多くの映画人を輩出する映画美学校の脚本コースから誕生した初の作品『ただいま、ジャクリーン』が3月9日にオーディトリウム渋谷で初日を迎え、ヒロインを演じた趣里(しゅり)さんら出演者と脚本を執筆した村越繁さん、大九明子監督が舞台あいさつをおこないました。
事故で家族を失った少年と腹話術人形の“ジャクリーン”の不思議な絆を描いた『ただいま、ジャクリーン』は、2011年に新設された映画美学校・脚本コースのカリキュラムの中で村越さんが書いた脚本を映像化したもの。
村越さんは「脚本というのは書いただけではなかなか陽の目を見ることはなくて、みなさん映像化されることを目指してがんばっています。今回、このように映像化していただいて、みなさんに観ていただける機会を作っていただきまして、ほんとに感謝しています」とあいさつ。
メガホンをとった大九監督も映画美学校・フィクションコースの出身で「私はだいぶ前の第1期フィクションコースの卒業生なんですけど、(『ただいま、ジャクリーン』の)シナリオを読んで、よくシナリオコンペで選ばれるような作品とはだいぶ違う風味の、私の好きな世界観のシナリオだったので“美学校はこういうのに挑戦するような学校になったのか!”と思って、なんかすごく嬉しかったです」とシナリオを読んだ際の感想を述べ、ヒロイン・恵美を演じた趣里さんも「脚本を読ませていただいて、涙があふれてきてしまいました。あたたかい気持ちというか、感じるものがあって、脚本家の方ってどういう頭の回路でこういう発想ができるんだろうとすごく尊敬しましたし、村越さんの世界観に自分が行けるかなという挑戦でもありました」と脚本への想いを語り、村越さんは「なんか(自分が)すごい人みたいですね(笑)」と笑顔を見せました。
出身校から生まれた作品に監督「すごく嬉しかったです」『ただいま、ジャクリーン』初日舞台あいさつ
舞台あいさつをおこなった村越繁さん、人形のジャクリーンを抱いた大九明子監督、趣里さん、夏日凛子さん、江原由夏さん(左より)
「40分という短い作品ではあるんですけど楽しんでいただければと思います」とあいさつした大九明子監督は、キャストひとりひとりの起用の理由などエピソードもたっぷり披露しました
「カリキュラムの課題が“私と彼の災難”で、“私と彼”をどう設定したら面白い物語になるだろうかと考えたところから発想が始まりました」と発想のもとを明かした脚本の村越繁さん
ヒロインの恵美を演じた趣里さんは「今回、完成した作品を観て、出演できてよかったなと、幸せになれる作品でした。そんな作品ですので、みなさん楽しみにしてください」とコメント
「ジャクリーンって人形として人間とどう接するんだろうかとか考えて、でも人間の感情とは違う部分があったり、その調節が難しかったですね」とジャクリーンの声を演じた夏日凛子さん
「とてもあったかい現場で、役を忘れたのか、役をなりきっていたのか、楽しい時間を過ごさせてもらいました。その雰囲気が伝わったらいいと思っています」と久美役の江原由夏さん
舞台あいさつの最後には、この映画には欠かせないもうひとりのヒロイン・腹話術人形のジャクリーンも登場しました。意外にも大九監督はジャクリーンを抱くのは初めてだそう
主人公の悟を演じた染谷将太さんは、別の作品のロケ中のため舞台あいさつは欠席となりましたが「1度は本気で美学校に入ろうとしていました。けど、俳優業に専念しようとやめました。でも、こういうかたちで素敵なスタッフのみなさんとキャストのみなさんと作品が作れたことを幸せに思います。ジャクリーンもそう思っていることでしょう。みなさんお楽しみください」というメッセージが代読されました。
人形と少年、そしてその周囲の人々をあたたかい視線で描き出した短編『ただいま、ジャクリーン』は、3月9日(土)より15日(金)まで、オーディトリウム渋谷にて1週間限定レイトショーされています。
また『ただいま、ジャクリーン』を生んだ映画美学校・脚本コースは、5月10日(金)より第3期初等科が開講。現在、受講希望者向けのガイダンスなどが開催されています。