舞台あいさつをおこなった佐倉萌さん、稲生恵さん、川上史津子さん、三上寛さん、大西信満(おおにし・しま)さん、真理アンヌさん、川瀬陽太さん、愛奏(あい・かなで)さん、佐藤寿保監督(左より)
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ピンク四天王のひとり・佐藤寿保監督が映画館への愛を込めて描く新作『華魂 幻影』(はなだま・げんえい)が4月30日に新宿K's cinemaで初日を迎え、主演の大西信満さんと共演の三上寛さん、真理アンヌさんら出演者と佐藤監督が舞台あいさつをおこないました。
2014年公開の『華魂』に続くシリーズ第2弾となる『華魂 幻影』は、閉館間近の映画館の映写技師・沢村が主人公。沢村がスクリーンの中に見る黒ずくめの少女の謎や、禍々しい花“華魂”が引き起こす惨劇、そして失われつつある映画館への郷愁が描かれていきます。
佐藤監督は、閉館間近の映画館を題材としたことについて「昨今、良心的な映画館が次々となくなっていく中で、まさしく閉館になる映画館を舞台とした映画をやらなければということでやってみました。その映画館に集う老若男女や、映画館に関わっている映写マンなり支配人なりのいまの世に対するうっぷんといいますか、嘆いてばかりはいられないということで、この映画を観ていただいて、さわやかな気持ちを感じられていただければと切に願っております」と想いを語りました。
主人公の沢村を演じた大西信満さんは「この映画に関して言えば、観てもらってナンボだと、そういう作品だと思っております。文字で説明したり“こういう話で”といくら伝えたところで観ていただいたときのインパクトを超える言葉はぼくには見つかりません。それぐらいいろんな想いがものすごい高い温度で焼きついた作品だと思っています」と作品について語るとともに、閉館が相次ぐ全国各地の映画館について「ほんとに地方の劇場、ミニシアターの方々というのは東京から舞台あいさつとかでおじゃまするとすごくあたたかく迎えてくれて、ひとりひとりすごく思い出があるわけですよね。(閉館になると)そういう人間関係まで断ち切れてしまうことになるわけですから、今回この映画をみなさんご覧になっていただいて、どうやったらそういう小さな劇場を応援していくことができるのか一緒に考えていくきっかけになれば、こんな嬉しいことはないです」とコメント。
また、ヒロインの“黒ずくめの少女”を演じた新人女優のイオリさんは残念ながら映画公開を待たずに引退が決定しており、佐藤監督は「ぼくもショックなんですが、一度消えた女優さんがまた復活してスクリーンを飾ってくれるという例も昔あったんで、まさしくまた映画のスクリーンの中で再登場してくれるんじゃないかなと。オーディションで選んだんですけど、ほんとに体当たりで演じてくれてね、その透明感を目に焼き付けていただけたらと思っております」と引退を惜しみました。
『華魂 幻影』は、今年5月で閉館を迎える飯田橋くらら劇場や、すでに解体されている旧・上野オークラ劇場でロケがおこなわれており、映画館支配人・山下を演じた三上寛さんは「お話をいただいたときに感じたのは、これは上野版『ニュー・シネマ・パラダイス』だなと。私なんかも若いころからピンク映画が好きでですね、東北から来ると上野で必ず1本観るという思い出の場所なんですよね」とピンク映画館にまつわる思い出を披露。
ピンク映画との縁も深く、『華魂 幻影』では劇中映画の主演俳優を演じた川瀬陽太さんは「監督が先ほど“この映画を観てさわやかな気持ちに”、なるわけないじゃないですか。いい加減気づいてください」と監督のあいさつを受けたコメントで場内の笑いを誘いました。
小暮みどりを演じた川上史津子さんは「私は『華魂』の1作目を公開当時にこの劇場で観て、痛みのある映画なんですけどカタルシスがすごくて、第2弾のオーディションがあると聞いて飛びつきまして、この役をいただきました」と、念願かなっての出演に笑顔。
近藤久美役で出演しているのに加え制作主任をつとめスタッフとしても参加した佐倉萌さんは「現場にずっと付いていましたけど、大学生の男の子たちが演出部とかの助手に付いていまして、監督が(学生スタッフの)首でも締めるんじゃないかと心配してずっと見ていたんですけど“なんでこんなに優しいの?”みたいに指導しながら現場が進んでいきました」と、現場での監督の一面を明かしました。
舞台あいさつ終盤には、大西さんは「初めてお客さんに観ていただくこの瞬間を楽しみにしていましたのですごく嬉しいです。もし観ていただいて“いいな”と思ってくれたら、なるべく次のお客さんにつなげてもらえれば幸いです」とあいさつ。
そして佐藤監督は「このK's cinemaは、昔は新宿昭和館といいまして、上が東映系の二番館で、地下がピンク映画の常設館(※昭和館地下劇場)でした。実はぼくは東映セントラルフィルム(配給)のピンク映画でデビューしまして、25歳のときにデビュー作を地下で観てね、映画に対する想いというのは自分では変わらないと思っています。観ているお客さんというのも表面的な部分では変わっているように言われているんだけど、本質的に映画を観たいという気持ちは変わらない普遍的なものだと思うんですよね。先ほどは“さわやか”と表現したんですけど、肩肘はらずに、でも昨今のテレビや映画で満足しきれない部分を補っているような映画だと思います。目をそむけずに、脳みそまで届いてくれたらと切に思っております」と力強く語って舞台あいさつを締めくくりました。
過激なストーリーと映像の中にフィルムへの愛情が溢れる『華魂 幻影』は、4月30日(土)より新宿K's cinemaにて上映中ほか全国順次公開。K's cinemaでは上映期間中にゲストを迎えてのイベントも予定されています。