現代に多く見られる人間関係“共依存”を題材に、人気若手男優の小澤亮太さんを主演に迎えて描く『共に歩く』が4月5日に初日を迎え、シネマート新宿で小澤さんと共演の入山法子さん、メガホンをとった宮本正樹監督が舞台あいさつをおこないました。
宮本監督の長編デビュー作となる『共に歩く』は、精神的に不安定な女性と彼女を支える恋人の青年、自傷行為を続ける少年とその母親、アルツハイマーを発症した妻とその夫という3組の男女の姿を通して、他者に必要とされる関係に依存してしまう"共依存”の関係を描いた作品。
現代社会の問題をシリアスに描いた作品となっており、主人公の小学校教員・哲也を演じた小澤さんは「(台本を読んだときに)すごく真面目な作品だなと思って“こんなぼくがやっていいのかな?”って。先生役というのも初めてで、子どもとのコミュニケーションをどうやったらいいんだろうとか、共依存とか先生とか、いろいろな面で悩みがあって、けっこう難儀でしたね」と、これまでと違ったタイプの作品を演じての感想を述べ、哲也の恋人・明美を演じた入山さんも「こういう役柄は初めての挑戦だったので、すごくやりがいのある役をいただけたという印象でした。やっぱり、きれいではない感情を吐き出すキャラクターだったので、そのへんは気を遣って演じるようにしていました」と振り返りました。
哲也と明美の関係は、宮本監督自身の学生時代の交際相手との関係をモデルにして描かれているそうで、宮本監督は「ホン(脚本)を書いている間はまだ客観視できたんですよ。けれども、実際に現場で再現されると、リアルであればあるほど映画にとってはいいんですけど、昔を思い出してしまってぼくの胃は痛くなってくるという(笑)。ただ、映画にとってはそれだけリアルな表現ができたので、ほんとに小澤くん、入山さんの演技が素晴らしかったと思っています」と、ふたりの演技に賛辞を贈りました。
小澤亮太さん「ぼくがやっていいのかな?」と思った主演作公開 『共に歩く』初日舞台あいさつ
舞台あいさつをおこなった、入山法子さん、宮本正樹監督、小澤亮太さん(左より)
「新年度を迎えて、新学期や新しい就職先や、そこで人とのコミュニケーションっていろいろあると思うので、こういう映画を仕事の糧にしていただいて、この映画を観てなにか感じとったことを思い出しながら、よい春を迎えてください」と、哲也役の小澤亮太さん
「ひとつひとつ心の感情を整理していくことで生まれる人間関係というのもあたたかくていいものなんだなと、この作品を通して、この舞台あいさつを通して改めて思ったので、たくさんの人にこの映画が届けばいいなと思っています」と、明美を演じた入山法子さん
「(3組の男女の)3つのストーリーになっていますけど、結局は家族であったり、人と人が支えあって生きていくという問題であったり、人間関係にすごく根ざしたものなので、大きなテーマとしては“家族”ということになっていくと思ってます」と宮本正樹監督
舞台あいさつでは、小澤さんが大事なシーンの撮影のときには控え室を出てひとりになっていたというエピソードが紹介され、入山さんは「(小澤さんは)控え室ではムードメイカーで明るくしてくださっていたんですけど、急にいなくなるんですよ。いなくなるというのはすごく集中されているということだから、みんなもそれに引っ張られるように“次はしっかり行こうね!”みたいな感じで、ほんとに引っ張ってくださっていました」と話しましたが、小澤さん自身は「自分の大事なシーンだけいない、最悪な男だよね(笑)」とジョークを交え「ほんとに、ぼくがみなさんの足を引っ張っていたので。そういうところだけはしっかりやらないとなって」と謙遜を見せました。
そして宮本監督は「自分が苦しんできたことなので、現在同じような状況にいらっしゃる方がいたら、この映画がその苦しい状況から脱する助けになれたらいいなあと思ったのがひとつ、もうひとつは全然こういうことと関わりなく人生を送られている方に“こういうこともあるんですよ”と知ってもらいたい気持ちがあったので、助けになりたい気持ちと、知ってもらいたいという、ふたつの制作意図で作らせていただきました」と映画に込めた想いを語り「ひじょうに真面目な映画なので、広まっていくにはみなさまの応援が頼りです。口コミでこの映画のよさを伝えていってもらえたら嬉しいです」というメッセージで舞台あいさつを締めくくりました。
『共に歩く』は、舞台あいさつ登壇者のほか、河井青葉さん、長島暉実さん、日向丈さん、染谷俊之さん、朝加真由美さん、螢雪次朗さんらが出演。4月5日(土)よりプレビ劇場ISESAKI、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか、全国順次ロードショーされます。