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池田千尋監督新作は「わからないと思う人間について描きました」 『東京の日』初日舞台あいさつ

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舞台あいさつをおこなった佐藤岳人さん、田中佐季さん、佐々木大介さん、浅野千鶴さん、小澤雄志さん、池田千鶴監督(左より)
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 東京の片隅を舞台に、地方から上京してきた女性と日々をなんとなく過ごす青年の出会いを描いたラブストーリー『東京の日』が10月31日に初日を迎え、ユーロスペースで池田千尋監督と佐々木大介さんら出演者が舞台あいさつをおこないました。
 池田監督のオリジナル企画による最新作となる『東京の日』は、若手女優の趣里(しゅり)さんが演じる女性・アカリが主人公。スーツケースに全財産を詰めて上京してきたアカリと、アカリと一緒に暮らすことになったカフェのバイト店員の青年・本田の関係を中心にした人間模様が描かれていきます。
 準主役的存在の本田は2014年に上演され『東京の日』制作のきっかけとなった池田監督の初舞台作品「東京の空」にも登場しており、池田監督は映画で本田にスポットをあてた理由を「(本田は)最初の演劇をやったときから“この人はなにを考えて生きているんだろうな”と、一番わからない人だったんですね。それで“この人なにを考えているかわからないな”で終わらせずに、なにを考えているかわからない人にもきっとなにかがあるはずで、それについて描いてみたいと思っていたんです」と説明。舞台に続いて本田を演じた佐々木大介さんに対して「佐々木くんと映画の中の本田くんって共通点がすごくいっぱいあると思っていて、なにを考えているかわからない人の心の中をさらけ出させて見せるためには“このくらい言ってやらないとダメなんじゃないかな”みたいに」思いつつセリフを書いたり演出をしていたそうで、当の佐々木さんは「ただただキツかったです。いろいろな人にいじめられる役だったので(笑)」とコメントしました。
 舞台「東京の空」の主人公であるカフェ店長・水口と、本田の同僚バイト・中村も本田と同様に舞台と同じキャストが演じて映画にも登場しており、水口役の浅野千鶴さんは「(店員役のふたりと)現場はとってもチームワークがよくて気があって、私は仲良くなるとすぐ“家族のようだね“って言っちゃうんですけど、そんな感じで楽しかったです」と、中村役の小澤雄志さんは「舞台でもこの映画でも、このふたり(本田と水口)にちょっとなんかあるかなみたいな感じのところがありまして、ぼくだけ蚊帳の外なんですね。なのでひとりでのびのび楽しんでいたという気持ちです」と、それぞれ振り返りました。

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「次は演劇じゃなくて映画になるなって予感がして、いろいろな人のお力をいただいてこの作品にたどりつけました」という池田千尋監督。「じっくり楽しんでいただく映画になっているかと思います」

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「舞台で同じ役をやっていたので気負いみたいなものはなかったんですけど、外の世界に飛び出せるのかなと楽しみだったり、単純に嬉しいという気持ちはありました」と本田祐介役の佐々木大介さん

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「この映画はたくさん女性が出てきます。そして池田監督の書く女性はとても強くて愛情深い池田監督そのもののような女性なので、池田監督を感じながら楽しんでください」と水口波子役の浅野千鶴さん

 また、舞台あいさつは欠席となった趣里さんと渡辺真起子さん、香川京子さんの女優陣について池田監督は「3人ともそれぞれ別の作品に出ていただいたことがあって、特に趣里ちゃんとは“次は映画でまた”と話をしていたんですね。その中でこの作品が生まれて私の中では全部つながったんです。この作品と趣里ちゃんが私の中でペタッとくっついたことで走りだしたという感じがすごくあって。その中に役柄の上で若いみなさんを見守ってくれるふたりということで渡辺真起子さんと香川京子さんにオファーしましたら出てくださることになって、すごくありがたかったです。私の中で渡辺さんと香川さんが出ることがイメージとしてあって脚本を書かせていただいたという感じです」と話し、3人が共演するスナックのシーンについて「きっとみなさんご覧になるとすごい幸せな気持ちになるシーンになっていると思います。私が撮っている最中にものすごく幸せだったので、それが映っていると思っています」と笑顔で語りました。

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「たぶん不思議な映画ではあると思いますので、身を任せて観ていただくのが一番だと思います。男性が見ると“これはちょっと痛い”みたいなこともあるかもしれません」と中村太一役の小澤雄志さん

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本田の女友達・ゆかを演じた田中佐季さんは「なんでこの女は本田くんのことを好きになったんだろうということを、観終わったあとにちょっと考えていただければありがたいなと思います」とコメント

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「(上映時間が)お昼あとでちょっと眠くなってしまう感じもあるかもしれませんけど、眠くなりそうな感じがこの映画のよさというのはぼくも思っています」と、本田の同級生・観野役の佐藤岳人さん

 佐々木さんは「“東京の片隅でこんなことが実際にあった”という話を誰かに聞いた気がするみたいな、そういう感覚で観ていただけることもできる映画なのかなと思っていて、もしくは“自分のことだったような気がする”というふうに観ていただけるとまた楽しめると思うので、そんな観方もありますと提示します」と映画の観方について語り、池田監督は「わからないと思う人間について描きました。最近の日本の映画って、どうしてもわかりやすいもののほうが多く観られる傾向が強くて、たしかにわかりやすいほうがすんなり入ってきますけど、でも映画ってわかりにくいことがあってもいいと思いますし、人間そのものも“この人はわからない”という人のほうが多いと思うんですよね。わからないことを“わからない”って放るんじゃなくて“わからないけどそれってどういうことだろう?”と吸い込んだり受け止めたりするような、そんな映画であればいいなと思っています。そんなふうに受け取っていただけると嬉しいです。わからないことを受け取ってみたら、自分の中にもそういうものがまた生まれてくるってことがあるんじゃないかと思います」と話して舞台あいさつを締めくくりました。

 一直線な女と優柔不断な男の関係をあたたかな視線で描いていく『東京の日』は10月31日(土)よりユーロスペースにて公開中、ほか全国順次公開されます。

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