日本映画専門情報サイト:fjmovie.com

fjmovie.comトップページニュース一覧>足立正生監督新作公開を迎えて「聴いて回る側にぼくは立ちたい」 『断食芸人』初日舞台あいさつ

足立正生監督新作公開を迎えて「聴いて回る側にぼくは立ちたい」 『断食芸人』初日舞台あいさつ

記事メイン写真

舞台あいさつをおこなった安部田宇観(あべた・うかん)さん、守谷周人さん、流山児祥(りゅうざんじ・しょう)さん、井端珠里さん、足立正生監督、山本浩司さん、伊藤弘子さん、愛奏(あい・かなで)さん、本多章一さん(左より)
※画像をクリックすると大きく表示します

 1960年代に「アングラの旗手」と呼ばれた足立正生監督が久々にメガホンをとった『断食芸人』が2月27日にユーロスペースで初日を迎え、足立監督と主演の山本浩司さんら出演者が舞台あいさつをおこないました。
 2007年の『幽閉者 テロリスト』以来約10年ぶり、監督復帰第2作となる『断食芸人』は、フランツ・カフカの同名短編の映像化。勝手に「断食芸人」に仕立てあげられ見世物にされるひとりの男と、「断食芸人」にそれぞれの意味を見出していく周囲の人々の姿が描かれていきます。

 上映終了後に登壇した足立監督は「こうやって並んで、ぼくが無傷で立っていられるっていうのはひじょうに幸せなことのように思います。みなさん名優揃いでなんの演技要求もしないしなんの注文もつけないので、大変だったろうと思います」と俳優陣に労いの言葉を送りつつあいさつ。3.11以降の「なにを言っても軽々しい言葉に絡め取られてしまうという現実」が作品の根底にあり「そういったものに絡み取られないためにはどうしたらいいのかというのを、山本くんの演じた、なにも言わない食べないしない、そしてどこから来てどこへ去るのかもわからない、人物像というよりも人物像になりえない存在みたいなところで、すべてを語りたいという具合に思ったわけですね」と、作品に込めたメッセージを説明しました。
 ほとんどセリフのない主人公「断食男」を演じた山本さんは、監督のその言葉を受け「ぼくは監督のそのメッセージとかを考えず、まったく理解せずに演じていましたかね。ほんとに単純な動機で“ただそこにいる”ということを徹底してやるということを考えていましたかね」と振り返りつつ「それでよかったんですよね、監督?」と監督に問いかけ、足立監督は「まったくその通りです」と、山本さんの演技に太鼓判を押しました。

コメント写真

足立正生監督は「私は精一杯楽しんでこの映画を作らせていただいたんですが、観ていただいた方の中に楽しさが面白さとして生きていれば、もうそれ以上言うことはないんです」と心境を語りました

コメント写真

「とりたててなにかやったという実感もないんですけども、なにもやっていないながらでもこの作品の主人公として、なにか1本の柱としていられるようがんばったつもりです」と断食男役の山本浩司さん

コメント写真

「あまり(セリフを)喋ってないんですけど、考えながら感じながらやらせていただきました。この映画を観たあとで“ああでもないこうでもない”と言ってくれれば幸いです」と、監視人役の本多章一さん

コメント写真

いろいろなキャラクターを演じた愛奏さん。「自分の役どころの意味とかを考えていたんですけど、場面場面で違うということだったので“考えてもわからない”ということがわかったので、考えずにやりました」

コメント写真

出演にあたり「私でいいのかなという不安がありましたけど、監督に絶大なる信頼を置いて、大好きな俳優の山本さんと一緒の作品に出られることも、とても光栄な現場でした」という若い女役の井端珠里さん

コメント写真

女医を演じた伊藤弘子さんは“女王様”のような姿を披露する場面もあり「まさか宇都宮の商店街で鞭を振り回すとは思っていなかったんですけど、楽しくやらせていただきました」と撮影を振り返りました

 呼び込み屋を演じた流山児祥さんは舞台あいさつ前の上映を鑑賞しており「今日、(試写以来)2回目を観て、映画から自由なものがほとんどいま消えつつあるところで、監督はほんとに自由奔放に映画を撮ったんだなってことを思い知らされました」と感想を述べ「この映画は2回観ると相当に面白いよってことを、なおさら思いましたね。“ああ、そういうことか”ということがいっぱい見つかったんですよ。ぜひいろんな人に豊かな映画だよということを伝えていただけたら嬉しいです」と客席に呼びかけました。

コメント写真

「まさにアングラだと思いますね。地平に蠢いている力が表に出てきてるという、相当に奇妙な映画だと思います。みなさん心に留めていただいて宣伝していただくと助かります」と呼びこみ屋役の流山児祥さん

コメント写真

包丁を持った青年役の守谷周人さんは映画初出演。「これからどんなにいい作品と出会おうと、どんなにたくさんの作品と出会おうと、この『断食芸人』がデビュー作であると胸を張って言えると思います」

コメント写真

「自分と真逆の性格の繊細で自殺願望がある役をやらせていただいて、3ヶ月くらい暗い気持ちになってしまい、自分の中にもそういう気持ちがあると考えさせられました」と、若い男役の安部田宇観さん

 舞台あいさつでは、監督とキャストが活発に作品についてのトークを交わすのに加え、客席からの質疑応答もおこなわれました。
 そして足立監督は東京での上映以降に始まる地方上映に向けて「観ていただいた人の想像力の中でできあがった『断食芸人』というものが映画だと思っているので、そういうのを全国行脚しながら聴いて回るという側にぼくは立ちたいと思っています」と心境を述べ、舞台あいさつを締めくくりました。

 ロッテルダム国際映画祭ディープフォーカス部門にも正式出品され海外からも注目を集める『断食芸人』は、2月27日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開。ユーロスペースでは上映期間中トークショーがおこなわれるほか、3月12日(土)~18日(金)は英語字幕版が上映されます。

作品スチール

断食芸人

  • 監督:足立正生
  • 出演:山本浩司 桜井大造 流山児祥 本多章一 ほか

2016年2月27日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

スポンサーリンク