トークショーに出演した佐伯日菜子さん(左)と金子修介監督
三鷹産業プラザで開催されている「第4回三鷹コミュニティシネマ映画祭」で11月23日に金子修介監督の作品が特集上映され、上映後のトークショーでは金子監督と佐伯日菜子さんが佐伯さんのデビュー作である上映作品『毎日が夏休み』を振り返りました。
この日は、金子監督がかつて三鷹に住んでいたことから、三鷹に縁のある映画人の作品を特集する企画「三鷹の映画人」として『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995年)と『毎日が夏休み』(1994年)の2作品が上映。
トークショーは映画祭に協力している鶴田法男監督の司会で進行し、序盤は金子監督と、監督の実弟で三鷹在住の脚本家・金子二郎さんにより、金子監督が11歳のとき三鷹に引っ越してきた際のエピソードをはじめ、兄弟だから話せる秘話も披露されました。
トークショーをおこなう金子二郎さん(左)と金子修介監督
そしてスペシャルゲストとして『毎日が夏休み』で主人公のスギナを演じた佐伯日菜子さんが登場。映画撮影当時16歳だった佐伯さんは、初の映画出演だった『毎日が夏休み』について「すごい緊張していて、でもすごくいい現場だった」と振り返り、一方、金子監督はオーディションで佐伯さんに会ったときに「すごくかわいいんだけど、喋り方がちょっとおかしいかな(笑)」と思ったと告白し、佐伯さんもその発言には「え?(笑)」。
トークでは『毎日が夏休み』の名シーンのひとつである、スギナが学校の廊下で踊るシーンが、現場で急に決まったことが明かされ、佐伯さんの「まったく打ち合わせなかったです」の言葉に金子監督は「無謀だよね、監督として。いまなら絶対に考えられない(笑)」と、かつての自身の演出を評しました。
佐伯日菜子さん(中央)も加わってのトークは、ワインやビールを飲みつつのリラックスした雰囲気で進みました
さらにサプライズとして、劇中スギナが子守りをするシーンに赤ちゃん役で出演していた金子監督の息子さん・鈴幸さんもトークショーに加わり、久々の再会となった佐伯さんは「ほんと変わってなーい、ビックリしました」と驚きを見せながら「(子守りの撮影は)時間かかりました。すごく大変だし、ずっと(鈴幸さんが)泣いてるし、私は金子監督のお子さんだからなるべくカメラに顔が映るようにって気を遣うし、でもその気遣いがあんまり(完成した映画に)現われていない(笑)」と当時の思い出を語りました。
また、金子監督はヒット作のひとつ『デスノート』(2006年)で松山ケンイチさんが演じたキャラクター・L(エル)について「松山ケンイチくんがこの役をどうしようかと悩んでいるときに“『毎日が夏休み』を観て、あの(佐野史郎さんが演じたスギナの義父・成雪の)喋り方を真似してみて”と言って、そういうことであのLの喋り方が生まれたということなんです」と『毎日が夏休み』が影響していることを明かしました。
トークショー中の金子二郎さん、金子鈴幸さん、佐伯日菜子さん、金子修介監督(左より)
佐伯さんは『毎日が夏休み』の後に出演した『静かな生活』(1995年)撮影時に、故・伊丹十三監督が「“あんないい映画でデビューして、次の作品はこんな文化的な作品に出たのだから、あなたは映画女優としてがんばりなさい”とお話をしてくださったことがあって、それがずっと心の中にあります」というエピソードを紹介し「ほんとに『毎日の夏休み』でデビューできたことと伊丹監督の言葉が私のお守りみたいなもの」と語り、金子監督も「(伊丹監督が)いい映画とおっしゃっていたんですか。それは嬉しいですね」と笑顔。
そして、金子監督は「故郷みたいな三鷹で、かつての作品を、しかもフィルムで上映してもらって、いろいろな言葉をもらい、主演の日菜子ちゃんにも再会できて嬉しいです」と、佐伯さんは「この映画は私も大好きな映画で、こうしてみなさんに愛されて、映画祭というかたちで上映されたのはほんとに嬉しかったです。これからもずっと三鷹映画祭が続いていって、またなにか私の作品を流してください(笑)」とあいさつし、トークショーを締めくくりました。
映画祭実行委員会が今年購入した35mm映写機。金子修介監督もフィルムでの上映に「違うものを観ている気がします」
「三鷹コミュニティシネマ映画祭」は、かつて存在した名画座・三鷹オスカー閉館後、常設の映画館がなくなった三鷹市に「もう1度映画館を」と願う市民有志の企画・運営により、2010年以降年1回開催されている映画祭。
現在では珍しくなりつつある35mmフィルムですべての作品を上映しており、今回からは専用の映写機を購入し上映も市民スタッフがおこなうという、文字通り市民の手による映画祭となっています。
映画祭は11月22日より24日まで3日間開催され、24日には「【三鷹オスカー、一日だけ復活!! 第4弾】「映画史に残る名コンビ、洋画の巨匠と男優編」」と題し、三鷹オスカーの番組編成担当だった鶴田浩司さんが選んだ『サクリファイス』(1986年・スウェーデン=フランス/アンドレイ・タルコフスキー監督)、『勝手にしやがれ』(1960年・仏/ジャン=リュック・ゴダール監督)の2本が上映されます。