『変態だ』うちわを掲げる観客のみなさんをバックにヒットを祈願しポーズの安齋肇監督、桜井秀俊さん、月船さららさん、前野健太さん、白石茉莉奈さん、ウクレレえいじさん、みうらじゅんさん(左より)
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イラストレーターの安齋肇監督が初めてメガホンをとった『変態だ』が12月10日に初日を迎え、新宿ピカデリーで主演の前野健太さん、原作者のみうらじゅんさんらによる舞台あいさつがおこなわれましたが、安齋監督がまさかの遅刻というハプニングが起こりました。
みうらじゅんさんの小説を映画化した『変態だ』は、妻と子とささやかながら幸せな家庭をもつ一方で愛人との関係を続けるミュージシャンの男が主人公。地方でのライブに愛人を同伴した男がライブ会場に妻の姿を見つけたことで起こる衝撃的なストーリーが描かれていきます。
舞台あいさつは上映終了後におこなわれましたが、安齋監督の姿はなく原作のほか企画と脚本も手がけたみうらさんが監督の遅刻を報告。みうらさんは「もう、ぼくが撮ったってことにしてもらっていいですか?」と客席の笑いと拍手を誘いつつも「(安齋監督とは)30何年の付き合いで、飲み屋で決めた(企画の)打ち合わせを守るか守らないかで大概ケンカになっていたんですけど、今回は守っていただいて撮っていただいて、とても嬉しかったです」と、安齋監督に自身の小説を監督してもらった感想を述べ「あの方は、たぶんみなさんも“ああいう人”だと思っていると思うんですけど、プロなところがとてもあって、デザイナーを長いことやっていることもあってすごくスタイリッシュに撮る」と初監督の安齋監督の手腕を評価。「ジム・ジャームッシュとかの匂いがするんですけど、たぶん安齋さんは(ジャームッシュの作品を)1本も観ていないと思います。若松孝二の匂いもちょっとするんだけど、たぶん観ていないと思うし、観てなくてやるというのはセンスがいいんだと思いますね」と賞賛しました。
そして当の安齋監督は舞台あいさつが始まって約6分が経過したところで『変態だ』Tシャツの上にコートを着てバッグを持ったまま登場。息を切らせながら「今日はすごく渋滞してて、靖国通りをこれ(『変態だ』Tシャツ)を着て宣伝して走ってきました」とあいさつし「もう、ほぼ泣いています。1年半、2年近くかけてここまで来ましたのでね」と初監督作の公開を迎えた喜びを語りましたが、みうらさんにすかさず「いや、そんなにかかってないですよ。1年くらいですよ」と指摘されると「1年かけてあっさりここまで来ました(笑)」と苦笑いで訂正しました。
シンガーソングライターとして活躍し、本作で初めて劇映画の主演をつとめた前野健太さんは『変態だ』というタイトルについて「魔法の言葉なんですね。映画を通して“変態だ”ってなんだろうって考えたんですけど、ロックンロールと一緒なんですね。人生って別に大したことねえじゃないかということで、危ない局面で“変態だ”って唱えるとけっこう勇気が湧くんですね」と、映画主演を通して得た人生観を披露。
主人公の愛人・薫子を演じた月船さららさんは過激なシーンも多いために「オファーをいただいて台本を読んだときに、おふたり(安齋監督とみうらさん)じゃないととても受けられないなと思うくらい不安がいっぱいでした」と明かす一方で、宝塚退団後間もない時期に出演した作品(『世界で一番美しい夜』2008年/天願大介監督)以来とも言える要素のある役に「(映画デビューのころに)引き戻されてちょっと嬉しかったりもします」と振り返りました。
主人公の妻役で前野さんとのラブシーンも演じている白石茉莉奈さんは、ラブシーンの撮影日が前野さんと初対面で、幸せな夫婦の雰囲気を出すのに苦労しそうだと思っていたところ「前野さんとすごく相性が良くて、なんの不安もなく挑めたので感謝しています」とコメント。
猟友会の男役で映画終盤の雪山のシーンに出演しているミュージシャンの桜井秀俊さんは、飲み屋で監督と会ったときに監督から数日後の撮影に誘われ「“行きます行きます!”って、渡された切符が雪山行き(笑)」と出演の経緯を明かし、本人役で出演しているウクレレえいじさんは「ぼくも飲み屋さんでみうらさんに誘っていただいて“本人役やから、頼むで!”って」と話し、桜井さん、ウクレレえいじさんとも、飲み屋さんでの出会いが映画出演に重要だったことを明かしました。
安齋監督は「飲み屋で決まったことがこうやって実際にピカデリーで上映できるという喜びにすごいいまあふれていますけれども、できたらひとりでも多くの方に観ていただきたいので、みなさんどうぞプラスな方向で拡散していただけると(笑)。よろしくお願いします」と改めて映画公開を迎えての心境を語り、いままでに「マイブーム」「ゆるキャラ」など数々の流行語を生み出しているみうらさんは「“元気か?”みたいな言い方で“変態か?”って聞かれて“変態だ”って答えるのが来年くらい流行語大賞に来るんじゃないですかね」と話し、前野さんの「変態か?」の呼びかけで会場全体で「変態だ」を唱和して舞台あいさつは締めくくられました。
撮影監督に数多くのミュージシャンの写真を撮り続けてきたロックカメラマンの三浦憲治さん、音楽監督に日本を代表するドラマーのひとり古田たかしさんと精鋭スタッフが参加、衝撃のラストが待つ『変態だ』は、12月10日(土)より新宿ピカデリーほか全国順次公開されています。