舞台あいさつをおこなった小久保由梨さん、今村雪乃さん、岡明子さん、櫻木百(さくらぎ・もね)さん、黒木渚さん、鶴岡慧子監督、illy(イリィ)さん、橋本致里(はしもと・ちさと)さん(左より)
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新鋭・鶴岡慧子監督がシンガーソングライター・黒木渚さんのアルバムをモチーフに作り上げた『うつろいの標本箱』が10月29日に渋谷ユーロスペースで初日を迎え、主演の櫻木百さんはじめ女性キャストと鶴岡監督が舞台あいさつに登壇、さらにサプライズで黒木渚さんも登場しました。
『うつろいの標本箱』は2014年4月にリリースされた黒木渚さんのアルバム「標本箱」に着想を得た作品で、ひとりの男性カメラマンの死をきっかけに幾人もの人々の日常が交錯していく群像劇。劇中には「標本箱」収録の楽曲が織り込まれています。
鶴岡監督は「この映画は、キャストを公募してお集まりいただいたみなさんと準備を重ねて一緒に脚本を作り上げて、ちょうど2年前の10月に撮影をして2年越しでみなさんの目に触れていただく機会が実現した作品です。ほんとに私は嬉しく思っています」とあいさつ。
今年7月まで“ゆるめるモ!”の“もね”として、現在は“Hauptharmonie(ハウプトハルモニー)”の“一花寿(ひとはな・すい)”としてアイドル活動もおこなっている主演の櫻木さんは、本作で演じた普通の大学生・山田イツキという役について「イツキちゃんはちょっと私に似ているところがあって、回りくどい言い方をするというか、素直に感情を表現しないところがすごく似ているのと、人に対する接し方とかもちょっと似ているところもあって、そこまで大きな役作りはしなかったんですけど、自分が持っているなと思う個性を強く出したくらいですね」と語り、鶴岡監督も「私も百ちゃんからたくさんインスピレーションを受けてイツキちゃんという役を作ったので、すごくピッタリ合っていたかなと思っています」と評しました。
市川サナエ役の小久保由梨さんは映画初出演で「(撮影の)一番はじめのシーンが全速力で走るシーンで、それまでものすごい不安とか緊張とかがあったのが走ることで吹っ飛んでいったような気がして、とても印象深いです」と初めての映画撮影を振り返り、監督曰く「複雑な状況下に置かれた役」という岡田日奈子を演じた今村雪乃さんは「劇中で描かれていない部分をどう感じ取ってもらえるのかなというところを一番大事にしたいと思って、相手役の渡辺拓真さんと描かれていないところを膨らませることを大事にしました」とコメント。
「大人の片思い」をする坂本亜梨沙役の岡明子さんは「(亜梨沙が)行動を起こしていくことで物語が変わっていくので、そういう勇気を振り絞ることって大事だなと、そして大人の片思いって楽しいなと思いました」と感想を述べ、シンガーソングライターでもあり西沢淳子役で女優に挑戦したillyさんは「私は“歌は語れ、セリフは歌え”という言葉がすごく好きで大事にしているんですけども、今回の映画は音楽とお芝居というものが交わってひとつになっているということで、まだまだ未熟なんですけど自分がずっと大事にしている言葉を体現できるチャンスをいただいたんじゃないかと嬉しく思っていました」と、音楽をモチーフにした作品に参加しての想いを。
ふたりの男性と縁のある落合みそのを演じた橋本致里さんは「佐藤(岳人)くんは私が昔好きだった人に似ている部分があったので勝手に親近感が湧いてやりやすくて(笑)、(小川)ゲンさんは、私が映画が初めてなので変なテンションだったり変な対応をしていたと思うんですけど、それを優しく受け止めてくれて優しい方でした」と、共演の男優陣の印象を語りました。
櫻木さんは「この映画は観る人によってまったく違う捉え方ができる映画だなと思っているんですけど、1回観ただけではわからなかったり、2回目観ると“こんな発見がある”というところもあると思います。個人的に見どころとしては、今日ここにいる女性陣のみなさんがアカペラで黒木渚さんの曲を歌うところがあるので、そこを注目して観てほしいと思います」と、鶴岡監督は「黒木渚さんというアーティストの方を聴いたことがなかったという方もいらっしゃるかもしれないですけど、ぜひ映画を観て、映画のあとに『標本箱』というアルバムを手にとって聴いていただけると嬉しいです」と、それぞれ観客のみなさんにメッセージを。
ここで舞台あいさつは終了のはずでしたが、舞台あいさつ進行役の鶴岡監督や櫻木さんら登壇者も知らなかったシークレットゲストとして、黒木渚さんが登場。黒木さんは「試写会で監督とお会いして“とんでもなく若い”というのが第一印象で、こんなに若い女性が映画監督として活躍していらっしゃるということをすごく頼もしく思いましたし、モチーフにしていただいたのが私のアルバム『標本箱』だったということをすごく光栄に思っています。私がアウトプットした音楽のかたちとは解釈も違っていますし、監督の自由な発想で描かれた物語なので、みなさんどうぞ楽しまれてください」と、映画へのエールを送り舞台あいさつを締めくくりました。
6人の女性と9人の男性が、誰かが誰かを想いながらが織りなしていく物語『うつろいの標本箱』は、10月29日(土)より渋谷ユーロスペースにてレイトショー。10月30日(日)には初日には登壇しなかった男性キャスト7人と鶴岡監督が登壇する「メンズ舞台あいさつ」(上映前)が、11月1日(火)には独特のエロティックな世界で定評のある『ソーローなんてくだらない』『好きでもないくせに』などの吉田浩太監督と鶴岡監督のトークショー(上映後)が、それぞれ開催されます。
※記事初出時、登壇者のお名前に誤表記がありました。お詫びして訂正します。(10月30日修正)