舞台あいさつ中の小野さやか監督、出演者の王子さん、音楽を担当した北小路直也さん(MILKBAR)、橋本佳子プロデューサー、熊田辰男プロデューサー(左より)
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さまざまなセクシュアリティを持った人々の生き方や恋愛を描くドキュメンタリー『恋とボルバキア』が12月9日にポレポレ東中野で初日を迎え、小野さやか監督と出演者・スタッフが舞台あいさつをおこないました。
2010年公開のセルフドキュメンタリー『アヒルの子』で注目を集めた小野さやか監督の新作となる『恋とボルバキア』は、プライベートでは男性として生活しつつ女装しての活動もする方、女装をきっかけに男性に恋した方など、それぞれの生き方や恋愛をしている方々への取材により、多彩な性のあり方を描いた作品。
『恋とボルバキア』は、小野監督が演出したテレビのドキュメンタリー番組が発展して制作されたもので、小野監督は「テレビの番組で一度かたちにしたものを、追加撮影を加えて、みんなにつきあっていただいて、一番いいかたちで映画にできたというふうになっています。本当に、今日を迎えることができて嬉しく思っています」と初日を迎えた喜びを交えてあいさつ。
出演者のひとりであり作品中で使われている字幕やイラストも担当した王子さんは「さやかちゃん(小野監督)とはテレビのときからの付き合いで、出演というよりは友達な感じで、友達にカメラを向けられて撮ってもらっている感じの、別にとりつくろうこともなく自分のことをありのまま、そんな気持ちで取り組ませていただきました」と出演しての感想を述べました。
また、音楽を担当したバンド・MILKBARのギター・ボーカルの北小路直也さんは「ライブ終わってぼくがあるバーに行ったときに、お隣に座っていた方が小野さんだったんです(笑)」と、偶然のきっかけが映画への参加に繋がったことを紹介し「ここで立って喋っているのが夢のよう」と語りました。
本作のほか『FAKE』『Ryuichi Sakamoto: CODA』など多くのドキュメンタリー作品を手掛ける橋本佳子プロデューサーは「なによりもお礼を言いたいのは、小野監督の取材はしつこかったと思うんですね。王子さんはじめ(出演者が)、それに最後までお付き合いしてくださったことに本当に感謝しております」と長期間の取材を経て公開を迎えた作品について語り、元となったテレビドキュメンタリーから引き続きプロデューサーをつとめた熊田辰男プロデューサーは「テレビ制作者としてもう30年以上やっているんですけど、映画に携わることは初めてで、いろいろ勉強させてもらって、今日この初日を迎えることができたというのは、すごく感慨深いなと思っております」とコメントしました。
小野監督は、もともとの番組の企画は監督自身の発案ではなく提案されたもので、取材を始めたときには「私もすごく偏見があったんです」「女装とかそういう世界がどういうものかわからないなというのがあって“大丈夫かな、その人たちのことを自分が受け入れられるのかな”というのが頭にはあったんです」と振り返り「撮影していくうちに(出演者の)みんなの人柄にすごく惹かれて、むしろ自分のほうが間違っているというか、自分の決め付けだったり“こうあるべき”みたいに思っていたことを全部疑いだしてしまって、自分という人間がこの作品に関わったことで変わったなというのは、いますごく思うんです」と、作品制作を通じて監督自身にも変化があったと明かしました。
そして出演者の王子さんは「最初のテレビのときから4年経って、5年10年したらまた変わってくると思うので、そうなったら(=10年経ったら)また面白いものが観られるかなと。今後に期待してください」と「偉そうにすみません(笑)」と付け加えつつ展望を語り、小野監督との信頼関係を感じさせました。
小野さやか監督のテレビドキュメンタリーの構成もつとめた脚本家・港岳彦さんが構成をつとめている『恋とボルバキア』は、12月9日(土)よりポレポレ東中野にてロードショーほか全国順次公開。ポレポレ東中野では公開2日目の12月10日に作家・タレントの大島薫さんと小野さやか監督によるトークイベントがおこなわれるのをはじめ、公開期間中にさまざまなゲストを迎えてのトークイベントが予定されています。