『天然コケッコー』、『うた魂♪』(2008年春公開)など主演作が相次ぐ若手女優・夏帆さんが「時間を越えた恋愛」をする主人公を演じた『東京少女』(2008年2月23日公開)の完成披露会見が11月7日、日比谷の松本楼でおこなわれ、夏帆さん、共演の佐野和真さん、小中和哉監督、丹羽多聞アンドリウプロデューサーが出席しました。
『東京少女』は、『女王陛下の0093』(公開中)、『東京少年』(2008年2月2日公開)に続く、映画レーベル“CINEMA Drive”の第3弾となる作品で、女子高生・未歩が落とした携帯電話が100年前の明治時代へとタイムスリップしてしまい、携帯を拾った作家志望の青年・時次郎と携帯を通じて会話を重ねるうちに、ふたりの間に恋が芽生えるという恋愛ファンタジー。
時次郎役の佐野さんは劇中の書生風の衣裳で会見に登場。映画では現代の少女・未歩役の夏帆さんも、明治時代をイメージした華やかな着物姿で登場しました。
『東京少女』完成披露会見
左より、丹羽多聞アンドリウプロデューサー、夏帆さん、佐野和真さん、小中和哉監督
藤咲未歩役:夏帆さん
今回は、携帯を通してのラブストーリーということで、相手が見えないのでいろいろ苦労したんですが、とても素敵な作品になっていると思います。初めて台本を読んだときも、撮り終わった今も、すごく切ないお話だなあという印象がすごく強くて、でも、相手と携帯でしか話せないというのが、最初は演じる上ですごく不安でした。撮影では、実際に佐野さんに携帯で相手をしていただきながらやっていたので、すごくやりやすかったです。
ひとりのシーンがほとんどだったので、すごく寂しかったんですけど(笑)、変わった感じというか、すごく新鮮で面白かったです。できあがった作品を観て、電話で会話をしているシーンがすごく恥ずかしかったです。でも素敵なシーンだと思うので、ぜひ観てほしい見どころです。
宮田時次郎役:佐野和真さん
今回は明治時代の男というのが課題だったんですけど、明治時代の人がどんな人だったかというのがわからなくて、監督といろいろな話をしながら、動きひとつにしても、セリフのひとつひとつにしても、すごく細かくやりました。
最初に台本をいただいたときは、なんて面白い作品なんだろうと思って、ぜひ自分でやりたいと思いました。携帯電話が明治時代に飛んで、それが恋愛になってという、普段にあり得ないことを自分ができるので、なんて光栄なことなんだろうって思いました。
撮影のときは、ぼくは夏帆ちゃんのシーンの声のお手伝いをさせていただいて、夏帆ちゃんの次のセリフが出るまでの間に自分のセリフを全部言わなくちゃならなくて、そういう計算が大変だったんですけど、できあがった作品を観たら、お互いがすごくきれいに演技をしていて、電話なのにお互いが繋がっている感じがするってすごいなと思いました。ふたりが最初ギスギスして悪い感じだったのがだんだん打ち解けて恋愛に発展していく表情だったりとか、ぼくも恥ずかしかったんですけど、ぜひ注目してほしいですね。
丹羽多聞アンドリウプロデューサー
“CINEMA Drive”というのは、企画性の高い、志の高い映画を作っていこうという企画で、これが第3弾となります。今回のテーマは「決して逢えないふたり」です。それをテーマにする中で、時代を枷としたらどうだろうと思いました。100年の時代は飛び越せないわけですから、絶対にふたりは逢えなくて、その恋愛は悲恋となってしまうというのが今回のテーマであります。それから、私は携帯電話を恋愛ものの中できれいに撮れる作品を作りたいと、いろいろなシリーズをやってきましたが、この作品は、特に携帯電話が恋愛のアイテムとして効果を出している作品になったのではないかと思います。そしてもうひとつ、一番やりたかったのが、夏帆という女優に難しい難題を与えることで、また違った面を見たいということです。そんな気持ちがあって「相手役のいない恋愛もの」を夏帆ちゃんにやってもらいました。そして佐野くんは、この映画に入る1年くらい前に初めて会ったんですけど、それからメキメキと頭角を現わしてきて、割と古風な感じがあるところで、今回お願いしました。
