舞台あいさつをおこなった加藤忠相(かとう・ただすけ)さん、香川裕光さん、戸塚純貴さん、水野久美さん、松本若菜さん、鈴木浩介監督(左より)
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介護という仕事を通して人と人のつながりを描く『ケアニン~あなたでよかった~』(6月17日公開)の完成披露試写会が6月12日にニッショーホールでおこなわれ、主演の戸塚純貴さんと共演の水野久美さん、鈴木浩介監督らが舞台あいさつをおこないました。
『ケアニン~あなたでよかった~』は「なんとなく」介護の仕事を選んだ新人介護福祉士の大森圭が、介護施設で認知症の高齢者の介護に携わる中で、ときに理想と現実のギャップに迷いながらも一人前の“ケアニン=ケアする人間”への道を歩んでいくストーリー。神奈川県で介護福祉施設を運営する“株式会社あおいけあ”をはじめ多くの施設や団体などの協力を得て、現実に即した介護の現場を描いています。
大森圭役で主演をつとめた戸塚純貴さんは、この作品に出演するまでは介護という仕事に「あんまり前向きなイメージがなくて」と正直に語り、映画出演が決まってから取材先の施設を見学する中で「ぼくの持っていた介護のイメージと全然違くてですね、そこにいるおじいちゃんおばあちゃんがすごく楽しそうで、その状況がぼくの中で衝撃的だったので」と、実際に見学することで得た驚きを役に反映させたとコメント。圭を演じるにあたって「あまり固く考えすぎず、作り込みすぎず、自分の知識だけで固めてはいけないと思ってたので、いつもと違う感覚がありましたね」と語りました。
圭が介護する星川敬子を演じた水野久美さんは、長い女優生活の中でも認知症の役を演じるのは初めて。「(役を)いただいたときには、いろいろ考えてやろうと思ったんですけど、考えると考えた演技になるじゃないですか。だから“これはいけない”と思って、結局なにも考えないでポワっとしてやりました」と、役作りを語りました。
また、戸塚さんは水野さんとの共演について「役としてはぼくが初めて(ケアの)相手をする役なんですけど、自分も新人でなにもできなかったので、ほんとに人生の先輩という、学んでいた日々というか、そういうのがありましたね。吸収する日々でした」と述べ、水野さんは戸塚さんについて「すごく初々しくて、かわいい坊やでしたよ(笑)」と評して客席の笑いを誘いつつ「(作品を通して)すごく成長したと思います」と賛辞を送りました。
ベテラン・水野久美さんとのやり取りで笑顔を見せる戸塚純貴さん
圭の職場の先輩・佐藤夏海を演じた松本若菜さんは、介護の知識と経験が豊かなマネージャー職の役を演じる上で難しさもあったと話し「ほんとのマネージャーだったらこういうときにみんなの背中を叩いていかないといけないところだなあとか、撮影しながら徐々に感じていて、戸塚くんの先輩役なのに戸塚くんの芝居で私もすごく貰えるものがあったので」と撮影を振り返り、これまでも共演経験のある戸塚さんについて「勝手に弟みたいな感じで思っているんですけど、ほんとに今回はハマり役すぎて」とコメントしました。
メガホンをとった鈴木浩介監督は「ぼくは55歳なんですけど、この年齢もタイミングよかったのかなと思っていて、もし30代とか40代でお話をいただいているとたぶん違うことになっていたような気がしていて、ちょうど55歳で両親のこととかいろいろあって、そんなことを踏まえたときにちょうどこのお話だったので、もうビックリするくらい嬉しかったです」と監督の依頼があったときの心境を述べました。
株式会社あおいけあ代表で映画監修をつとめた加藤忠相さんは、3年前にプロデューサーから映画の話を相談されたとき「冗談かなと思ったんですよ、介護の映画を作るというのが」と当時の思い出を語り、いまだよくないイメージも強い介護の現場について「介護を受けているお年寄りが不幸だったり、介護を提供している介護職員が不幸だったり、預けている家族が不幸だったりという連鎖みたいなものは断ち切りたいなと思っていて、子どもたちとか介護職員さんたちにも観てほしいけど、できれば(介護職に就く可能性のある)専門学校や高校生の子たちにたくさん観てほしいなと思います」と映画が介護のイメージに与える影響に期待を寄せ、新人介護士の成長を描いた映画のストーリーに関連し「自分で考えてしっかり専門職として行動できる職員さんが増えて、現場がたくさんできてほしいなと思っています」と希望を語りました。
主題歌「星降る夜に」を作詞・作曲し歌っているシンガーソングライターの香川裕光さんは、自身も福祉医療施設の介護職員として働いた経験を持っており、主題歌について「ぼく自身がケアの仕事をしていたこともあったので、自分自身の経験を歌詞にするのと同時に、ぼくも直接グループホームにたくさん取材に行きまして、現役で働いている介護士さんたちがどんなことを思っているのかとか、どんなときが幸せだったか、どんなときがつらかったかというのを全部聞いて、そういった言葉だったり、映画の中でのセリフだったりを集めて」曲作りを進めていったと話し「これまで介護の歌というのが世の中にあまりなかったので、そういった命と向き合えるような歌を歌いたいなと思って、けっこう苦労して書かせていただきました」という「星降る夜に」をギター弾き語りの生演奏・生歌で披露しました。
主題歌「星降る夜に」をギター弾き語りで披露する香川裕光さんと、香川さんの歌に聴き入るキャスト・監督たち
鈴木監督は、昨年夏の撮影期間がほぼ連日嵐となる悪天候だったことを明かし「ただ、その嵐が全員のグループ感というか、いろいろなことが集中できたというか、不思議な空気感を出してくれた不思議な嵐だったので」と天候がもたらした効果を挙げつつ「映像にはそういう(悪天候の)感じがまったく見えないと思いますが、見つけちゃったら内緒にしといてください(笑)」と笑いを誘うコメントも。
松本さんは「自分が思っていた介護というのはあまり明るいイメージではなかったんですけど、監修で現場についていただいたときに、あおいけあの方たちにお話をうかがうと、そのイメージが真逆のもので、介護者の方たちも楽しんでいらっしゃっるんですよね。そういうところをこの映画の中でもできたらなと思ってやっていました。ぜひ家族の方やお友達に勧めて、この『ケアニン』という映画が全国に広がることを願っています」、水野さんは「私も年齢的に認知症になってもいいような年齢なので、もし私がそういうふうになった場合に、こんな素晴らしい人たちがいる、こういういいところがあるということが、とってもホッとしました。だからご家族でもしそういう方がいらしたら、なんとかして励ましてあげてほしいんです。それはこの映画を観ていただくとほんとにわかります。ぜひ大勢の方に観ていただきたいと思います」と、それぞれ作品で得た想いを交えて作品をPR。
そして戸塚さんは「この映画を通して、人を思う気持ちだったり、家族だったり大切な人を思う時間になっていただけたらいいなと思いますし、ぼくは普通に生きていたら考えないようなことだったり、気づけなかったことだったりにこの映画で気づけたので、特に若い世代の人たちにはたくさん観てほしいなと」と話し「ほんとに素晴らしいキャストさんや、監督、加藤さんはじめ、たくさんの人たちと力を合わせて作った作品で、その中にはみなさんそれぞれの覚悟があるので、みなさん最後までよろしくお願いします」と舞台あいさつを締めくくりました。
舞台あいさつ登壇者のほか、山崎一さん、藤原令子さん、菜葉菜さん、小市慢太郎さんらが出演する『ケアニン~あなたでよかった~』は、6月17日(土)より全国順次公開されます。