市原隼人さんが主演をつとめる『ホテルコパン』が2月13日に初日を迎え、シネマート新宿で市原さんと共演の近藤芳正さんら出演者と脚本の一雫ライオンさん、門馬直人監督が舞台あいさつをおこないました。
これまで短編映画の監督やさまざまな作品のプロデューサーなどをつとめてきた門馬監督初の長編作となる『ホテルコパン』は、長野県白馬のホテルを舞台に、市原さん演じる元・教師のホテルマン・海人(かいと)や従業員、宿泊客たち、それぞれの過去を抱えた人々の「再生」を描く群像劇。
撮影は2013年の秋におこなわれており、市原さんは「内容はちょっとヘビーなんですけど、メッセージ性が込められているので、みなさんに観ていただく日を楽しみにしていました。撮影から3年、この日を楽しみにしていました」とあいさつ。
門馬監督も、撮影から約3年、脚本を作りはじめてからは5年をかけての公開に「感無量です。いつになったら映画を見せることができるんだろうって悩んだ時期とかももちろんあって、便秘がようやく流れた感じ」と公開を迎えた喜びをユニークに表現し、キャスト陣からは思わず苦笑いも。
この作品以降も門馬監督とコンビを組んでいる一雫さんは「公開までの間にいろいろほかの作品が世に出ているので、ぼくたちの昔の彼女に会うような感覚でちょっと照れくさかったりしながらも、この映画がなかったらこうやって生きていないなと思い、感謝しています」と心境を語りました。
29歳を迎えた市原隼人さん「日々通過点」と心境を 『ホテルコパン』初日舞台あいさつ
舞台あいさつをおこなった李麗仙さん、大谷幸広さん、玄理(ひゅんり)さん、前田公輝さん、市原隼人さん、近藤芳正さん、栗原英雄さん、一雫ライオンさん、門馬直人監督(左より)
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主人公のホテルマン・海人祐介を演じた市原隼人さんは「今日は劇場まで足を運んでいただきありがとうございます」とあいさつ。トーク中に客席から小さなお子さんの声が聞こえると「かわいいな」と笑顔
「みんなで白馬のほうに2週間くらい、あのホテルに泊まりながらあのホテルで撮影したっていう貴重な体験をさせていただいて、懐かしい思い出になりました」と、ホテルオーナー・桜木悟役の近藤芳正さん
「試写を観たとき、台本を読んだときの角度と違う新しい映画になっていると感じた作品を、こんなたくさんの方に観ていただけたことをいま嬉しく感じています」と、 宿泊客・斑目孝介役の前田公輝さん
市原さんが演じた主人公・海人は過去の出来事が理由で他人との関わりを避けて生きている人物という設定で、市原さんは演じるにあたり「今回は内向的でちょっと闇を抱えた人間なので、なにか喋るにしても、相手に届く前に自分の中だけで解釈してしまうような言葉のトーンが出ていればいいかな」と意識していたと話し、門馬監督は撮影中の市原さんについて「すごく役に入ろう入ろうとしてくれて、もちろん現場で演出するときに話はするんですけど、それ以外ではあまり目も合わせずにひとりで離れていっちゃうみたいな、自分を追い込んで追い込んでやってくれたなと思いますね」とコメント。市原さんは監督のコメントを受けて「役者なんで、100%はできないですけど1%からコツコツ積み上げることでなるべくその状態に近づいて、映画全体のテーマとしての“再生”というのがリアルな状態で表現できればいいなと考えていました」と振り返りました。
「今日からやっとこの『ホテルコパン』が旅に出るという現場にみなさん立ち会っていただきましてありがとうございました。これからもよろしくお願いします」と、新興宗教教祖・段来示役の栗原英雄さん
舞台あいさつ前に控室で緊張している市原さんを見て「撮影中も)こんな感じだったね市原さんと思って、いろいろ思い出しました(笑)」とホテル従業員・片山ユリ役の玄理さん。「何度でも観にきてください」
「作品というのは観ていただいて初めて完成するものだと思っています。今日から完成した作品がみなさんの中に残っていくと思いますので大切にしていただければ」と女優付き人・澤井善役の大谷幸広さん
海人の勤めるホテルのオーナー・桜木を演じた近藤さんは舞台あいさつ前に客席で映画を鑑賞していたことを明かし「50くらいになるとちょっとしたことで泣いちゃうんですけど、今回初めて自分の出ているシーンで自分が泣いているっていう(笑)」と告白。
海人の同僚・ユリ役で市原さんとのキスシーンを演じた玄理さんは「こうやって(うしろから)撮っているから(実際にキスを)してもしなくてもわからないんですけど、監督が“しちゃえしちゃえ”って」と裏話を披露し、門馬監督は「たぶん(キスを)見たかったんだと思う」と話して会場の笑いを誘いました。
撮影でスキーのジャンプ台を見て「ジャンプのときはテレビを見て応援するようになりました。みなさまも映画を応援していただきたいんですけど、ジャンプも面白いんです」と女優・舟木曜子役の李麗仙さん
脚本執筆から5年を経ての公開に「市原さん先頭にこれだけ素敵な俳優さんに演じていただいて、こんなにも多くのみなさまに観ていただけるとはほんとに嬉しく思っています」と、脚本の一雫ライオンさん
「この映画がなかったらまだまだ長編はできていなかったと思うんですよね。これがあったおかげでそのあと2本長編を撮らせてもらえたり、すごい感謝をするメンバーという感じですね」と門馬直人監督
そして、公開前の2月6日に市原さんが29歳の誕生日を迎えたということで、サプライズでお祝いのケーキが登場。大きな拍手で誕生日を祝福された市原さんは「日々通過点で、死ぬまでやっていきたいです」と、20代最後の年を迎えての意気込みを語りました。
市原さんは「この映画は、本来なら人が人に見せたくないような一面を多く描いた作品です。それがゆえに人間くさくて痛々しいシーンもたくさんあったんですけど、テーマが“再生”ということで、みなさまも過去になにかひとつの出来事でずっと苦しめられていることが、この映画で描かれているのと同様に、ものの考え方ひとつで、いままで苦しめられてきたものが背中を押す着火剤になるかもしれないという希望も持っていただけたらすごく嬉しいと思っています。これからも『ホテルコパン』を、胸の端っこでもいいのでかわいがっていただけたらと思います」とメッセージを送り、舞台あいさつを締めくくりました。
舞台あいさつ登壇者のほか、ドラマで注目を集める大沢ひかるさんや、水田芙美子さん、清水美沙さんらが共演する『ホテルコパン』は、2月13日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次公開されます。