舞台あいさつをおこなった笠松将さん、円田(えんだ)はるかさん、吹越満さん、城(じょう)アンティアさん、サトウトシキ監督、中村淳彦さん(左より)
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ベストセラーとなったノンフィクションをサトウトシキ監督がメガホンをとり映画化した『名前のない女たち うそつき女』が2月3日に新宿K's cinemaで初日を迎え、主演の吹越満さん、共演の城アンティアさん、円田はるかさんら出演者とサトウ監督が舞台あいさつをおこないました。
『名前のない女たち うそつき女』は、ノンフィクションライター・中村淳彦さんがAV女優に取材したノンフィクションシリーズの最新作「名前のない女たち 貧困AV嬢の独白」が原作。 取材で出会うAV女優を見下しつつもどこかで彼女たちの生き方に惹きつけられるルポライター・志村を主人公に、AV女優とその周囲の人々の姿を描いた群像劇となっています。
志村を演じた吹越満さんは、演じるにあたって「ニュートラルな状態で、特に癖のあるキャラクターにしようということのないほうがいいかなとか、いわゆる等身大の普通の人のほうがAV女優との関係なんかも見えやすいのかなと」考えていたと述べるとともに、また「最初にいただいた台本を読んだときには、ぼくの絡み(ラブシーン)もありましたよね」と告白。志村の交際相手とのそのシーンは、吹越さんによると「なぜか撮影する段になったら」なくなっていたそうで、吹越さんは「ホッとしたような、残念だったような(笑)」と話して客席の笑いを誘いました。
奨学金返済のためにAVの世界で働き、志村の取材を受ける企画AV女優・葉菜子(はなこ)を演じた城アンティアさんは「葉菜ちゃんの奥に秘めた人間性、どういう想いを持って、昼間は普通に仕事して奨学金返済のためにAVをしているということはどういうつもりなんだろう」「彼女自身が抱えるモヤっというか、そういう気持ちを一番思ってやったというところはあります」と役についてコメント。
サトウトシキ監督は、この作品が約10年前より「何度か立ち上がっては消え、立ち上がって」映画化に至ったことを明かし、10年前に企画が始まったときにはAV女優を主人公にしていたものが「全体の世界みたいなものを客観的に」見せるためにルポライターを主人公に設定し「彼女たち(=AV女優たち)の生い立ちであったりトラウマだったりというよりも、いま彼女たちがどうしていくのか、これからどうしていくんだろうか」を描こうとしたと話しました。
原作者の中村淳彦さんは、映画が中村さん自身を思わせるようなルポライターを主人公にしていると試写で観るまで知らなかったそうで「ほんとにこんな感じの日常で、決してやりがいがある仕事でもなんでもなくて、取材して原稿入れて嫌な気持ちになってという、そんなことが映画になるんだなとビックリしました」と作品を観たときの心境を述べ、劇中で志村が別れた妻を相手に自分の現状をボヤく場面について「ぼくは女性にはそういうことは言わないんですけど、(女性以外には)あんなことばかり日常的に言っていて、ほんと“これ自分だな”と思いました」と印象を。
葉菜子の妹・明日香を演じた円田はるかさんは映画初出演で「(明日香は)見た目とかは服装とかも自分とはけっこうかけ離れていて、やっていて楽しかったですね。でも明日香はわりと自分の意志を持っている子だと思っていて、私もけっこうはっきりしている人なので、そういうところはちょっと重ねつつ役に挑みました」と初映画の感想を述べました。
葉菜子と同棲しているヒモのような恋人・将人役の笠松将さんは、情けない男に見える将人について「(誰でも)ちょっとズレたらああなっちゃうのかなって。あれが悪いことじゃないんですけど、働いて彼女のことをないがしろにするのもカッコよくないし、働かずに彼女のことめちゃ大事にするのもカッコよくないですし、今回は彼女のことを大切にして仕事をしなかったというだけの」と演じた立場から語り、城アンティアさんはそんな将人のキャラクターが「好きでした」と話しましたが、そのあとで「嫌ですけど、自分自身だったら(笑)」と付け加えました。
サトウトシキ監督は「とっても小さな映画です。描いているものも小さな世界ですし」と、映画への応援を呼びかけて舞台あいさつを締めくくりました。
舞台あいさつ登壇者のほか、小南光司さん、吉岡睦雄さん、クノ真季子さん、不二子さん、川瀬陽太さんらが出演、ある世界から逃れられない人々の生き方を描いた『名前のない女たち うそつき女』は、2月3日(土)より新宿K's cinemaにて公開のほか、全国順次公開されます。