1960年代に「アングラの旗手」と呼ばれた足立正生監督が久々にメガホンをとった『断食芸人』が2月27日にユーロスペースで初日を迎え、足立監督と主演の山本浩司さんら出演者が舞台あいさつをおこないました。
2007年の『幽閉者 テロリスト』以来約10年ぶり、監督復帰第2作となる『断食芸人』は、フランツ・カフカの同名短編の映像化。勝手に「断食芸人」に仕立てあげられ見世物にされるひとりの男と、「断食芸人」にそれぞれの意味を見出していく周囲の人々の姿が描かれていきます。
上映終了後に登壇した足立監督は「こうやって並んで、ぼくが無傷で立っていられるっていうのはひじょうに幸せなことのように思います。みなさん名優揃いでなんの演技要求もしないしなんの注文もつけないので、大変だったろうと思います」と俳優陣に労いの言葉を送りつつあいさつ。3.11以降の「なにを言っても軽々しい言葉に絡め取られてしまうという現実」が作品の根底にあり「そういったものに絡み取られないためにはどうしたらいいのかというのを、山本くんの演じた、なにも言わない食べないしない、そしてどこから来てどこへ去るのかもわからない、人物像というよりも人物像になりえない存在みたいなところで、すべてを語りたいという具合に思ったわけですね」と、作品に込めたメッセージを説明しました。
ほとんどセリフのない主人公「断食男」を演じた山本さんは、監督のその言葉を受け「ぼくは監督のそのメッセージとかを考えず、まったく理解せずに演じていましたかね。ほんとに単純な動機で“ただそこにいる”ということを徹底してやるということを考えていましたかね」と振り返りつつ「それでよかったんですよね、監督?」と監督に問いかけ、足立監督は「まったくその通りです」と、山本さんの演技に太鼓判を押しました。