左より、松崎まことさん(※舞台あいさつ司会者)、松井薫平さん、林田沙希絵さん、堀春菜さん、塚田万理奈監督、笠松七海さん、南久松真奈(みなみひさまつ・まな)さん、井上智之さん、イワゴウサトシさん
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昨年開催された第10回田辺・弁慶映画祭でグランプリと女優賞など4冠を獲得した『空(カラ)の味』が5月13日にテアトル新宿で初日を迎え、塚田万理奈監督と主演の堀春菜さんら出演者が舞台あいさつをおこないました。
塚田万理奈監督初の長編となる『空(カラ)の味』は、塚田監督自身の体験をもとにして2年前に撮影された作品。摂食障害となった高校生・聡子を主人公に、家族や友人、偶然に出会った女性・マキといった人々と聡子の関係が描かれていきます。
4月29日より開催されている「田辺・弁慶映画祭セレクション2017」の1作品として、3度のプレ上映を経て1週間連続公開がこの日からスタートし、塚田監督は「テアトル新宿の環境がたぶんいままで(上映した会場)でダントツ素晴らしいので、一生上映したいんですけど、1週間なので、始まってしまうと終わりを感じるので哀しいんですけど、すごく嬉しいです」と初日を迎えた心境を語りました。
多くのインディーズ映画に出演し注目を集めている聡子役の堀春菜さんは「私にとって自分の出演作が都内で1週間連続でかかるのは初めてのことなので、こんなに大勢の方と初日を迎えられて嬉しく思います。ありがとうございました」とあいさつし「『空(カラ)の味』に出会えて聡子ができたのは、ほんとに私にとって大きな出来事」と喜びを見せました。
聡子が出会う女性・マキを演じた林田沙希絵さんは、マキの登場前後で映画の空気が大きく変わっていると言われることが多いそうで「私自身そういう意識がまったくなくて、ただ(映画祭などでの)上映が始まってから、ロビーでお客様に声をかけられたときにそういう感想をいただくので、そうなんだと思って(笑)。お客様にそう言っていただくと“がんばりすぎないでがんばろう”みたいな気持ちでやっていた撮影のときのことが思い浮かぶみたいな」と撮影を振り返りました。
聡子の兄・けいた役の松井薫平さんは塚田監督の大学の同級生、聡子の友人・かなえ役の笠松七海さんは堀さんの実際の幼なじみと、普段の監督や堀さんを知るキャストが起用されており、松井さんは「ぼくは実際に万理奈(塚田監督)のお兄さんも会ったことがあって、万理奈がぼくのキャラクターとお兄ちゃんの存在を近しいと思っていてくれたんじゃないかなと思って、たぶんそれで(キャスティングされた)なのかな」と、笠松さんは「(演じる上で)万理奈ちゃん(監督)が“七海のままでいいよ”ってずっと言ってくれて、でも私からしたらかなえは優しいから、優しい女の子にならないとなって」と、それぞれコメント。
塚田監督は、過去に「(友人が)すごく客観的に優しくしてくれたということがすごく救われて」という自身の経験を明かし「(笠松さんは)古くから堀さんを知っているから、堀さんが役を演じているときに七海は“知っているゆえの客観視”じゃないですけど、安定感みたいなのが」監督自身の友人との関係に近かったと、キャスティングの生んだ効果について語りました。
塚田監督は「“(上映時間が)長い”とか“面白くない”とかは人それぞれですので、どんな意見でもいいと思っております。ですが、ひとりひとりの役者さん、ほんとにかわいらしくて、スタッフもひとりひとりほんとにかわいらしいスタッフたちなので、その人たちが私の死ぬまで黙っていたいと思っていた気持ちを死ぬ気で汲んでくれた作品になります」と作品への想いを。
塚田監督はさらに、劇中で摂食障害や不安定な精神、家族との気持ちのすれ違いなどを描きつつも「人がなにかを思っているという、それだけが大事だと思って撮りました。なので、摂食障害とか病気とか家族とか関係なく、人が生きていて“今日が不安だ”とか“明日がいい日だったらいいな”とか、そういうのがあるなら、それだけを聞きたいと思って作った作品です。それは誰にでもいえることだと思うし、言ってもいい人がいるなら、私は“今日がダメでもいいよ”と言いに行きたくて作りました」と作品制作の意図を語り「テアトル新宿という素晴らしい環境なので、たくさん流させていただいて、次につなげていきたいと思っております」と今後の創作活動への意欲を見せて舞台あいさつを締めくくりました。
今後も出演作の公開が続く期待の女優・堀春菜さんの主演で、塚田万理奈監督が思春期の不安を繊細に描いた『空(カラ)の味』は、5月13日(土)より19日(金)までテアトル新宿にて1週間レイトショー上映されます。
※記事初出時、登壇者のお名前に誤記載がありました。お詫びして訂正いたします。(5月14日修正)