小中和哉監督
最近はウルトラシリーズなど特撮ものの映画が続いていましたが、もともとデビュー作は『星空のむこうの国』(1986年)というSFファンタジー映画だったんです。久々にそういうジャンルに戻ってこられて、夏帆ちゃん、佐野和真くんというフレッシュな人たちと一緒にラブストーリーが作れたということが、今回嬉しく思っています。
この映画は、ふたりが一緒にいる場面がないんです。でも携帯電話というツールで心は繋がっているというのを画面でどう表現していくかという映画だったので、いろいろな技法を使いつつ「携帯で話し合うだけでラブストーリーが成立していくのか?」という実験映画のつもりで撮りました。後半では、ふたりが時間を隔てて同じ場所でデートするんですけど、携帯で会話をしていくだけの中で情感を出していく前半部分と、後半の100年を隔てて同じ場所の空気を共有していくという「時間の落差」みたいなものを映像で表現していくというのが、やりがいのあった部分でした。
ぼくは『星空のむこうの国』で有森也実さん、『四月怪談』(1988年)で中島朋子ちゃんと、当時高校生だった女優さんとお仕事をして、その後の成長を見ることができたんですけど、今回も夏帆ちゃんという、子供でもない、もちろん大人でもない微妙な時期の女優さんと仕事ができて、今後どうなっていくのかなと楽しみにしています。彼女はすごく現場での集中力が素晴しかったです。携帯だけでラブストーリーが成立するのかというのは、映像的な工夫よりも、むしろ会話をしているふたりがどれだけいい表情をしてくれるか、どれだけいい芝居をしてくれるか、それだけで映画って持つのか? 持たないのか? というチャレンジだったんですけど、そのチャレンジをきちんと受け止めて演じてくれたのが、夏帆ちゃんであり、佐野和真くんだったと思っています。その成果を、ぜひ映画を観て確認していただければと思います。
鮮やかな赤の着物姿を披露した夏帆さん
実は小中監督と丹羽プロデューサーは、同時期に手塚眞監督や利重剛監督も在籍していた成蹊高校映画研究部の先輩後輩で、お互いの自主映画を手伝いあったり、家にも遊びにいっていたという間柄。丹羽プロデューサーは小中監督のデビュー作『星空のむこうの国』にもスタッフとして参加しており、小中監督は「『星空のむこうの国』は『ある日どこかで』(※)という映画をベースとして、それを自分なりにSFファンタジーとして昇華したいという想いで作った映画。“携帯を通して明治時代と繋がる”というアイディアも、ぼくの中では『ある日どこかで』と共通するところがあって、『東京少女』も『ある日どこかで』へのオマージュ映画という側面もあるので、それを『星空のむこうの国』でも一緒に仕事をした仲間である多聞プロデューサーによって作れるっていうのは、奇妙な縁だと思っております」と、旧知の間柄の丹羽プロデューサーと作品を作った感想を語りました。
また、夏帆さんと佐野さんには「映画の登場人物と同じように、携帯電話がタイムスリップしたら恋愛には発展すると思いますか?」という質問が寄せられ、佐野さんは「ぼくが明治時代の人だったら怖くて拾わないと思います」と、夏帆さんは「難しい」と悩んだ末に「充電が切れたら終わってしまうじゃないですか。だから途中で止めてしまうと思います」と回答。その可愛い答えに取材陣からも笑いがこぼれました。
愛知県の明治村や、この日の会見場ともなった100年の歴史を持つ老舗“松本楼”などでロケがおこなわれ「100年を隔てた恋愛」をスクリーンへと映し出した『東京少女』。2008年2月23日(土)より、新宿トーアほかにて全国順次公開されます。
※『ある日どこかで』:1980年アメリカ映画。ヤノット・シュワルツ監督、クリストファー・リーブ主演。愛した女性と出会うため過去へと旅する男を主人公にしたラブストーリー