日本映画専門情報サイト:fjmovie.com

fjmovie.comトップページニュース一覧>升毅さん42年目での映画初主演は「本当に大変な役でした」 『八重子のハミング』プレミア試写会

升毅さん42年目での映画初主演は「本当に大変な役でした」 『八重子のハミング』プレミア試写会

記事メイン写真

舞台あいさつをおこなった佐々部清監督、文音(あやね)さん、升毅さん、高橋洋子さん、中村優一さん(左より)
※画像をクリックすると大きく表示します

 俳優・升毅さんが永いキャリアで初の映画主演をつとめ、28年ぶりの映画復帰となる高橋洋子さんが妻を演じる『八重子のハミング』(5月6日公開)のプレミア試写会が4月19日に山野ホールで開催され、升さん、高橋さんと佐々部清監督、共演の文音さん、中村優一さんが舞台あいさつをおこないました。

 『八重子のハミング』は、陽信孝(みなみ・のぶたか)さんが自身の体験をもとに綴った同名著書の映画化で、4度にわたるがん手術を受けた夫・石崎誠吾と、若年性アルツハイマーを発症した妻・八重子の物語。誠吾が八重子を介護する12年間を通して夫婦の愛と家族の絆が描かれていきます。

 芸能生活42年にして初主演で主人公の石崎誠吾を演じた升毅さんは、主演の依頼があったときの心境を「即答で“ぜひやらせてください”とお答えしました。もちろん映画で主演をやったことがなかったという個人的な“やったぜい!”という部分と、作品のテーマだったりとか内容の重さ、深さ、そういう作品に携われるという喜びとで、すぐにお答えさせていただきました」と語るとともに、実在の人物をモデルとした役に「たくさんの想いが押し寄せてきて」役作りに苦心し、プランがないまま撮影初日を迎えたと告白。「監督の“よーい、スタート!”で始まる直前まで不安で不安でしょうがなかったんですけど、始まった瞬間にそこに自分じゃなく石崎誠吾がいた感じで、目の前には八重子さんがいた感じで、そこから先は自然にこの作品に入っていけたんです」と撮影初日を回想し「(監督の)“OK!”って出たら、この感じでずっといられればいいんだと。そんなちょっとホッとした気持ちになったのを思い出します。なかなか本当に大変な役でした」と振り返りました。
 また、升さんは、妻・八重子役の高橋洋子さんとの共演について「(監督から)“撮影の期間中だけでいいから洋子さんの八重子さんをずっと好きでいてください”と。その前に洋子さんとお会いしていて、とてもチャーミングな方ですでに好きになっていたので、その部分は軽くクリアいたしました」と、笑顔で語りました。

 近年は作家として活動が主だった八重子役の高橋洋子さんは、佐々部監督からの出演の依頼に「どうしてこんな難しい役を何十年ぶり(に映画出演)の私に振るの? でも映画をやってみたいという気持ちは20何年ありました」と「嬉しいような、重いような」気持ちだったと明かし、若年性アルツハイマーで周囲とコミュニケーションを取れなくなるという難役に「撮影の間ちょっと孤独で、終わったときもちょっとモヤモヤして撮影が終わりましたけど、先行ロードショーで山口の萩や(撮影)当時ロケしたところで去年の秋にやってまいりました。そしたらお客さんがですね、“洋子さん、あんな感じでしたようちの母!”“洋子さん、感じがピッタリでしたよ!”とお客さんに言われて、監督でもありません、升さんでもありません。“よかったね”というのをお客さんに言われて、やっと自信が持てて、八重子を演じることができたかな」「すごく不安な日々でしたけど、去年の山口の人たち、萩の人たちに励まされてここに立つことができました」と、ロケ地であり映画の舞台である山口の方々に感謝を示しました。

 『八重子のハミング』は佐々部清監督が8年前から映画化を目指し映画会社やテレビ局に企画を出しつつも実現に至らず、監督自身がプロデューサーとして資金集めからスタートして映画化を実現させた作品。佐々部監督は「ちょうど2年前に少し認知症が進んでいた母が亡くなったのが大きなきっかけで、これは意地でも作って世に出したい。そしてシニア層が中心に観られる映画を作りたいなと思って、それもあってこういう映画を作ってみました」と作品製作の経緯を説明し「ぼくは“自主映画”ってずっと言ってきたんですが、スタッフたちが“自主映画”と呼ばないでくれというので、自主的に作った“自主的映画”と呼んでいます。だから自主的映画『八重子のハミング』を覚えていただければと思います」と呼びかけました。

