過激な内容のため大手出版社に刊行を拒否された小説を映画化した『木屋町DARUMA』(きやまちだるま)が10月3日に初日を迎え、渋谷シネパレスで主演の遠藤憲一さんと共演の三浦誠己さんらキャストと榊英雄監督が舞台あいさつをおこないました。
京都の歓楽街・木屋町を舞台にした『木屋町DARUMA』は、丸野裕行さんの同名小説が原作。ある事件のため四肢を失いダルマのような姿になった元ヤクザ・勝浦と彼の世話をする若きヤクザ・坂本のふたりを中心に、裏の世界で生きていく人々の姿を骨太なタッチで描いた人間ドラマとなっています。
勝浦を演じた遠藤さんは「こんなエグいヤバい映画、誰が観るんだよ! と思っていたらこんなにいっぱいいらっしゃって、ほんとに感謝しています。出演者もスタッフも、その場のエネルギーを傾けられるだけ傾けました。そのパワーだけは圧倒的に自信を持っています」とあいさつ。四肢を失い動きが制限されている役を演じたことについて「全身で演技するのが俳優じゃないですか。だから削ぎとった中で心の大元が一番勝負しなければいけないところだったので、心を全面でどんなふうになるのかとにかく試してみたかった。貴重な体験を榊くんからいただいてチャレンジできたって感じです」と振り返りました。
勝浦と行動をともにする若きヤクザ・坂本を演じた三浦さんは、坂本という役について「ヤクザらしからぬヤクザというか、ほんとに葛藤の塊みたいな男だなと思うんですけど、ぼく自身のいままで生きてきた人生とダブる」と印象を語り、演じていく中で三浦さん自身と遠藤さんの関係が坂本と勝浦の関係とも重なりあい「だんだんのめり込んでいってできたなという感じですね」とコメント。さらにあるシーンの撮影で遠藤さんから「もっと来い! お前もっと来い!」と、より力を入れた演技を求められたと明かし「言葉とかよりも心と体でたくさんのことを教えてくださってる」と、遠藤さんに感謝の気持ちを示しました。
遠藤憲一さん衝撃の主演作は「悔いのない作品です」 『木屋町DARUMA』初日舞台あいさつ
「小学生で生まれて初めて観た映画が(主人公が四肢を失う)『ジョニーは戦場へ行った』なんです。映画って怖いというイメージがあって、まさかこういう役に出会えるとは」と勝浦茂雄役の遠藤憲一さん
「遠藤憲一さんにも引っ張りあげてもらって、榊英雄監督の愛情の中で、どうにか魂込めて演じられたように思っています。映画界にキッチリと残る力強い映画になっています」と坂本健太役の三浦誠己さん
遠藤憲一さん(左)との共演を振り返った三浦誠己さん(右)は「ほんとに遠藤さん、愛してます」と、この作品への想いの強さを感じさせました
武田梨奈さんが演じた友里は親の借金返済のため風俗で働くというハードな役柄で、武田さんは「作品が作品なので、現場に入ると大人が全員、怖く見えてしまいましたね」と、映画の内容ゆえの戸惑いもあった様子。一方で「私がテンパっちゃってセリフが出てこなくなっちゃったときに遠藤さんが横に来てくださって“1回全部忘れてやってみよう、何回でもお芝居付き合うから”と言ってくださったのがほんとに救われて」と、遠藤さんの気遣いを感じさせるエピソードも披露し、遠藤さんはそのエピソードを受け「ちゃんと俺が陰でフォローしてるでしょ?」とアピールして客席の笑いを誘いました。
また、勝浦を利用する男・金内を演じた木下ほうかさんはキャスティングプロデューサーもつとめており「当然シナリオは最初に読むんで、早いもん勝ちで“これ”って(笑)。スタッフの一員でもあるので、あまり負担が大きい役もアレなのでちょうどいいかなー、と思いまして」と、笑いも混じえて役について語りました。
「大先輩方に囲まれてすごく緊張していました。いまも緊張するくらいで、刺激しかなかった現場でした」という新井友里役の武田梨奈さん。ハードな撮影で「ほんとに共演者のみなさんに助けられました」
スタッフも兼任し「みなさんのご機嫌取りに走り回り、車で迎えに行ったり(笑)」していたという金内秋生役の木下ほうかさん。「とにかく上映まで時間がかかった映画です。ですから今日ものすごく嬉しい」
「原作が面白いものだったし、すごく画が目に浮かんだのと同時に、男の話というのに憧れがあるので、ぜひこういう“哀しき男たちの話”を撮りたいなと思った」のが映画化のきっかけという榊英雄監督
榊監督は、原作者の丸野さんとともにプロデューサーもつとめて映画を実現させており、映画完成から時間を経ての公開に「(本に)できないなら映画でしっかり送り出してあげたいという想いもあって、それをみなさん汲みとっていただき、いろいろ大変でしたけど、ようやくこうして初日を迎えることができているので感慨深いです。映画の力って偉大だなと思っています」と心境を語り「こんなたくさんの方が来ていただいて感無量でございます。撮影から2年半、遅すぎるくらいの公開ですが、みなさんの志をすくい取っていい映画ができました。みなさんのご協力でみなさんの前に立てることを光栄に思います。ぜひ楽しんでいただければ嬉しいです」と満席となった客席に感謝。
そして遠藤さんの「観終わったときに嫌な気分になるのか“よく頑張ったな”って思うのかわかりませんが、ただ全員で全力投球しました。悔いがない作品です。楽しんでいってください」という言葉で舞台あいさつは締めくくられました。
舞台あいさつ登壇者のほか、寺島進さん、木村祐一さん、烏丸せつこさんら、豪華俳優陣が共演し、人間の苦悩や葛藤を描く『木屋町DARUMA』は、10月3日(土)より渋谷シネパレスほか全国順次ロードショーされます。