいただいたことがありましたね。
―― 演じたことが観ている方に影響を与えるというのは、この映画と重なるところがありますね。
友井:あります。それはたぶん今回だけじゃなく、常にそういうのってあるんじゃないかなって思うんですよね。やっぱり、一表現者として、そう言っていただけるのは一番嬉しいっていうのが本音です。
だから、映画の一輝は、一表現者としての気持ちっていうのが薄かったんじゃないかな。自分が頑張ったっていう結果を残していないのが一輝のダメなところだったりするし、音楽から逃げているっていえば逃げているし。でも、パセリという女の子がそれに気付かせてくれたっていうのがこの映画のポイントだと思うんで、一輝に頑張って欲しいなって思いながら演じていたのは事実ですよね。
―― 映画の中で歌とギターを披露されていますね。
友井:ギターは難しいっすよ(笑)。コードを弾いたりっていうのは何回かあったんですけど、曲としてやったのは今回が初めてで、もう慣れないし、ぎこちないし。撮影前に練習を何回かして、現場でも空いている時間はギターを握ったり触ったりしていたし、ヨモギダくんがバンドでギターを弾いているので、ヨモギダくんに教えてもらったりもありましたね。
―― 撮影が終わってからはギターを弾くことはありますか?
友井:やっていますよ。時間が多少あるときはギターを触って、まだスムーズにはいかないんですけど簡単な曲をやっていますね。
―― そのうち、一輝としてではなくて、友井さん自身の歌を歌うこともあるのでは?
友井:ギターで?(笑)。いやあ、ヤバいっしょ。もうちょっと勉強しないと(笑)。
―― 最後に、ご覧になる方へのメッセージをお願いします。
友井:夢を持って欲しいというのが一番ですね。最近、高校生の子と喋る機会があったんですけど「何がしたいの」って聞いても「別にこの先、何も考えていない」みたいな、夢を持っていない若い子が多いんですよ。この映画を観て、ひとつの目的を目指して頑張っていくということが伝われば嬉しいかなと思いますね。答えって特にないんですけど、どんな仕事に対しても、諦めちゃえばそこで終わっちゃうっていうのが事実ですから。
誰しもが「俺はもうちょっと頑張らなくちゃいけないんじゃないか」とか悩んでいる点はあると思うんです。そういう点をこの映画がきっかけで気付いてくれたり、頑張ろうとしてくれたらありがたいなと思います。
(2005年5月17日収録)
『パセリ』は5月28日より渋谷UPLINK Xにて上映されます。友井さんはじめ、スタッフ、出演者のみなさんが映画に込めた想いを、スクリーンで感じていただければと思います。
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