コメント写真

12年間にわたり妻を介護する主人公・石崎誠吾を演じた升毅さん

コメント写真

若年性アルツハイマーを患う石崎八重子を演じた高橋洋子さん

コメント写真

舞台あいさつでも息のあった様子を見せた夫妻役の升さん・高橋さん

 誠吾・八重子夫妻の長女・石崎千鶴子を演じた文音さんは、佐々部監督がメガホンをとった『三本木農業高校、馬術部』(2008年)がデビュー作。文音さんは「私にとって佐々部監督は特別な存在で、映画界の父であるとずっと言っているんですけど、その監督の佐々部組に10年ぶりに戻ってくることができて、すごく嬉しかったです。久々の佐々部組は知っている人がたくさんいて、安心して佐々部さんを信頼してお芝居することができて、すごく楽しくて居心地がいい現場でした」と約10年ぶりとなる佐々部監督作出演について語り、結婚して子どももいるという役柄について「(自分は)子どももいないし結婚もしていないので、想像でしかなかったんですけど、歳の離れた弟がいて長女としてしっかりしなくちゃいけないなという部分は小さいときから持っていたので、(小さな子の面倒を見るという)そこを強調して想像の部分でやることしかできなかったんですけど、それが伝わっていたらいいなと思います」と感想を。

 千鶴子の夫で娘婿の石崎英二を演じた中村優一さんは佐々部監督作初出演で「ぼくはもともと佐々部監督の作品が大好きで、このお話がいただけたときにすごく幸せで嬉しかったんですけど、原作も読んで台本も読んで、気合十分で撮影に臨もうと思ってスケジュールを見たら、ぼくのシーン(の撮影)が1日しかなくて“ええ? もっと(現場に)いたいよ”と思ったんですけど」と話しましたが、そこで佐々部監督から「あなたのスケジュールが忙しくて1日しかなかったんじゃないの?(笑)」と笑顔の指摘があり、中村さんは「すみませんでした。そのあとまた映画の撮影が入っていまして」と恐縮の苦笑い。さらに中村さんは現場に向かう日に航空会社のトラブルで飛行機が飛ぶかどうかわからなかったというエピソードを披露し「ドキドキしていたんですけど、なんとか山口県に着くことができまして、升さんが食事会を開いてくれて、(家族役の)みなさんとご飯を食べられたのでよかったです」と撮影の想い出を語りました。
 また、中村さんは「映画全体の印象としては、升さんと洋子さんの夫婦の愛というか、ぼくも試写でボロボロ涙が出てきてすごい感動したんですけど、自分の姿を見て、ぼくはお婿さんの役だったんですけど“婿ピッタシだな!”と思いました」と、新たなハマり役を発見した様子でした。

コメント写真

舞台あいさつの進行役もつとめた佐々部清監督

コメント写真

主人公夫妻の長女・石崎千鶴子を演じた文音さん

コメント写真

千鶴子の夫・石崎英二を演じた中村優一さん

 升さんは「監督もおっしゃっていたように、これは佐々部清の自主的映画です。その想いに賛同させていただいて、途中からは一緒になって命懸けで取り組みました。この自主的な映画をですね、ぜひたくさんの方に自主的に観にきていただきたいと思っております。大きな映画会社も付いていない映画ですけど、たくさんの方に観ていただきたい想いが強いので、ぜひぜひよろしくお願いします」と観客のみなさんに応援を呼びかけました。

 「自主的映画らしく」と、舞台あいさつの司会進行も自らつとめた佐々部監督は「実は、東京で一般の方に観ていただくのは今日が初めてなのでドキドキでした。今日の(上映の)最後に大きな拍手がいただけて、嬉しかったです。ほんとに命懸けでぼくは取り組むとずっと言い続けています。そこに升さんも乗っかってくれて、ふたりで“きよしとたけし”と、なんかどこかにいたコンビのようにやっています(笑)。ほんとに5月6日からスタートですので、応援していただければ嬉しいです。ほんとに今日はありがとうございました」と、舞台あいさつを締めくくりました。

 映画の舞台である山口県では昨秋に先行公開され観客動員数2万5000人を越えるヒットを記録した『八重子のハミング』は、5月6日(土)より有楽町スバル座ほか全国ロードショーされます(配給:アークエンタテインメント)。

作品スチール

八重子のハミング

  • 監督・脚本:佐々部清
  • 原作:陽信孝「八重子のハミング」(小学館)
  • 出演:升毅 高橋洋子 文音 中村優一 ほか

2017年5月6日(土)より有楽町スバル座ほか全国ロードショー

スポンサーリンク