三鷹市民有志の手で運営される映画祭「第5回三鷹コミュニティシネマ映画祭」で、三鷹で10代を過ごした女優・渡辺真起子さんの特集上映と渡辺さんを招いてのトークショーが、11月24日に開催されました。
今年5回目を迎えた「三鷹コミュニティシネマ映画祭」では、三鷹に縁のある映画人を招き作品上映とトークショーをおこなう企画「三鷹の映画人」を2012年以降毎年開催しており、同企画の3回目となる今回は初めて俳優にスポットを当て、10歳から20歳までを三鷹で過ごした渡辺さんの出演作『愛の予感』(2007年/小林政広監督)と『チチを撮りに』(2012年/中野量太監督)の上映とトークショーがおこなわれました。
同映画祭スーパーバイザーをつとめる鶴田法男監督を聞き手に進行したトークショーでは、渡辺さんは三鷹について「(思い出を)話しはじめたらキリがないですね。すべてはここから始まっちゃってますから、思春期ですし、初めてボーイフレンドができたのもこの辺なわけだし、初めてデートしたのもこの辺なわけだし、チューもここでしているし(笑)」と振り返り、鶴田監督のお父さんが館主をつとめていた名画座・三鷹オスカー(現在は閉館)についても「生まれて初めて学校をサボって観にいった映画館が三鷹オスカー。すごく大人な匂いがして、映画館にひとりで行くなと言われていたので、ひとりで映画を観るということ自体にアップアップになっていましたね」とエピソードを披露。演技に興味を持ったのも三鷹時代に小中学校の演劇クラブで演劇をやったことがきっかけだったと話し、三鷹で過ごした時期を「人としての始まりというか、人生の選択が始まった時期で、思い出がつきない」と表現しました。
また、女優としての渡辺さんについて鶴田監督が「存在感を感じる。(画面に)出てきた瞬間に映画という感じがするんですよね」と評すると、渡辺さんは「自分ではなかなかわからないんですよ。“私はここにいるのだろうか?”とはよく考えるんですけど、“私はいる”と思える瞬間が一体なんなのか言葉にしきれないからこそ、私は俳優という役割を選んでいるんだと思うんですね。それが言葉にできたら本を書いているかもしれないし、絵に写せたら絵を書いているかもしれないし、感覚としては“私はここにいることができているな”ということはわかるんですけど、どう見えているのかなというのはわからないです(笑)」と答えました。
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客席に「おかえり」のボードも 三鷹コミュニティシネマ映画祭「三鷹の映画人 渡辺真起子特集」
トークショーをおこなった渡辺真起子さん(右)と、聞き手をつとめた鶴田法男監督。2009年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭で一緒に審査員をつとめたのがおふたりの縁
中野量太監督(一番右)と鶴田浩司さん(一番左)も加わってのトーク
トークショー後半では『チチを撮りに』の中野量太監督と、鶴田監督のお兄さんで三鷹オスカーの番組編成を担当していた鶴田浩司さんも加わってトークは進行。自主映画として制作された『チチを撮りに』について、中野監督が「いいホン(脚本)を見せたら(出演依頼を)受けてくれるんじゃないかというイメージがあったんです。途中から真起子さんのイメージで当て書きみたいな感じで書いていた」と明かすなど、同作の撮影時のエピソードや演出意図などが話されました。
トークショーの最後には渡辺さんは「今日はこのような機会をいただいて、この映画祭が長く続いてけばいいなというのと、自分がなにかを志した土地でこうやって観ていただく機会があるとは思っていなかったので、ほんとに嬉しく思います」とあいさつ。客席には渡辺さんの同級生も来場しており「おかえり」のメッセージボードも掲げられました。
「三鷹コミュニティシネマ映画祭」は、三鷹オスカー閉館により常設の映画館がなくなった三鷹の街にもう一度映画館をという趣旨のもと、企画運営から作品の上映まで市民有志の手によっておこなわれている手作りの映画祭。名作上映やゲストを招いての特集上映など、さまざまな趣向を凝らした企画で毎年開催されています。