家族や友人に秘密を抱えたセクシャルマイノリティの青年の葛藤を描いた『カミングアウト』が11月29日にユーロスペースで初日を迎え、主演の高橋直人さんと共演の岡村優さんらキャストと犬童一利監督が舞台あいさつをおこないました。
第23回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で先行上映され好評を博した『カミングアウト』は、ゲイであることを隠している大学生の赤間陽(あかま・よう)が、友人やセクシャルマイノリティの仲間たちと過ごす日々の中で葛藤しつつ一歩を踏み出していく姿を描いたストーリー。
赤間陽を演じて映画初主演をつとめた高橋さんは「自分もすごくコンプレックスの塊で、みなさんも自分の弱いところやコンプレックスから逃げてしまうというのは日常的にあると思うのですけれど」と話し「赤間陽くんは自分の中で“告白する”というひとつの決心をするので、自分が演じる上で赤間陽くんの心情に持っていくまでの作業が一番苦労した点ですね」と役についてコメント。
陽の親友・緑川昇を演じた岡村さんは「昇は大事なことをアッサリと決めちゃうような性格のキャラクターで、そういう単純だけど大らかな奴がカミングアウトされたときにどういう反応をするのかというのを自分でも深く考えて、それはわりと難しかったところですね」と演じる上の苦労を明かし「ぼくもわりと難しいことを考えないタイプなので、演じていても自分と重なるところはたびたびありましたね」と振り返りました。
高橋直人さん初主演作の想いは「自分とどう向きあうか」 『カミングアウト』初日舞台あいさつ
舞台あいさつをおこなった監督とキャスト。前列左より、歌川たいじさん、高橋直人さん、岡村優さん、秋山浩介(TooT Aki)さん、犬童一利監督。後列左より、杉崎佳穂さん、辻恵さん、一ノ瀬文香さん、美漸 - Bizenさん、木村利信さん
ゲイであることを隠している主人公・赤間陽を演じた高橋直人さん
陽の大学の同級生で親友の緑川昇を演じた岡村優さん
メガホンをとった犬童一利監督
これまでショートフィルムの監督や映画プロデュースを手がけ、これが劇場公開初長編作となる犬童監督は「もともとは同性愛のカミングアウトを描こうと思っていたわけではなくて、いまの日本を切り取りたいと思ったんですよ。自分自身と向き合うことがいま一番重要なんじゃないかと思って、自分自身と向き合うことを描こうと思って企画して行き着いたのが同性愛者のカミングアウト。そこからいろいろ取材をして、たくさんの方に出会って支えてもらいながら公開まで持って来られました」と映画の意図を明かし、この作品でこだわった点を「単なるハッピーエンドとかバッドエンドにしたくなくて、取材を重ねてなるべくリアルに描いたつもりです。もうひとつ、主人公がカミングアウトをするシーンは相当こだわりました。たぶん観ていただければその理由はわかると思うんですけど、そこはたぶん高橋くんも苦労したところだと思います」と説明。
監督が挙げたシーンについて高橋さんは「自分が告白する相手によって自分の心情も相手の受け入れ方も変わりますし、あらかじめ自分の中で(告白の)シミュレーションもしていると思うので、考える中で不一致が起きたとき、自分の中でどういう葛藤ができてしまうのかというのが写っていればいいなと思っています」と話しました。
陽が行きつけのゲイバー・B♭のママを演じたマンガ家の歌川たいじさん
B♭の従業員・青木剛を演じたシンガーのTooT Aki こと秋山浩介さん
B♭の常連客・桃井香を演じた一ノ瀬文香さん
映画では、シンガーのTooT Akiこと秋山浩介さん、マンガ家の歌川たいじさん、タレント・女優の一ノ瀬文香さんと、実際にカミングアウトをしている方々も出演しており、ゲイバーの従業員・青木剛を演じた秋山さんは「とても重要な役柄を演じさせていただきました。役作りというのはあまりしていないんですけど、自分にとって思い入れのある役柄です」と映画出演の感想を述べました。
陽がゲイと知らない陽の母親・赤間典子を演じた杉崎佳穂さん
同じく陽がゲイと知らない陽の姉・赤間啓子を演じた辻恵美さん
陽と昇が学ぶ大学のゼミ教授を演じた木村利信さん
彫師・篤志を演じた美漸 - Bizenさんは実際も彫師が職業
コメントする高橋直人さん(一番左)ら登壇者。一ノ瀬文香さん(一番右)は華やかな衣裳で登壇
高橋さんは「鏡に映った己は何者かと、自分とどう向きあっていくかが少しでもこの映画を通してみなさんにわかっていただけたら、そしてLGBT(セクシャルマイノリティ)のことを少しでもみなさんに知っていただけたらなと思っています」と、舞台あいさつを締めくくりました。
セクシャルマイノリティのカミングアウトというテーマに真摯に向きあった『カミングアウト』は、舞台あいさつ登壇者のほか、高山侑子さん、夏緒さんらが出演。11月29日(土)より3週間ユーロスペースにてレイトショー上映されます。
劇場ロビーにてフォトセッションをおこなった岡村優さん、高橋直人さん、犬童一利監督(左より)
※記事公開当初、登場人物の名前を誤って記載した箇所がありました。お詫びして訂正します。(12月2日訂正)