オーディションで抜擢された若手女優・瀧内公美さんとベテランの笹野高史さんがダブル主演をつとめる“孤独”がテーマのブラックコメディ『グレイトフルデッド』が11月1日に初日を迎え、新宿ミラノで瀧内さんと笹野さんら出演者と内田英治監督が舞台あいさつをおこないました。
『グレイトフルデッド』は、孤独な人間を観察するのが生きがいの女性・ナミと、ナミが目をつけた孤独な老人・塩見三十郎を中心とした物語。塩見があるきっかけで孤独を脱出したことが許せないナミが、周囲を巻き込みながら暴走していく姿がブラックかつコミカルなタッチで描かれていきます。
ナミを演じた瀧内さんは映画初主演で、満員の客席に涙ぐみながら「ほんとに嬉しいです。夢がかなったんだなと思います。ほんとにありがとうございます」とあいさつ。
瀧内さんが泣き出すと「ハハハハ、泣いてらあ(笑)」と声をかけて和ませた塩見役の笹野さんも「ここまで来るまで大変で、スタッフの方もみんな苦労してきたもんですから、ぼくもちょっと感慨深いものがあります」と話し「ここはぼくが学生時代よく観にきた映画館で、こんなところに立たせていただいてあいさつすることなるなんて夢にも思いませんでした。個人的にもちょっと感動しています。年を取るのは面白いなあと思っているところでございます」と、心境を語りました。
映画初主演の瀧内公美さん「映画らしい映画」と自信 『グレイトフルデッド』初日舞台あいさつ
舞台あいさつをおこなった内田英治監督、渡辺奈緒子さん、瀧内公美さん、笹野高史さん、Heartbeat(ハービー)さん、木下ほうかさん(左より)
初日を迎え感動の涙を流す瀧内公美さんと、笹野高史さん
劇中には刺激的なシーンも多いため、瀧内さんはオーディション後の内田監督との最終面談で監督に「ほんとにやれますか?」と確認されたとのこと。しかし逆に「“監督こそ本気で撮れますか?”と言ってしまいました(笑)」と、堂々とした返答をしたそうで、内田監督はそのときのことを「昔はもうちょっと野良犬っぽい生意気そうな女優で、そういうところが良かったんで、(役に)ピッタリって感じですよね」と振り返りました。
一方、笹野さんも過激な内容のため依頼があった際には躊躇があったと明かし「一晩のたうち回って考えまして、家族会議もいたしました。“こういう映画なんだけどどうしようか、裸も出てくるよ”なんて(笑)。ひじょうに悩んだんでございますが、オファーは断らないという俳優としての信条がムクムクと起きあがりまして“いやいや、これはめったにできない役だぞ”というのでやらせていただくことになりましてございます」と、出演を決めた経緯を説明しました。
オーディションを受けるにあたっては「無難にやるのもいやだったので、無難の反対で“有り難い”と思って、なんとしてでもと思ってやって、奇抜なことを言って勝ち取りました」という冴島ナミ役の瀧内公美さん
塩見三十郎役の笹野高史さんは、瀧内さんとのエロティックなシーンも。「映画の現場というのは特殊でございまして、実を申しますとなにも興奮しませんでした。ただ必死にやっておりましたら、全然そうならなかった」
「人間の信仰を題材にしたものができないかなと思って、それから社会派の、孤独を取り上げる固い映画を考えていたんですけど、(脚本を)書いているうちにふざけた映画になってしまいました(笑)」という内田英治監督
塩見三十郎の息子・清直を演じた木下ほうかさんは出演に加えプロデューサーもつとめており、低予算の中での出演交渉やあわや撮影続行不可となりかけたロケ場所でのトラブルなどのエピソードを披露し「逆に俳優(として演じる)部分はどうでもいいと思っていたので、語弊はあるんですけど逆にリラックスできて。(プロデューサーとして忙しくて)それどころじゃなかったのが逆に良かったのかな」と、ふたつの立場で映画に関わっての感想を述べました。
渡辺奈緒子さんが演じた北野敦子は謎めいた役。「かなり作りこんだ役柄で、(監督は)言葉ではおっしゃらないんですけど、髪型やメイク、着るもので像を作り上げてもらえたので、役には入り込みやすかったです」
塩見清直役で出演しプロデューサーもつとめた木下ほうかさんは「各社に頭を下げて、いろいろな人に頭を下げて、協力してもらいました。感謝していますし、騙した人も……」とプロデューサーとしての裏話を
主題歌を歌うHeartbeatさんは曲について「映画を見せていただいて、孤独って寂しいな、そして人の優しさに触れると人生ってパッと変わるんだなと思って、その光と闇とをイメージして書きました」とコメント
舞台あいさつの最後には瀧内さんは「私は小さなころからすごく映画女優になりたくて、今日叶ったことがすごく嬉しいですし、現場はすごく過酷だったんですけど映画愛にあふれるスタッフさんばかりで、私はそこで映画の良さを知りました。映画らしい映画ができたなと自信を持って言えます。映画館は“この作品が観たい”という同じ気持ちを持った人が集まってくる場所だと私は思っています。なので、この映画は孤独をテーマにしていますが、映画館は孤独を感じない場所だと思っています。なので、この映画は映画館で観ていただきたいです。私の最初で最後の“初”主演映画です。たくさんの方に観ていただきたいです」と心を込めたメッセージを。
続けてマイクを持った笹野さんは「私も小さいころから映画女優に……映画俳優になりたくてですね(笑)」と客席の笑いを誘いつつ「ついこないだまで主演俳優なんだということを自覚しておりませんでした。お話をいただいたときは主役だって言われたんですけど、台本を読んでみると彼女(瀧内さん)が主役だと思っていましたので、脇役のつもりでやらせていただいたのですが、にわかに“主演だ”と言われまして、なんか私の初主演映画なんだそうです。私の記念すべき初主演映画、私の代表作になりますので、どうぞみなさま、そこらへんのところを温かーい目で吹聴していただければと思います」と、舞台あいさつを締めくくりました。
お笑いコンビ・カラテカの矢部太郎さんや、国際的に活躍する韓国人女優のキム・コッピさんらも出演、すでに海外の映画祭で話題となり、満を持しての日本公開となった『グレイトフルデッド』は11月1日(土)より新宿ミラノほか全国順次ロードショーされます。